「禁止禁止禁止禁止禁止! ぜったいシンジのパンツは使用禁止! いいわね!?」
「でもわたしにはこれしかないもの」
「ってひっぱるなー! 左右にのばすなー!」
「……僕も恥ずかしいんだけど」
「碇君の匂いがする」
「かぐなー!」
「…………」
 もうだめだ、とのぼせるシンジ。
「アスカ……あとお願い」
「どこ行くのよ!」
「マナのとこ……子犬見てる」
「ふん!」
 レイに対して高圧的になる。
「きっちり再教育してやる必要がありそうね」
 にやりと笑って指さした。
「さっ、まずはスカートを脱ぐのよ!」
 レイはうなりながらも心の底では怖いのか? 耳を伏せてしまっていた。


 隣の部屋からどたどたという音が聞こえては来るものの、シンジはあえて無視することにした。
「どう? 調子は」
「元気だよー?」
 横になっているマナ。手には子犬を一匹乗せていた。
 背中をぺろぺろとなめている。
「大丈夫なの?」
「綺麗にしてあげないとねー」
「いや、マナが……」
「え?」
「毛玉、飲んじゃって」
「大丈夫大丈夫、ちゃんと頬にためてるから」
「そうなんだ……」
「うがい大変だけど」
「ふうん……」
 マナはなんだろうと首をかしげてシンジを見つめた。
「シンちゃん……優しい顔してる」
「え?」
「すっごく優しい顔になってる」
「そっかな……」
「うん、どうしたの?」
「わかんないよ……そんなの」
 でも、と続ける。
「もしかすると、いいなって、思ったのかもしれない」
「どうして?」
「覚えてないんだ……母さんのこと」
「…………」
「多分、頭とか撫でてもらったはずなのに、なんにも覚えてない」
「シンちゃん……」
「だから、よかったねって、思ったのかもしれない」
 マナは起きあがると、シンジの頬をぺろっと舐めた。
「マナ?」
 怪訝そうにするシンジの頭を、そっと胸に抱く。
「大丈夫、大丈夫」
「…………」
「ママですよー……。ママはここにいますからねー」
「うん……」
 シンジはマナの体に腕を回して抱きついた。
「ありがとう……」
「うん」
「牛乳の匂いがする」
「赤ちゃんの?」
「ううん……お母さんの匂いだ」
「ってちょっとこらー!?」
 アスカである。
「人が四苦八苦やってるときになにやってんのよ!?」
「ご、ごめ!?」
 ──ブゥ!
 シンジは再び鼻血を吹いた。
 そしてマナはきょとんとした。
「なにやってるの?」
 レイの下半身が素っ裸に近い。
「この人が、これしかないっていうから」
 と、股間の布に手を当てる。
「ちっがーう! あんたが尻尾が出せないとかマーキングできなくなるとか色々言うから!」
「……それで前と後ろに穴開けたの?」
「う……」
「でもそれって」
 ただのエッチな下着なんじゃ。
 肝心の部分が隠れていない。
 今度は鼻血だけでは済みはしなかったシンジであった。

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