「はいはい、お茶ねぇ、それともお水?、ジュースはダメ!、ご飯が終わってから!」
「……」
「ほらっさっさと洗う!、ああもうそんな洗い方じゃちゃんと洗えないでしょう、ほらこうするの!」
「……」
「ん?、本?、つまんないの読んでるわねぇ、これ貸したげるわ、恋愛ものなんだけど、ちょっとだけエッチなシーンもあるんだから」
「……」
事細かに世話を焼くアスカの様子に、シンジは薄気味悪いものを感じてレイに訊ねた。
「綾波、アスカ、どうしたの?」
「ん?」
床の上に寝そべり雑誌を読みふけっていたレイは、顔を上げるついでに口のせんべいをバリッと砕いた。
「ああ、なんかふっきれたみたい」
「ふっきる?」
「そうそう」
あるいは作戦変更したかなぁ?、っと、シンジを不安にさせるようなことを口にした。
「つまり!」
固めた拳を太陽に突き上げる。
「あたしは悟ったわけよ!、シンジは甘えベタだってね!」
「そうなのかい?」
「そうよ!、そうに決まってる……、あんな妹を二人も抱えてたら、甘えてる暇なんてなかったに決まってる!、そのせいでシンジには余裕がないわけよ!」
ははぁんとカヲル。
「そこで君の出番となるわけだね?」
「そうよ!、あたしが二人の面倒を見れば、シンジだって」
そう巧く行くものかい?、とは思ったが、カヲルは口を挟まないことにした。
「それで、レイちゃんは懐いてくれたのかい?」
うっとアスカは小さく呻いた。
(そうなのよねぇ……)
教室、机の上に身を沈め、アスカは唸りながら頭を抱いた。
ちらりと見ると、相変わらずシンジの傍には小レイが居る。
(なぁんでダメなんだろ?)
ちょっとだけ悔しくて歯噛みする。
どんなに頑張っても、レイは自分を頼ってはくれないのだろうか?、懐いてはくれないのだろうか?、だとすればシンジを引き離すのは難しいかもしれない。
(まったく!、シンジのどこがそんなに……)
そんなことを考えてしまって、アスカは慌てた。
(ちーがーうー!)
うだうだともがく。
(あたしはあの子をブロックするために頑張ってるわけで!)
甘えてくれないからって、シンジに嫉妬してどうするのよ!、と転がった。
「……」
もちろん、そんなアスカの奇行は、嫌でも三人の目にとまる。
「ま、大体なに考えてるかわかるんだけど」
大レイの口ぶりにシンジは驚いた。
「え?、そうなの?」
「うん……、っていうかシンちゃん鈍過ぎ」
「ニブスギ」
幼レイにまで言われるとさすがにふくれる。
「なんだよもぉ、二人してバカにするなよなぁ」
そんなシンジの頭にぽんと手を置いたのは小レイだった。
「お兄ちゃん、かわいい」
「あのね……」
「でも良いの?、レイちゃん」
ん?、っと見る小レイに対して、大レイは訊ねた。
「あの人、シンちゃんを独り占めにしようとしてるんだよ?」
レイはぷるぷるとかぶりを振った。
「でも、悪い人じゃないから……」
「レイ……」
「レイちゃん……」
シンジはそんなレイの変化に、素直にじーんっと感じ入ったが……
(なに考えてんだろう?)
大レイは妹の邪悪な部分を感じ取り、なにを企んでいるのかと首を傾げた。
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