「めりー、くりすまぁす!」
 一日早くパーティーが始まる。
「……クリスマスは明日」
「ごめんね綾波、アスカがどうしても明日は出かけようって……」
「どこへ?」
「映画とか……」
「おいしい?」
「へ?」
「どこで食事するの?」
「するのかなぁ?」
「見えるわ」
「なにが?」
「碇君が食べられていくの」
「あんたなに言ってんのよ!」
「クリスマスディナーはベッドの上ね?」
「くすくすって、あんたねー!」
 微笑ましい二人をぼうっと眺める。
「はいシンちゃん。あ〜ん……」
「あ、うん……」
「美味しい? ねえ」
「う、うん。美味しいけど……」
「やったぁ! じゃあこれは?」
 ……作ったの僕なんだけどな。
 食べさせる事に意義があるのだろう。
「ほんとにもう! シンジ、シャンペン!」
「あ、うん……」
 と言って父から送り付けられて来たやたら高そうなシャンペンを取り出す。
「これけっこうキツそうだけど……」
「大丈夫よぉ、あんたも飲むのよ!」
「ちょっとだけだよぉ?」
 隠れてレイがほくそ笑んでいた事に、シンジとアスカは気がつかなかった。


 三十分後。
「明日はねぇ、海にでもいかなぁい?」
「海になんて行ってどうするのさ?」
「ばっかねぇ、奇麗な夜景と可愛い女と、後他になにがいるのよ?」
 苦笑する。
「また変なドラマにはまってるでしょ?」
「なぁによぉ?」
「車なんて無いからね?」
「つまんなぁい!」
 ジタバタと暴れる。まるで子供だ。
「あんた免許取んなさいよぉ」
「無茶言うなよなぁ……」
 いかんせんまだ中学生だ。
「それに楽しい所ならいっぱい誘いが来てたじゃないか……」
 大学、研究所、中学、高校のサークル、どこぞの企業に財閥、果てはコンパの誘いまで。
 ボロマンションに届く便箋としてはあまりにも浮いているものが何通かあった。
「アスカって……一体?」
「あんたが首ひねっても分かんないわよ」
 サクッとマンションを買えてしまう辺り非常に怪しい。
「そぉれぇにぃ、あたしが居ないと寂しいんじゃなぁい?」
「うん……」
 至極あっさりと。
「女の子とクリスマスなんてしたことないし……」
「レイがいるじゃなぁい?」
「綾波が大人しく腕組んで街を歩いてくれるんならね?」
 食い物の匂いにつられて引きずり回されるのが落ちだろう。
「なんか消去法みたいで気に入らないわねぇ……」
「明日くらいは幼馴染の特権を使わせてよぉ」
 ごろごろと甘える。
「はいはい……って、幼馴染って何よ?」
「え?」
「あんたあたしと付きあってんでしょうが!」
「そうなの?」
 キョトンと膝の上から見上げる……と言うか、いつの間にやらアスカの膝を枕にしていた。

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