「大体ねぇ? 犬の発情に触発されてるあんたが異常なのよ!」
「しょうがないだろう? 人の姿をしてるんだから……それに発情期なんて初めてだったんだもん」
「まったく、あんたには理性ってもんが無いのかしらね?」
 二人は電車に乗っていた。


「おっかしいわねぇ? この辺のはずなんだけど……」
 二人はレイの学生証に記されている。レイが元飼われていた家を探していた。
「ねえアスカ?」
「なによ?」
「この辺りって、見覚えない?」
 家などは建てかえられたりしているのだが、路地の配置には覚えがあった。
「あんたばかぁ? 住宅地なんてどこでも同じに見えるわよ……あ、ここね?」
「碇……」
 表札に呆然としてしまう二人。
「まさか!?」
「そうだよ。やっぱりここって!」
 シンジは庭の方に回ってみた。
「!?」
 そこに人が居た。庭木に水をまいている。
「誰だ?」
 振り返る男。
「……父さん」
「シンジか?」
 ごくり……。
 対面し、お互い硬直してしまう。
 シンジは生唾を飲み下した。
「なぜここに居る?」
 妙に威圧的な父である。
「あの……綾波の、飼われてた家を探して、それで……」
「綾波?」
「綾波レイの」
「レイ!?」
 ひぃいいいいいい!
「父さん!?」
 先程までの威厳はどこへやら、父ゲンドウはムンクさながらの脅えた姿を晒していた。

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