ふんふんふ〜ん☆
 今日も朝から機嫌がいい。
 奇麗な小鼻から鼻歌が漏れ出している。
 アスカは補修も補強もしていない穴をくぐると、真っ直ぐにバスルームに向かった。
 あら?
 誰かが入っている。
 あいつ……なわけないわよね?
 レイはお風呂嫌いだ。朝から入るはずが無い。
 なら残るは一人。
 シンジ……ね?
 消去法ではそうなってしまう。
 むふ☆
 悪巧みの色が浮かんだ。
 ま、昔は一緒に入った仲だしね?
 全然いいわけになってない。
 こ、これはあくまでからかうためよ? 既成事実、なんて計算づくじゃないんだからね!
 自分に言い訳している辺りで終わっている。
 アスカはガラス戸に手をかけた。
 ガラ!
「ぐーてんもるげん! バカシン……ジ」
 しかしそこにあったのは……。
 白い肌。
 細い体。
 締まったお尻。
 そしてシャワーに濡れる銀の髪。
「やあ、おはよう、君もシャワーかい?」
 きゃあああああああああ!
 一応女の子っぽく胸を隠して恥じらいながら、後ろ回し蹴りを股間部へ叩き込むアスカであった。


 シンジ、レイ、カヲルの三人は、落ちついた昼食を楽しんでいた。
「ふうん。それでアスカ、落ち込んじゃってるんだ……」
 奥の部屋の隅っこで、マナの髪のノミ取りに勤しんでいる。
 どうもそれがアスカのいじけている時の姿らしい。
「気持ちよさそう……」
 マナを羨むレイ。
「……する?」
 シンジの言葉にコクンと頷く、尻尾が椅子からずり落ちていきなりパタパタと揺れ出した。
「犬はいいねぇ? 好きな人に存分に触れてもらえる。全くあやかりたいぐらいだよ……」
「なにを言うのよ」
 赤くなる。
「うらやましい……と言っているのさ、ね? シンジ君……」
「な、なにかな……」
「後で背中を流してあげるよ」
 誘うようなウィンクをする。
「え!? い、いいよ。悪いよ!」
 鳥肌が立つ。
「遠慮することは無いさ、それが男同士である僕に残された特権だからね?」
 ガブ!
 机の下に潜り込んだレイが、いきなりカヲルの足を噛んだ。
「痛いね、君は……」
「あんたが気持ち悪いだけでしょうが!」
 あ、復活した……。
 意外とシンジは冷静である。
「あんたもあんたよ! 何で黙ってるのよ!」
 ズズズッとお茶をすするシンジを、アスカはキッと睨み付けた。
「何でって……」
 小首を傾げる。
「あんたバカぁ!? このあたしが覗かれたのよ? 怒りなさいよ!」
「覗かれたのは僕……」
 バガン!
 アスカのパンチ、頭骨が割れたような音がする。
「うわぁ……カヲル君? 大丈夫」
「少し、効いたよ……」
「って心配してんじゃないわよ!」
 シンジの胸倉をつかんで引っ張り上げた。
「なによ! こんな奴のことは心配して、あたしのことは何とも思ってないってわけ?」
 ぷっ……。
「笑うんじゃない!」
 骨っ子を投げ付けたが、ジャンプしたマナにパクッと取られた。
「さあ、シンジ! どうなのよ!?」
 何で顔が赤いの?
 その事の方が気になってしまう。
「……うん。だってさ? 僕が怒るような事じゃないし」
「ぬわんですってぇ!?」
 怒りでフルフルと震えている。
「ご、ごめん! でもほら、アスカ前から言ってたじゃないか!」
「なにがよ!?」
 返答次第ではっと、思いっきり拳が振り上げられる。
「自慢のナイスバディが見せられなくて残念だって! 良かったよね? 見てもらえて」
 ガコン!
 ひたすら墓穴を掘りまくったシンジであった。

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