「ただいま……」
「おかえり!」
ミニスカートのアスカが、頭に三角巾を巻き、エプロンをして、働いていた。
「もうすぐご飯だからね!」
「う……うん」
ビシッとおたまで突き指されてどもってしまう。
「ありがと……」
「へ?」
「え? なに……」
「う、ううん……なんでもないから……」
ほらさっさと鞄片づけてくる! アスカはそうやって急かし、ごまかした。
(やっぱり変よ、シンジ……)
ありがとう? なにか引っかかる。礼? ごめんじゃなくて、ありがとう?
部屋に押し込んでから、くるりと振り向いて、アスカはレイを睨みつけた。
「あんた……」
「…………?」
「シンジからなにか聞いた?」
こくりと頷くレイである。
「なにを聞いたの?」
「……あなたに、さよならを言われるかもしれないって」
「……え? って、ちょちょちょちょちょ、ちょっと待ってよ、なによそれ!?」
「知らない」
「知らないって! どういうことよ!」
「だから、そう聞いただけだから」
「わけわかんないわよ! なんなのよっ!」
──ぴんぽーん。
インターホンが、不吉に鳴った。
ドアを開ける。そこに居る人物に目を丸くする。
「ア──」
スカと、彼女は名前を呼ばせなかった。
──パン!
──バン!
最初のは頬を叩く音。
続いてはドアを閉める音。
アスカはそこに知り合い──伊吹マヤを見つけて、事情のすべてを察したのだ。
「アスカ! アスカ!」
ドンドンと戸が叩かれる。
「アスカ! 話を聞いてちょうだい!」
「嫌よ!」
アスカはドアにもたれかかり、言い返した。
「あたしはもう関係のない人間なのよ!」
「誰もあなたの引退なんて認めてないわ!」
「なんで認めてもらわなくちゃいけないのよ! あたしは契約なんてしてない!」
「それじゃあもう通じないところまで来てるのよ!」
「あんたたちが勝手に!」
「まあまあ」
アスカはかくーんと顎を落とした。
「そんなところで言い争うなんて、近所迷惑というものじゃないのかい?」
「な、な、な……」
なぜだか上半身裸で、さっぱりとしたシャワー上がりの渚カヲル。
「なんであんたがここに居るのよ!」
「それはほら」
ドアが開く。パシャリとフラッシュ。
「あ!」
カメラを手に、にやっとマヤ。
「……話し、聞いてくれるでしょ?」
アスカは悔しげに歯がみした。
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