「んでシンジぃ……調子はどうなんや?」
シンジはぼんやりとした口調で答えた。
「そこそこかな」
「なんやそれは」
「ん〜〜〜よく考えてみたらさ、そんなに高校行きたいってわけでもないんだよね」
「はぁ?」
今更んなこと言い出すんかいと、トウジは目を丸くした。
教室ではなく屋上である。アスカに見つかるとうるさいので隠れているのだ。
昇降口の裏側に、ふたりでだらけて座っていた。
「そやけど……高校くらい行くやろ?」
「たぶんね」
「たぶんて……」
「ほら……僕っておじさんとかに邪険にされて、それでマンションで一人暮らしやってるじゃない? 高校行かなかったら、自分たちが変な目で見られるだろうってさ……」
「それがウザいんで、行っとこうってか?」
「うん」
そやなぁとトウジは空を見た。
青い空に白い雲がゆったりと流れていく。
「まあわしかてそないにピンとくるもんないしなぁ……」
「でも行くんでしょ?」
「ほかの奴らも行くしな」
「……って、そんな話をしたんだよ」
帰りがけに遠回りをして、シンジはレイの散歩がてらと川に来ていた。
土手に座り込んで、独り言のように愚痴をこぼす。
「だって、本当はさっさと自立したかったんだ……。自分でお金を稼いで、部屋代とかを出せるようになったら、もうおじさんとかに口出しされないですむかなって考えてたから……って聞いてる?」
横を向くとレイのお尻があった。というか、お尻を突き出すような格好で、レイは頭を下げていた。
「なにして……わぁ! だめだよ! なにしてんだよ!」
──フンフンフンフンフン!
懸命に人のした『糞』を嗅いでいるレイがいる。
「そんなもんに鼻を近づけ……あああああ! 砂かけた上に自分のしようとしなくていいから!」
「……なにやってんのよ?」
呆れた顔でレイを羽交い締めにしているシンジを見たのは、アスカであった。
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