──そんなこんなで。
「あーあーもぉ、この間掃除したばっかだっつーのに」
ぞうきんで水を吸い取りバケツに絞る。
「ぷ」
「なぁによぉ」
「掃除婦のおばあさんって感じがする」
「なんですってぇ!?」
「あなた、きっとお掃除おばさんが似合うわね」
天職? からかうレイにムッキーなアスカ。
「……それより早く片づけようよぉ」
一人トホホなシンジである。
「ふんだ!」
さすがにシンジの言葉には弱いのか、アスカはレイを無視することに決めたようだ。しかし……。
「でも家電製品が少なくて助かったんじゃない?」
「そっかな……」
「テレビとかやられてたら痛かったでしょうしね」
「そうだね……」
「っていうか……」
アスカは部屋の角に立って部屋を眺めた。
「なんか殺風景よね、この部屋」
「一人だったからね。そんなに物いらなかったし……」
「もうちょっと大型のテレビでもよかったんじゃない?」
「高いよ……それは」
「でも今はみんなで見てるんだから、やっぱり大きくしても良いじゃない」
「お金は?」
「出そうか?」
「だからそういうの嫌なんだって……」
ぶちぶちと口にするシンジにアスカははぁっと嘆息する。
「なんで……あんたってそう、他人行儀なんだかね」
「なんだよぉ……」
「同棲ってぇか、一緒に暮らしてるも同然なんだから、気にすることないのに」
「気にするよ……それならまだアスカの部屋で見る方がいいよ」
「へ? そ、そう?」
「うん。アスカのテレビおっきいしね」
「そうね! 一個あれば十分よね!」
一台じゃないかなぁと思うシンジである。
(外国暮らしの影響かな?)
アスカが赤くなっていることには気がつかない。
「じゃ、電気屋には行かないのね」
「うわっ! 綾波……」
ちっと舌打ちして去っていく。
「なんなの? あいつ……」
「たぶん……この間対決してたやつだと思う」
「対決?」
「この間蛍光灯買いに行った時……デジカメとセットしてあるテレビがあってさ……」
──電気屋。
(なにしてるんだろう?)
店頭ディスプレイのカメラを覗いているレイが居る。
その隣にはテレビがあって、当然のごとくレイの顔が映っている……と。
(あ)
フッ! レイがテレビの前へとステップする。しかしそこにレイの顔はない。
そーっとレンズの前に戻って自分を映す。そしてまた横ステップ!
(自分とにらめっこしたいのか……)
「ってことがあったんだ」
アスカは力尽きたようにがっくりとした。
「馬鹿犬……」
「可愛いトコあるなって思ったんだけどな」
だめかな? ちょっと考えてしまったシンジであった。
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