あんなこっといいな、でっきたっらいいな?

「この愛妻お弁当で、シンジ様のハートをゲットでちゃー!ですぅ!!」
「…でもうちの学校って給食なのよねぇ」
 カラカラカランと転がるお箸。
 あまりにも脆く崩れ去るミズホの野望であった。



「へくち!」
 朝起きて、アスカは真っ先にくしゃみをしていた。
「う〜、昨日は酷い目にあったわねぇ…」
 あの後シンジは逃げ出し、当然のように置き去りにされたアスカは、下校時間を遥かに過ぎて用務員さんに発見されるまで、気を失ったまま放置されていたのであった。
「まさかこのあたしを置き去りにするなんて、ホントもう信じらんない!」
 ブシッとティッシュに鼻をかむ。
「あ〜、こりゃダメだわ」
 アスカは自分のおでこに手を当てると、そのままごろんとねっ転がった。
「姉さん?」
 カチャリとドアが開き、レイが顔を見せる。
「起きて、時間よ?」
 もう既に着替えている、レイはいつもアスカが来るまで、朝食を取るのを待っていた。
「う〜ん、ごめん、風邪引いちゃったみたいなのよ…、悪いけど先生にはそう言っといて?」
 疑いもしない。
 レイは「うん…、わかった」と小さく頷き、出て行こうとした。
「あ、待って」
 だがそのレイを呼び止める。
「あのね、それから…」
 アスカはニヤリと、よからぬ事を企んでいた。



てけてけん♪
渚カヲルと碇シンジ...の巻

ふぁ〜んふぁ〜んふぁ〜〜ん…




「風邪ぇ!?、あのアスカが?」
 シンジは驚き、次いで考え込むように沈み込んだ。
「まさに鬼の霍乱ですねぇ、あれ?、どうしたんですかぁ?、シンジ様ぁ…」
 シンジは顔を上げると、「僕のせいだ」と呟いた。
「は?」
「僕がいけないんだ…、気を失ってるアスカを放って逃げ出したりしたから…」
 僕がいけないんだと、シンジは本気で落ち込んでいた。
 そこへひょいっと、何かのメモが差し出される。
「え?」
「姉さんから、渡せって碇君に…」
 シンジは振るえる手でそれを受け取り、ゆっくりと開いて目を通した。

シンジ江
 今日、学校が終わったら即行でお見舞いに来ること! 

追伸
 お土産忘れたら殺すわよ?

アスカ


「…なんだ、元気そうじゃないか」
「……」
「なに?」
 もの言いたげなレイに尋ねる。
「…姉さん、布団から出てこなかったの」
「ふ〜ん…」
「朝食も食べなかったわ」
「え!?」
 そんな…
 真っ青になる。
 あのアスカがご飯抜きだなんて…
 よっぽどのことに違いあるまいと、シンジは骨と皮だけになったアスカを想像してしまっていた。
「…わかった」
 頷くシンジ。
「今日一度、家に帰ってから行くよ!」
 きっと心配かけまいと無理をして…
 レイはそんなシンジに、うちに来るのね?、と、ニヤリと隠れて微笑んで(?)いた。


「どらエヴァ〜ン!」
 家に帰るなり、シンジは靴を脱ぎ捨て自室に飛び込み居候を探した。
 どらエヴァンは部屋の真ん中で座禅を組み、謎の瞑想をしていた。
「…充電中と言って欲しいな」
「知ってるよ…、誰に話してるのさ、どらエヴァン?」
 首を傾げるシンジ。
「なんでもない、電波を受信しただけだ…、それよりなんだ?、用があるなら早くしろ」
「うん…」
 シンジは真面目な顔をして座り込んだ。
「あのね?、アスカが風邪を引いたらしいんだ」
「ほう?」
 心底、意外だと驚く。
「あのアスカ君が…、なんとかは引かぬものだと思っていたが」
「なんとかって?」
「子供は風の子だと言うだろう?」
 ああ!っと、ぽんと手を打ち納得する。
「それで、なんだ?」
「あ、うん、それでね?、お見舞いに持ってく花って、何が良いのか知らない?」
 どらエヴァンはくいっと眼鏡を持ち上げた。
「葛城先生はどうした?」
「ミサト先生?、ダメだよ、お酒飲んで二日酔いで…」
 う〜ん…
 畳の上に敷かれた布団が、こんもりと盛り上がっている。
 中に潜り込んでいる女性の苦悶の声が、その中から漏れ出していた。
「そうか、…お見舞いならまず菊だな?」
「菊?」
「ああ、または椿の花だ」
「椿?」
「花は今しも落ちそうな物が良い」
「どうしてさ?」
 シンジの不思議そうな顔にニヤリと笑む。
「花が病人の前でボタリと落ちると、それは病魔が落ちたとみなされて、喜ばれるものなのだ」
「そっかぁ!」
 シンジは明るく立ち上がった。
「それからこれも持って行け」
 どらエヴァンは薬ビンを一つ懐から取り出した。
「なに、これ?」
「未来の薬だ、たいていの病気はたちどころに治る」
 シンジの顔に、ぱあっと明るいものが広がった。
「ありがとう!、これでアスカに喜んでもらえるよ!」
 シンジは帰って来た時と同様に、どたどたと慌てて出ていった。


