(あれ……なんだろう?)
 ハリセンで肩を叩きつつ、シンジとレイの勉強を見ていたアスカは、部屋の梁に付着している白いものに気が付いた。
 転々と……大きさもバラバラなのだが、気にしなければ気にならない程度のものだった。
「どうしたの?」
「ん……ちょっとね」
 不審げなシンジの問いかけも適当に流して、アスカは立ち上がると梁の元へと寄り、背伸びをして確かめようとした。
「これ……」
 ほこりかな? そう思い、指で取ろうとして思いとどまる。
 ──青ざめた。
「アスカ?」
 ぷるぷると震えているかと思ったら、急にアスカは叫びを上げた。
「いやぁあああ! なによこれ!? カビじゃない!」
「カビ?」
 ぐーで鉛筆を握って、ぐりぐりと参考書を塗りつぶしていたレイも顔を上げた。
「カビたのね……」
「ああ……ほんとだ。カビだ」
「あんたらねぇ!」
 ビシッと指さす。
「なんでそんなに落ち着いてられんのよ!」
「だって……」
「驚くことじゃないわ」
「どこがよ!」
「……テレビの人が言ってた。日本は高温多湿だから、エアコンを使いすぎているとカビがわくって」
「き────っ! わかってんなら風くらい通しなさいよ!」
「……クーラーは人類の至宝。まさに至高の発明ね! とか、ぐーたら先生のようなことを言って、一日中入れっぱなしにしているのはあなたよ」
「う……しょうがないでしょ! 暑いもんは暑いのよ!」
 うきーっと暴れ始める。
「……なんて勝手な」
「それでどうしたいの?」
「掃除よ掃除! 掃除するのよ!」
 ビシッと指さす。
「部屋中掃除してカビ退治よ!」
(まあ勉強してるよりいいか……)
(ニンニクラーメンチャーシュー抜き……)
 違うことを考えている主従であった。

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