アスカが教室に戻ってみると、馬鹿が馬鹿同士で余計な盛り上がりを見せていた。
「僕はしょせん、過去の男だったということさ」
「カヲル君」
「慰めてくれるのかい?、シンジ君」
「大丈夫だよ、カヲル君はカッコイイから、きっとちゃんとカヲル君を好きになってくれる人が現れるよ」
「それは君じゃいけないのかい?」
「僕じゃ無理だよ、僕は男だから、ダメなんだ」
「僕がそれでも良いとしても?」
「カヲル君……」
「シンジ君……」
「だぁああああ!、やめぇええええ!」
アスカは半狂乱になって泣き喚きながら割り込んだ。
「ななななな、なにやってんのよっ、アンタたちはぁ!」
「なにって……」
「レイ君監修の寸劇、こうして僕は墜落した、だよ」
よけいなことすんな!、っと、レイの手にあったノートを奪って床に叩きつけ踏み付ける。
「あ〜、なにすんのよぉ」
「あんた馬鹿ぁ!?、しゃれになってないってのよ!」
「みんな喜んでるのに」
「そうそう」
と言ったのはミサトだった。
「惣流さんもこっち来て座ればぁ?、面白いわよぉ?」
「あんたそれでも教師なの!?」
「うん」
「……」
「だからほら」
ほらほらと女子一同もアスカを引っ張る。
アスカは頭痛の余り立ち眩みを起こしてしまって、逆らうことができなかった。
「変よ、ぜったい、クラス全員」
「そう?」
「そうよ!」
「んなこと言ってもさぁ、暗いよりは楽しい方が好いし」
「あんたは明る過ぎなのよ……」
パンを頬張るレイに対してうなだれる。
学校の屋上だ、シンジたちはみんなでお弁当を広げていた。
「だいたい、なによそれ、なんでお弁当があるのにパンまで食ってんのよ?」
「だって育ち盛りだしー」
「どこが育ってんのよ」
「むっ、育てるために食べるのよ!」
「そんなの腸の中に食べかすが残って体重が増えることになるだけじゃない」
あーん、シンちゃ〜んっと抱きつく。
「あーーー!」
「アスカが虐めるぅ!」
シンジはアスカと呼んでいることに気がついたが、突っ込まなかった。
「良いんじゃないかな?、綾波はみんなより元気だし、その分食べないとね」
「う……、それじゃあまるであたしがガキッぽいみたいに聞こえる」
「まんまガキじゃないの!、はーなーれーろー」
「いーやー」
うぬーっと引っ張り合いになる、と、それまで両手で持ったホットドックをもぐもぐと食べていた小レイが動いた。
シンジの背中にぴっとりと背を合わせて驚かせる。
「な、なに?」
レイが説明する。
「あー、ごめんねぇ、のけものにしちゃってぇ」
もぐもぐもぐ。
「ほらほらほら、レイちゃんも一緒にとりあいっこしよーよー」
こくん。
「ってうわぁ!、パンの油が、ケチャップがぁ!」
だが小レイは兄の悲鳴も喜びに変えて、一層お兄ちゃんを取っちゃヤだっと、シンジの腰から離れようとはしなかった。
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