「シンちゃん。シンちゃん。シンちゃんだ〜!」
抱きつき、ペロペロと舐めようとする。だがその行動はキスしようとしているようにしか見えない。
「ちょっとあんた。なにやってんのよ!」
「あん!」
赤い髪の少女が、マナの首根っこを引っつかんで引きはがした。
「ほ、ほんとにマナなのって、えっ!?」
「すっごいとこ見せつけてくれるじゃない?」
彼女のこめかみには青筋が……。
「まさか?」
「そうよ。覚えてたみたいね?」
惣流・アスカ・ラングレー。
ドイツに引っ越したはずの幼馴染が、なぜだかそこに立っていた。
「あ〜そうそう、もう一人転校生が居たのよね?」
「先生! 早く言ってくださいよ……」
シンジはアスカとマナを見比べた。
「じゃあ、本当にマナなんだ……」
「驚かないのね?」
「あ、うん……」
シンジはちらりとレイを見た。
マナはその視線を追い、アスカにこそっと耳打ちする。
「あたしと同じ、あの子……」
「アスカ、ごめん!」
シンジはいきなり頭を下げた。
「ななな、なによ。一体……」
アスカは驚き後ずさる。
「だって、大事にするってマナを預かったのにさ……」
ざわざわと教室中が騒がしくなった。
大事にするんだってさ?
預かったって……。
あの惣流って子も、ヤバいんじゃないのか?
ヤバげな誤解が一瞬で広がる。
シンジは記憶を蘇らせた。
散歩中のシンジ、だがマナはシンジの隙をついて逃げ出したのだ。
「ほんとは怒りたい所だけどね……」
アスカはちらっとマナを見た。
マナは舌を出して「はっはっ」と喜んでいる。
「まあ追いかけて来ちゃったもんはしょうがないし? 正直嬉しかったし……」
「うん。それは分かるような気がする」
「ほほぉ……」
アスカの機嫌がいきなり悪くなった。
「な、なんだよ……」
「それはその子のせいかしら?」
「え!?」
「碇君……」
レイが背中に張り付いている。
「こここ、これは!」
「変態」
「違うよ」
「どスケベ」
「誤解だよ!」
「えっち」
「お、お願いだから……」
「信じらんない、さいてー!」
「話を聞いてよぉ!」
アスカの一言毎に、クラスメートが頷いている。
この一部始終を録ったテープが校内放送で流れたのは、わずかに5分後のことであった。
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