「ん……」
 眠りから覚める。
 その日は朝から暗かった。……と思ったら。
「なんだ。一時間しか経ってないじゃないか……」
 いきなり大ボケをかますシンジであった。


「綾波ぃ、どうしたのさ、こんな時間に?」
 恐いから、玄関口でうずくまるのはやめて欲しいんだけどな……。
 そうは思っても口には出せない。
「綾波?」
 何だかそわそわとお尻の辺りを動かしながら、玄関からじっとシンジを見ている。
 瞳が心なしか潤んでいた。
「碇君……」
「わわっ、な、なに!?」
 シンジの寝間着に手をかけながら、這い上がるようにもたれ掛かかる。
「くぅん……」
 いつものお出かけのための制服姿だ。
 シンジはその体を支え、生唾を飲み下しながらレイに尋ねた。
「外に出たいの?」
 レイは答えず、ますます艶めかしくしなだれかかる。
「違うの? なんだよ。なんなんだよ!?」
 お願いだからそんな目で見ないでよ!
 シンジの太股に腰をすりすりとすりよせる。
 なんだよこれ……。
 だんだんとよくわからなくなってくる。
 頭が痺れるみたいだ。なんだろう、この甘い香りは……。
 それがレイから漂って来ているものだと気付くのに数秒かかった。
「あ、綾波?」
「くぅん……」
 鼻先をすりよせ、ペロッとシンジの顎先を舐めた。
「あ、綾波ぃ!
静かにしなさいよぉ!
 スパァン!
 がばっと錯乱したシンジの頭に炸裂するハリセン、別名『スタンプ・オブ・マーダーくん三世』
 振り回したのはもちろん。安眠を妨害されて憤慨しているアスカであった。

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