 はっはっはっはっは…
 教えてもらった通りに、椿と菊の花をセットにした花束を胸に抱いて走っていた。
「おっとと、椿の花が落ちないように気をつけないとね?、ちゃんとアスカに渡してからでないと困るんだから…」
(縁起が悪いので、ほんとは送っちゃいけません)
 知らず死刑台への階段を踏みしめているシンジである。
「それにしても、いつ来ても長い壁だなぁ…」
 惣流家の邸宅は庭も含めて不自然な程に大きかった。
 それを囲うレンガ造りの壁は、本当にここが市内であるのかと疑わしくなってしまうほどに延々と続いている。
「ほんと、裏口でも作って欲しいぐらいだよ、まったく…、あれ?」
 シンジはその壁に誰かがもたれているのを見つけた。
「あれは…、そんな」
 焦るように左右を見回す、だが助けを求めるべきどらエヴァンの姿はここにはなかった。
 どうしよう、どうしよう、どうしよう!
 焦るシンジ、だがその間にも、彼はシンジに向かって歩いて来ていた。
「碇、シンジ君だね?」
 そして立ち止まる、真正面で。
 青タイツの彼は、シンジにニコッと微笑んだ。
「君は…」
「カヲル、渚カヲル…、どらエヴァンを捉えるために送られた者、タイムパトロールだよ」
「タイム、パトロール…」
 シンジの顔から、どんどん血の気が引いていく。
「君は知っているんだろう?、君達のしようとしていることが、本当は倫理に反していると言うことを…」
「……」
 この間過去に飛んだ時、どらエヴァンが言っていたことを思い出していた。
 時空間の狭間に永久追放される…、ならまだ良いだろう。
 首謀者は僕だったんだ…
 シンジは、「やだな…、捕まっちゃうのか」と、花束を落としそうになっていた。
 そんなシンジを教え諭すカヲル。
「君達の目指す未来は、確かに夢と希望が現実化した世界かもしれない…、けれどそれに巻き込まれた人達のことは考えてみたことがあるのかい?」
 自分が罰せられて終わりだと思っていたシンジは、その話しに動揺した。
「なにを…、何を言っているんだよ、渚さん…」
「カヲルでいいよ、シンジ君?」
 その笑みに、余計な不安を募らせてしまう。
「僕はただ…、この先辛いことばかりなのは嫌だから…」
「だから巻き込むのかい?、人の幸せな未来を破壊してまで…」
 カヲルの憂いを含んだ声に、シンジは「はっ!」っと気がついた。
「人の…、幸せな未来」
「そうだよ?、みんな自分の道を歩んで大人になっていくんだ、そしてそれぞれの幸せをつかむ」
「それぞれの…」
「碇…、くん?」
 話し合っている二人を怪訝に思ったのか、レイが少しばかり離れた所に立っていた。
「…綾波」
「何をしているの?、碇君…」
 不安げに、胸元で手を組み合わせている。
「そう、綾波レイ、彼女にも幸せな未来が待っている」
 カヲルはシンジを見据た。
「あるいはあったのかもしれない…、それを壊したのは君かもしれない」
 シンジはその赤い瞳に息を呑んだ。
「僕に…、僕にどうしろって言うんだよ、カヲル君…」
「身勝手な君の想いが、人の幸せの形を突き崩そうとしている…、君の求めているのは君一人が幸せになった未来なんだよ…、それでは皆が不幸になってしまう…」
「だから僕には妥協して、諦めていけって言うの?」
 シンジは何かを堪えていた。
「人は自分の力で道を進まなくてはならない、どらエヴァンが力を貸すことは、すなわちズルしているのと同じなんだよ」
 カヲルが一歩踏み出した。
「でも嫌なんだよ!、母さんが死んだり、父さんに捨てられたり…、あんなのもう嫌なんだ!」
「それでもズルはだめだよ…、君には、真実が必要だ」
 シンジは知らずに後ずさっていた。
「碇君?」
 いけない!
 シンジは焦った。
 すぐ後ろにはレイが居る。
 巻き込んじゃいけない、僕が悪いのなら、僕だけが裁かれなければいけない。
 シンジは下がるのをやめてカヲルを睨み返した。
「…その想い、感動に値するよ」
「感動?」
 カヲルは、AT(アダルトタッチ)フィールド・ヴァージョン2でシンジとレイを包み込んだ。
「絆ってことさ…」
 …まさに結界か。
 光に包まれ消えてしまったシンジとレイ。
 どらエヴァンはただ黙って、隠れて指を咥えているしか無かったのだった。


