「綾波も落ち着いてきたよね」
公園を散歩している二人である。
「わたしも人間換算で十四歳だもの」
「ふうん……じゃあ綾波の方が先に大人になっちゃうんだ」
ぴたりとレイは立ち止まった。
「碇君……」
「え?」
「碇君は年上が好き?」
「え? ……う〜ん。よくわかんないや」
「そう」
「なんなの?」
「それじゃあ、とりあえずわたしは十四歳のままでいることにするわ」
「するわって……そんなことできるの?」
「……そういうことにするだけよ」
──女の子ってのはね! 一定以上には歳食ったりしないもんなのよ!
三十路を前にして半泣きになって力説していた担任のことを思い出し、それがベターな選択であろうと解説をくれるレイであった。
「…………」
「なによ?」
晩ご飯の時間である。
箸を口にくわえてじっと人の顔を見るシンジに、アスカはへんなとこで見つめないでよと嫌な顔して問いかけた。
「なんかついてる?」
「ううん……あのさ」
「なに?」
「思ったんだけど……」
「だからなによ?」
「なんでアスカの方が偉そうなのかなぁって」
──ゴン!
「ぶつわよ!?」
「もうぶってるって!」
殴り足りないとばかりに拳をぷるぷると震わせるアスカに恐怖する。
「そうじゃなくてさ! マナって僕たちが小さい頃に拾ったじゃないか!」
「だからなによ!」
「だからぁ! マナって人間の歳に直すともっとずっと大人なんじゃないかって」
「はぁ!? アンタばかぁ!? 犬ってのはあっという間に大人になるけど! 元気でいる期間ってのは長いモンなのよ! その後いっきに老化するの!」
「はぁ……スゴイや」
「あんたも……って、マナ?」
「へ?」
「なににやにやしてんのよ?」
「だってぇ……」
えへらと笑って……。
「アスカがおばさんになってもぉって」
──ゴガスン!
「ぬおああああぁうあぅあぅあああああああ!」
「誰がおばさんになるってのよ!」
「……あなた」
にやっと笑って、こっそりバカにするレイであった。
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