(なんなの?、なんなのよこれは、この状況はぁ!)
アスカはじゃれ合いの中で揉まれながら考えていた。
嫌がりながら、本心では怒っていないシンジがいて、必死になりながらも、楽しそうな妹の姿があって、それを微笑ましく思いながら、溶け込もうとしている女が居て……
取り込まれている、自分が居て。
「だぁ!」
アスカは勢いよく飛び起きた。
「違う!、あたしが望んだのはこんな展開じゃない!」
そう。
「あたしが思ってたのは!」
「思ってたのはぁ?」
はっとする。
クラスの人間全員が、なんだなんだと驚いていた、その中に目を丸くしているシンジを見付けてしまい、赤面する。
──授業中だったと思い出す。
「あ、あの……」
「惣流さん?」
「は、はい!」
リツコはにっこりとして彼女に命じた。
「バケツを持って、廊下に立ってなさい」
「は、はい……」
アスカはあまりの剣幕に、空のバケツを抱きかかえ、すごすごと教室の外に出ていった。
「なぁにやってんだか」
帰り道。
アスカはレイの言葉にむぅっとなったが、確かにその通りなので、何も言い返せずに悔しげにした。
「まぁまぁ」
見かねたシンジが仲裁に入る。
「アスカも疲れてるんだよ、こっちに来てから色々とあったからね」
あんたが言うなぁーっと全員が突っ込む。
「大体あんたが悪いのよ!」
「え?、なんで僕が」
「あんたが妹といちゃついて喜ぶようなヘンタイだからよ!」
「へ、ヘンタイって」
「お兄ちゃんはヘンタイじゃないわ」
「どこがよ!」
「正常なの、だからお兄ちゃんはわたしが好きなの」
「れ、レイ……」
ぴとっとくっつく妹に、それも変だよと手で顔を被う。
「お兄ちゃんは、わたしだけのお兄ちゃんなの、だから誰にも上げない」
「え?、じゃあたしはぁ?」
「……わたしと、お姉ちゃんだけのお兄ちゃんなの」
「渚君もいらないのぉ?」
う〜っと困る小レイである。
「からかってないでさ」
こつんと叩かれて、レイはぺろっと舌を出した。
えへへと笑う。
アスカは……、そんな三人に何を感じたのか、ざわりとするものを感じて叫んでしまった。
「もういいわよ!、ばか!」
そのまま背を向け、駆け去って行く。
「え?、あ、アスカ?」
あちゃ〜っとレイ。
「虐め過ぎちゃったかな?」
ごめん、これよろしくぅっと鞄を預けて、レイはアスカの後を追っていった。
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