「…なんだここ?」
 シンジは金色の世界に立っていた。
 時折光が揺らめいている。
「波打ってる?、…水の中みたいだ」
 ん?っと、顔を上げる。
「誰?」
 背後に人の気配を感じる。
「誰?、そこにいるのは…」
 シンジは振り返った。
「うわ!」
 驚く、そこには青い髪、白い肌、赤い目をした年頃の女性が立っていた。
「あ、あの…」
 驚いたのはその格好にだった。
 自分の身長にも体形にもまるであってない、小さな子供用の服をピチピチにして着込んでいた。
 シンジはふと、その服に見覚えがあると気がついた。
「…まさか、綾波の制服?」
「碇…、くん?」
 初めて口を開いた。
「え!?」
 なぜ名前を知ってるの!?
 シンジは動揺した、それがシンジであると言う確認になったのか?、彼女は安心したように微笑んだ。
「あ、あの…、どちらさま…」
 その子は、すねたように口を尖らせた。
 冷たい目に息を呑む、だがシンジはその目の奥に何かを堪えているような、我慢しているような悲しさを見つけた。
「…まさか、綾波!?」
 驚くと、レイはコクンと頷いた。
「そんな…、綾波なにやってんだよ、そんな”メルモちゃん”みたいな格好で!」
 レイは「わたし、よくわからない」と首を傾げた。
 何故シンジがそんな事を知っているのかは謎のままになってしまうのだが…
「それよりどうしたのさ!?、急に大人になっちゃって…」
 レイはシンジを指差した。
「…僕?」
「碇君も…」
 はっとして、シンジは自分の体を見おろした。
「うわっ!」
 シャツは背中で脱皮し、ズボンはチャックが壊れ、お尻も破けていた。
「なんだよこれ、なんだよ!?」
「わからない…、けど」
 レイの目がいつもと違う。
「…綾波?」
「碇君、カッコイイ…」
 いつもは真っ白な頬が、今はピンク色になっていた。
「な、なに言い出すんだよ、綾波…」
 照れるシンジ。
 もじもじとしだす二人、その片方のレイの肩に、誰かが白い手をぽんと置いた。
「か、カヲル君!、一体どこから…」
 カヲルだ、やはりカヲルも大人になっていた。
 レイも顔だけ後ろへ向ける。
「細かいことは良いんだよ」
 今のこの状況と言い、どこも細かくないと思うシンジ。
「それより、さあ始めようか?、シンジ君…」
「え?、な、なにを…、何を始める気だよ、カヲル君…」
 カヲルは「ふ…」っと、からかうように笑った。
「営みだよ」
「いとなみ?」
 言葉の意味がわからないシンジ。
「そう、営み…、共に愛を育み、未来を分かち合うパートナーは、君自身が選び出さなければならないんだ…」
「えええええ!?」
 それって!?
 シンジはレイを見た。
 もじもじとしているレイ。
「彼女は選択肢の一つにすぎない…、けれどまずシンジ君には、異性を意識するためのきっかけが必要だ」
「きっかけって…」
 カヲルはレイを軽く押し出した。
 だがレイも戸惑っているのか、不安そうにシンジを見ているだけである。
「さあ、シンジ君…、君には思春期が必要だ…」
「そんなのまだ早過ぎるよ!」
 シンジは思わず叫んでいた。
「そんなことは無いさ」
「あるよ!」
「時計の針は戻すことはできない、けれども進めることはできる…、子供から脱皮する時が来たんだよ、羽ばたくためにね?」
 シンジには、その言葉の意味がわからなかった。
「君達の年頃なら、もうおかしくはないよ」
「そんなのまだ早過ぎるって言ってるだろ!」
 僕の気持ちを無視するんだ…
 父さんと同じように!
 そのことをわかってくれない苛立ちに、シンジの怒声は勢いを増した。
 コロン…
 もう一度怒鳴り声をあげようとした時、そのポケットから小さな瓶が転がり落ちた。
 パンパンに張っていたポケットから落ちた薬瓶に、カヲルの目が細くなる。
「…それは」
 ブシューー!
 その蓋の所から、何故か勢いよくガスが吹き出した。
「催淫ガス!、そうか、そう言うことか、どらエヴァン!」
 カヲルは口元を押さえたが遅かった。
「げほっ、ごほっ、げほ!、何だよこれ!、綾波!、カヲル君!」
 シンジの声を余所に、レイとカヲルはボーッと立ち尽くしていた。
「綾波?、綾波ぃ!」
 肩をつかんで、がくがくと揺する。
「いかり…くん?」
 その返事にはっとして、シンジは安堵の表情を浮かべた。
「…よかった、綾波、大丈夫なんだね?」
「…碇君」
 だがレイの耳には、シンジの声は届いていないようだった。
 レイは飛び込むように、シンジの胸に抱きついた。
「碇君…」
「あ、綾波ってば!」
 レイが体重を掛けたせいか、シンジは足をもつれさせた。
 ドサ…
 二人絡まるように倒れ込む。
「ど、どうしたんだよ、綾波!」
「いかり…、くん」
 聞いてない。
「綾波、お願いだから正気に戻ってよ!」
「あたしと一つになりましょう?」
 レイの瞳が怪しく濡れる。
「あ、綾波…、やめてよ、こんなの変だよ、綾波…、綾波ぃ!」
 シンジの視界が、レイの顔から、次第に唇へとせばまりだした。
 逃げなきゃダメだ、逃げなきゃダメだ、逃げなきゃダメだ!
 だが心に反して、体が動いてくれない。
 流されちゃ…、状況に流されてちゃくり返しになる、そんなのもうごめんだよ!
 シンジはカヲルに助けを求めようとした。
「カヲル君、お願いだからやめてよ、カヲル…くん!?
「シンジくぅん…」
 カヲルもレイと変わらない。
 いやレイ以上に過激になっていた。
 タイツを脱ぎ捨て素っ裸になり、妖しく爪を噛んでいる。
「ど、どうしちゃったのさ、カヲル君!」
 あまりの異常さに鳥肌が立つ。
「心が寒いんだよ…、さあ、君の熱いハートで暖めておくれ?」
 と言って、カヲルはレイを押しのけシンジの上に馬乗りになった。
「うわ、そんなの嫌だよ!」
「恐がることは無いさ…、人は誰しも最初の時がある、これはまさにファーストインプレッションなんだよ…」
 だがレイも負けてはいなかった。
「碇君…」
 カヲルを押しのけるように、またシンジの上に戻ろうとする。
「…独占するんだね、君は?」
 カヲルもまたくり返す。
「碇君…」
「シンジ君…」
「碇君…」
「シンジ君…」
 らちが明かないと見たのか?、二人は同時にシンジに迫った。
 うわあああああああ…
 シンジの頭の上に転がっていた花束から、椿の花がボトリと落ちた…


