「そう、わかったよ、ありがとう」
これ見よがしに通話を切る。
「誰からよ」
「でばがめ三号と四号からさ」
「誰よ……」
「良き友、協力者たちさ」
「それで?」
「現在の状況を教えてくれたよ」
見るかいとカヲルは携帯電話の液晶画面を見せた。
ビキッとアスカは固まった。
そこには腕を組み、幸せそうにはにかんでいる二人のフォトが……
──ガシャン!、ガンガンガン!
「ああ、酷いね、何をするのかな?」
ふぅふぅと荒く息をするアスカである。
もはや猛獣と同じだった。
「あのバカ女ぁ〜〜〜、シンジもシンジよ!、でれでれしちゃって!」
「シンジ君も男の子だったということさ」
「行くわよ!」
「どこにだい?」
「シンジたちのところによ!」
「だからそこはどこなんだい?」
「どこって今電話があったんでしょうが!?」
「それがねぇ」
困ったことにねぇと嫌味たらしく口にする。
「今の連絡はバスでどこかに向かおうとしているというだけの報告だったんだよ、その行く先を見極めてから、また連絡すると……」
アスカは引きつり、自分が踏み潰した残骸を見やった。
「あ……」
「そういうことさ」
「あああああーーー!」
「ま、自分の気の短さを呪うんだね」
そして小レイがとどめを差した。
「バカな子ね……」
「わぁ……」
展望台、そこから眺められる景色には、心を奪われるようなものがあった。
「あ、シンジ君あそこ!、あれってさっき乗った遊覧船だよね?」
「そうみたいだね、双眼鏡覗いてみる?」
「見る見る!」
「どう?」
「……見るんじゃなかった」
「へ?」
どうぞと代わろうとするマナの態度に不審を感じて、何を見たのかと覗いたシンジだったのだが、なるほどと深く納得した。
遊覧船の船着き場に、非常に見慣れた人物たちが、集団となってたまっていたからである。
特徴のある容姿の組み合わせが、間違いではないことを教えてくれていた。
「やっぱり……、ミサト先生もグルだったんだね」
そこで時間切れとなる。
「行こうか」
「そうね」
二人はエレベーターに向かって、そこでまたばったりと出くわした。
「し、シンジ!」
「……ケンスケ」
「ぐ、偶然だなぁ、おっと、人待たしてるんだ、じゃな!」
ジト目で見送る。
「見張ってたな」
「きっとね」
はぁっと二人で溜め息を洩らす。
「着けられてる」
「っていうか見張られてる?」
気分悪いよねとマナ。
「なんか台無しって感じぃ」
「かもね……」
「どうしようか?」
「どうするって……」
マナはふふっと微笑んだ。
「逃げる?、それとも諦める?」
シンジは即座に答えた。
「逃げよう……」
「でもどこに?」
「どこって……、それは」
エレベーターに乗り込むと、真正面に広告が貼ってあった。
えっとマナ。
驚きついでに顔を赤らめる。
「ええとっ、シンジ君、それってまずくない?」
「え!?、違うよ、そうじゃないよ!」
「そうじゃないって?」
「あっ、ええと、だから違って……」
なんだかよくわからなくなってくる。
と、急にマナは吹き出した。
「そんなに焦らなくたって良いじゃない」
「なんだよもぉ、からかわないでよ」
優しく笑う。
「可愛い、シンジ君」
「……」
「ねぇ」
「なに?」
マナはコンッと貼り紙を叩いた。
「行こっか、温泉」
「え?、でもさ……」
「ホトボリさめるまで浸かってよ?、ね?」
シンジはまあ良いかと気楽に了解した。
(別に一緒に浸かるわけじゃないもんな)
男女は別、当然そうだと考えたのが、シンジの敗因であったかもしれない。
続く
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