「まったくもう」
 しゃりしゃりとリンゴを剥く。
「あんたがああいうこというと、シャレになんないんだからやめなさいよね」
「ごめん、悪かったよ……」
「あんたも余計なこと吹き込むんじゃないの! わかった?」
「ごめんなさい……でも碇君も、そういう冗談が言えるようになればいいと思ったの」
「う……それはそうだけど! でもいきなりじゃわっかんないでしょうが!」
「そうね」
「本気かどうかわっかんないようなところからじゃなくてぇ! もっと順を追って明るくなって行けばいいのよ!」
「たとえば?」
「そうねぇ……あたしの冗談に付き合えるようになるとか!」
「どんな?」
「あたしが子供は何人欲しいって聞くとぉ、3人って応えるとかぁ」
「それから?」
「じゃあ今からさっそく子作りね! って抱きついたらぁ、もちろんだよって押し倒してくれるとかぁ」
「……それ、冗談になってないわ」
「しゃれっ気があるってのはそういうもんよ!」
「そう……でもだめ。あなたにはまだ社会的制約というものがあるもの」
「う……難しい言葉で来たわね?」
「社会の規則というモノがある以上、あなたに許されているのはここまでよ」
「んじゃあ、だったらどうだってのよ!」
「わたしには関係ないもの」
「ずっるー! あんたヤる気ね!?」
(けだもの)だもの」
 ──にやり。
「ふっ、じゃああんたにはふさわしい別荘を用意してあげるわ!」
 ──ニヤリ返し。
 びびるレイ。
「……別荘ってなに?」
「そう……別荘。やっぱ野獣には鉄格子よね!」
「そう……わたし、檻の中に入れられるのね」
「……それってニュアンス違うと思うよ?」
 ようやく会話に割り込むことができたシンジであった。

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