「ぶわははは、あんたバカぁ?」
 キッチンの椅子に腰掛け、ひっくり返りそうな勢いでアスカは豪快に笑い飛ばしていた。
「なんだよもぉ……」
 赤くなって小さくなる。
 シンジが恥ずかしがっている理由は幾つかあった。
 まず第一点は、小犬を子供と勘違いしたこと。
「あんたそう言う趣味があったわけぇ?」
「ち、違うよ……」
 言いながらも、シンジは足元からじっと見上げているレイが気になっていた。
 はっはっはっはっは……。
 その胸に抱かれている小犬も、同じようにシンジを見上げて舌を出している。
 かなり遊びたがっているようだ。
「それともあんた。まさか身に覚えがあるんじゃないでしょうねぇ?」
 すっとアスカの目が細まっていく。
「あるわけないだろ!?」
「どうだか……」
 言いながらもアスカから視線をそらせてしまう、それが余計に不審を煽る。
「なに避けてんのよ?」
「別に……」
「やましいことしてるから……」
「してないってば……」
 アスカ、もっとちゃんとしたもの着てよ……。
 その一言がとても言いがたい。
 アスカはノーブラ、タンクトップのシャツにショートパンツと言ういでたちであった。


 まったく、アスカって危機感足りないんだから……。
 シンジは居間で月を見上げていた。
 その横にはレイがごろんと横たわっている。
「なに?」
「……足、汚れてるよ?」
 シンジは何気にレイの足首をもって持ち上げた。
「あ……」
 うつぶせにされるレイ。
「……何をするのよ?」
 何故だか赤くなっている。
 カーペットの上にぺたんとなると、妙にお尻の隆起が目立っていた。
「拭かなきゃ、汚いよ……」
 立ち上がる。シンジはタオルを濡らしに行ったが、レイはその間もじっとして待っていた。
 とすん……。
 再びレイの足元に座り込む。
 レイはシンジの目から逃れるように首を動かした。
 ……嫌なのかな?
 ちょっと悲しくなったが、シンジはレイの足を拭い出した。
 ……気持ち、いい。
 とレイが思っているかどうかはともかくとして、シンジは丹念に指の間まで拭いていく。
「……知らなかったな」
 そしてシンジは呟いた。
「綾波の足って、ピンク色をしてたんだね?」
 レイの頭部から、ふしゅうとメルトダウン寸前のような蒸気が立ち上る。
「……綾波?」
「なに?」
 そんなレイの様子に気がつかないシンジ。
「……ちゃんと靴下履かなきゃダメだよ?」
「わかったわ……」
 などと言いつつも、また拭いてもらおうと画策してしまうレイであった。

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