お昼、楽しいこと、お腹が膨れること……。
 ドッグフード。
 お肉、お腹がいっぱい、でも味はいまいち……。
 お弁当、量は少ない。
 でもおいしい……。
 碇君の手作り、だからおしいのね、きっと……。
「碇君(と仲良くなったこと)は、おいしいのかしら?」
 ぎっくぅ!
 綾波の漏らした言葉に、シンジは箸を取り落としていた。


「よろこべ男子諸君! 遅くなったけど転校生を連れて来たわよん?」
 わああああ!
 いつもならトウジ達と一緒にはしゃぐ所なのだが……。
「う、背中に殺気が……」
 シンジは思わず振り返った。
 じ────……。
 綾波、さっきまで隣に座っていたのに……。
 何故だか真後ろに座っている。どうしてだろう?
「シーンちゃあん。ラブラブなのは分かるけど、今は転校生に注目してねん?」
「は、はあ……」
 いつ見てもナイスバディな先生であるが、シンジはその腹が中年ぶとっているのを知らない。
「そこぉ、うっさいわよ!」
「先生、誰に怒ってるんですか?」
 怪訝そうに、訝しむ。
「あっ、ははははは、ちょっちねぇ、こっちのことで……」
 気まずそうに頭を掻く、葛城ミサト30歳。
「失礼ねっ、まだ29よ!」
 だから誰に?
「それより()よしてぇやぁ、先生」
「そうだよ。転校生はどこに居るんだ?」
 みんな食事を中断して待っているのだ。
「はいはい、じゃあ入ってきてぇ?」
「はい!」
 入って来たのは、くりっとした目の女の子だった。
 栗色の髪はショートカットで……。
あ────、シンちゃんだぁ!
「へ?」
「シンちゃーん!」
 いきなりの抱きつき攻撃がクリティカルヒットした。
 殺気立った視線が、シンジに向かって集中する。
 この髪の臭い……。
 シンジは真横にある髪の香りに埋もれた。
「マナ?」
 シンジはポツリと、昔飼っていた犬の名前を呟いた。



[BACK][TOP][NEXT]