アスカのノートには一体なにが書かれていたのか?
それはやはり謎のままとなってしまったのだが、レイの、「ま、見ない方がいっか」の一言によって納まってしまった。
まあそれはそれとして。
「とにかく!」
アスカはビシッとシンジのことを指差した。
「あんたってどうしてそう節操無しのちゃ……、ちゃ、ちゃ?」
「ちゃらんぽらん?」
「そう!、そのちゃんぽんなのよ!」
ちゃんぽんはマズいよと赤くなるレイ。
ちゃんぽんはおいしいのとうっとりとする小レイ。
そんな二人に突っ込むこともできずに、シンジはただただうろたえてしまった。
「なんだよそれ、どういう意味だよ」
「とぼける気!?」
キッと睨み付けて、アスカは呟くように口にした。
「『僕のお嫁さんにして上げるから』」
「……え?」
「『大きくなったら僕のお嫁さんにして上げるから』、『大きくなったら結婚しよう』、まだまだあるわよ?」
「ななな、なんだよそれ!?」
ピンと来てしまうレイたちである。
「それって……」
「お兄ちゃんのコロシ文句」
ジト目が向けられ、シンジは数の多さとその圧力の凄まじさにたじろいだ。
「ううっ、ちょっと待ってよ……」
「あんたねぇ、一体これ何人から聞き取ったと思ってんのよ!」
ビシッと指差す。
「潜在的な問題は、むしろあんたのことの方が重要なのよ!」
「えーーー……」
「えーーーじゃない!、そりゃ小さい頃のことだからって想い出にしちゃってる子も多かったけどさ、でも未だに信じてる子だって居るんだからね!」
そりゃ自分のことでしょとレイまでもが突っ込みを入れた、かなりのものを棚に上げて。
「そのあんたのいい加減な態度のせいで、どれだけの子が期待持ったままやきもきさせられてると思ってんのよ!」
「そ、それが今の問題にどう関って来るんだよ?」
「あんたねぇ……」
アスカは心底呆れ返った調子でかぶりを振った。
「カヲルの周囲がそれだけ騒がしくなってるってェのに、アタシに手が伸びないと思ってんの?」
「……来てるの?」
「怪しいのがちらほらとね?、知ってる?、二三日中に転校生が来るらしいわ」
「転校生?」
「アイダが教えてくれたのよ、カヲルのとこの門下生の子供だってね?」
ちらりと目を向けると、カヲルは軽く頷いて見せた。
「そういうことかい」
「そうよ」
「どういうこと?」
根気よく説明してやるアスカである。
「だーかーらぁ!、霧島だぁ赤木先生だっつってもよ?、やっぱりアタシを推すって奴は根強く居るのよ」
「もうラングレーとかって家とは関係無いのに?」
「血筋であれば問題無いのよ、廃嫡された庶子が後で返り咲くことなんて珍しかないんだから」
「つまり僕と復縁を果たしたところで、改めてアスカに謝りを入れさせ、ラングレーのご両親との戸籍を回復させれば、全ては元の鞘に納まるというわけさ」
「そのためにはあたしたちを焚き付ける役割を担った奴が来たって不思議じゃないでしょう?」
「うん」
「そんな奴らがよ?、あんたに関する噂の山を嗅ぎつけたらどうなると思ってんのよ!、未だにアンタがアタシがらみの事件の主犯だって思われてんのに!」
ぼそっとマユミが口にする。
「印象、サイアクですね」
グサッと刺さった。
「そうよ!、さぁ!、このオトシマエ、どう付けてくれんのよ!」
「どうってなんだよ」
「決まってるじゃない!」
アスカはビシッと指差し直して、頬を赤らめた。
「せ、せ、せ、責任とって「あたしぃ!」と付き合うのよって声被らせるなぁー!」
テヘッとレイが舌を出す。
「でもアスカぁ、そういう理由で決着つけようとするのは止めた方がイクない?」
「なんでよ!」
「……『順番』で行くなら、もっと前が出て来そうだから」
『うっ』
ってあんたも被るなぁっと、アスカはシンジに突っ込んだ。
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