じゅうじゅうとテーブルの上の七輪の上でお肉が焼ける。
「あ〜あ〜もうこれイケるじゃない」
「ごめん……」
身を乗り出すようにして箸でひっくり返し、せっせと世話するアスカに謝る。
テーブルの横ではマナが必死に両手で肉を押さえて真ん中を咬んで引っ張っていた。どうもなかなか切れないらしい。
その横ではレイが高みからつまんだ塩をぱらぱらと振り、続いてコショウを振っていた。
それから時間を計って肉になじむのを待ち、よく焼けているホットプレートに置く。
妙に丁寧に食そうとしていた。
「…………」
シンジは見なかったことにした。
「アスカ……」
「ん?」
ちょっとだけ……アスカが口の中の物を咀嚼し終わるのを待つ。
「……なんで急にお肉なの?」
「嫌い?」
「嫌いじゃないけど……」
首をひねって見せる。
「アスカだったらその辺のお店でも食べられるんでしょ? なんでいきなり三重県までって」
「ああ……ちょっとねぇ、副収入が入ったから思い切って」
「副収入?」
「うん。あっちの知り合いにね、いいのが見つかったからいらないかって引き取ってもらったの! 欲しがりそうな奴だったしね、あたしにはなん……………………………の価値もないもんだったんだけど、あんなののどこがいいんだか」
「はぁ……」
「これがけっこうなお金になってさ!」
「なに売ったの?」
「…………」
「アスカ?」
「やめましょ? ご飯まずくなるから」
シンジは気になったので、こそっとレイに訊ねてみた。
「知ってる?」
「ええ」
「え!? なんなの? 教えてよ!」
レイは奥の部屋……の向こうを見るような仕草をした。
「もうちょっとで……」
「え?」
「発酵したのに」
「発酵って……」
シンジはついこの間、掘り起こして確認していた『アレ』のことを思い出してしまった。
「う……」
それを醒めた目で見るアスカである。
「ばぁか……だから言ったのに」
「……ごめん」
アスカって……。
シンジはちょっとふるえてしまった。
(危ない取引とかやってるのかもしれない)
カヲル君はどこに売られてしまったんだろう? シンジはテーブルの下で、かたく拳を握り込んだ。
(綾波は……僕が守らなくっちゃ)
後にこの決意のことがばれてしまってハタかれた。
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