「今日はレンタルビデオ店を制覇するのよ!」
 シンジは思った。
(どうしてこの人はいつもいつもこう唐突なんだろう?)
「はぁ……」
「なによぉ?」
「なんでもないよ」
「そのウザイなぁって目がむかつくのよね!」
 そう言うわけで頬を引っ張る。
「痛いってば!」
「ふん! そういうわけだからビデオ屋にGO! よ」
「だからなんでさ……」
「あたし会員証持ってないんだもん」
「…………」
 やたらと疲れたシンジであった。


 ──そういうわけで。
「まあいいんだけどさ……、借りたいのあったし」
 さっそく中へと入り込む。
「ええっとぉ……、洗濯犬とたわし好きは」
「その微妙に音のゴロだけ追いかけたら元がわかるようなのやめてくんない?」
「じゃあ河面の果てのタニシか」
「だからやめなさいっての」
「ん〜〜〜と他には……」
 シンジの目が怪しいコーナーの箱を捉える。
「シンジ……」
「え? なに……」
「一応いっとくけど! そっちのコーナーは十八歳未満は決して立ち入っちゃなんない領域になってるからね? まああたしも後学のためには興味があるからぁ、どうせならネットであっちの知り合いから無修正で」
「それ、犯罪……」
「見たいの!? 見たくないの!?」
「じゃなくてぇ!」
 どうしていじめられなきゃいけないんだろうと真剣に悩む。
「ほ、ほら、これ!」
 博士と助手のパッケージを指す。
「赤木さんのことを思い出しちゃって」
「はん?」
「赤木さんと父さんって、どういう関係なんだろうって」
「愛人?」
「そんなはっきりと……」
「まあおじさまもなんつったっけ? 一人カモメ? だし、良いんじゃないのぉ?」
「別に悪いとは言ってないよ……ちなみにカモメじゃなくてやもめだよ」
「じゃあなんで今更気にしてんのよ? んでやもめってなに?」
「どういう人なのかなぁっておもって。やもめってのは独身だってことだよ」
「ふうん」
 最後はひとまとめにして納得するアスカである。
「そういやさ、マヤのことでちょっと調べてみたんだけど、あの人って結構な有名人みたいよ?」
「そうなんだ……」
「赤木リツコって言えば、その筋じゃ知らない人はない天才だって」
「なんでそんな人が父さんと……」
「さあ? まあレイとかマナみたいな研究やってた人たちだし、普通じゃないのかもね」

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