「というわけで」
　アスカはボードに問題を書くと、レイの前にどんっと置いた。
「知能テストよ！　いちたすいちは！？」
「わんわん」
「真面目に答えなさいよぉ！」
「たとえば？」
「マナ！」
「なにぃ？」
「いちたすいちは！」
　２と書かれた紙をくわえて自慢げに「ちんちん」を披露するマナである。
「さっすが！　どう？　これが天才犬ってもんよ！」
「それもどうだか……」
「なんか言ったぁ？」
「いやアスカの教育って凄いなって思ってさ」
「そうでしょそうでしょ。うんうん」
　腰に手を当ててうれしそうに胸を張りつつ頷くアスカである。
「くす……本当ね。飼い犬は飼い主に似る……」
「……アンタがいうと、なんか素直に聞けないんだけど？」
「被害妄想よ」
「そう？」
「あるいは幸せな人ねと言ってあげるわ」
「むぅ……やっぱり悪意含んでない？」
「だから気のせい……」
「でもでも」
　マナである。
「あたしぃ、いちおうシンちゃんの犬……なんだ……けど」
　きゃうんきゃうんと、レイに睨まれてアスカの背後に隠れてしまう。
「にゅー（Ｔ　＾　Ｔ）」
「碇君はわたしのご主人様よ。あなたのじゃないわ」
「……そのわりに立場低いんじゃない？　あんたって」
「……僕にどうしろっていうんだよ」
「どう……って、それは」
「しつけるの？」
「う……」
　アスカはちょっと目をきらきらとさせて尻尾をばたつかせたレイに焦った。
「そ、それはだめよ！　調教するならアタシに！」
「はい？」
「いやじゃじゃじゃじゃじゃなくて！」
「……本音が漏れたわね」
「アスカってへんたーい！」
　きぃ！
「あんたたちねぇ！」
「犬だもの」
「あたしたちはいいんだもんねぇ？」
「……あなたはその人にしてもらえば？」
「えー？　女の子にしてもらうなんて変態じゃなぁい」
（あ、ヤバイ）
　シンジはそそくさと逃げた。
「こっ、のっ！　バカ犬共がぁ！」
　どかーんとマンションが飛び上がった。
　シンジは四つ足で逃げ回る二匹と、それを追い回す鬼女を置いて、自室に入って扉につっかい棒を噛ましたのだった。
「宿題しよ」

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