「知らなかったな、アスカがお金持ちだったなんて……」
膝の上で強引に丸くなっているレイの頭を撫でている。
綾波、小型犬ならまだ良いんだけど、足しびれたよ……。
シンジは泣きそうになるのを堪えていた。
「うわぁ!」
ぶるぶるぶるっと頭を振る綾波。
「もうっ、ちゃんとタオルを使ってよ!」
濡れた髪から飛び散る滴。
お風呂から上がったレイは、タオルを体に巻いただけの姿で出て来ていた。
床を一生懸命に拭うシンジ。
「タオル……これしかないんだもの」
しょぼくれてバスタオルを外そうとする。
「わああああ! な、なにするんだよ!」
「頭、拭くの……」
「だだだ。ダメだってば!」
「碇君……痛い」
慌てたシンジは、タオルを外せないように押さえたのだが……。
「うわ! ご、ごめん!」
シンジは両手で胸をつかみ上げていた。
「いい、慣れてるから……」
慣れてる? 慣れてるってなに? 今なんて言ったの?
ゼロコンマ3秒のうちに、脳裏で様々な妄想が繰り広げられる。
シンジは感触を思い出しているのか? 両手の手をわきわきしていた。
「わたしがまだ犬だった頃、いつも持ち上げてもらってたから……」
小犬のお腹をもって持ち上げると言う図が、シンジの脳裏に浮かんで消える。
「はぁ……よかった」
「なにが?」
うっとシンジは言葉に詰まった。
「碇君、なにがよかったの?」
「あああああ、あの、その!?」
問いかけるような瞳に口ごもる。
「いいから早く服を着てよ!」
返答に詰まって叫んでしまった。
え?
去り際、レイの口元が笑みを浮かべていた。
からかわれた!?
真っ赤になってレイの背中を目で追うと……。
「はう!?」
ピンと立った尻尾に、バスタオルがまくれていた。
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