「あああああ…、あれ?」
 シンジは飛び起きるなり、キョトンとして辺りを見回した。
「…ここ、綾波の部屋じゃないか」
 正確には、レイのベッドの上だった。
「んん…」
 寝言に、自分の隣を見る。
「綾波?」
 いつものレイだった。
「…よかった、いつもの綾波だ」
 ほっとして、額の乱れた髪を払ってやる。
 …そう言えば、いつもアスカと寝てるっておじさんが。
 布団は確かに真新しいままだった。
 その上で、二人は抱き合うように眠ってしまっていたらしい。
「綾波…、ぐっすり眠っちゃってる」
 シンジは、あの大人のレイを思い出してドキッとした。
「え?」
 胸を押さえる。
 ドキドキドキ…
「なんだよこれ、なんだよ」
 自分で自分がわからない。
「この感じ…、なんだろう?」
「いかり…、くぅん…」
 寝言?
 シンジはレイのあどけない寝顔に見入った。
「…あれ?」
 ドキドキが治まっていく。
「…なんだろう?、でも嫌じゃない」
 シンジは柔らかな笑みを浮かべた。
「苦しいけど、嫌じゃない…、僕はこうしていても良いのかもしれない」
 レイの小さな手が、シンジの手をつかんでいる。
 シンジはその手を握り返した。
「僕がこうしててあげても、いいのかもしれない」
 僕を頼ってくれて…
「ありがとう、綾波…」
 シンジは勝手にほんわかし始めた。
 だがちっともほんわかしてない少女が近づいているとは、さすがに気がついていなかった。
 コンコンコンっとノックの音。
「レイ〜、帰ってるんでしょ〜?、ちょっと入るわよぉ?」
 あ、アスカ!?
 シンジは自分の立場を思い出した。
「ま、まずいよ、こんなとこ見つかったら…」
 慌ててベッドから降りようとする。
「ぐいって、え?」
 レイの手が離れなかった。
「まずい!、綾波、早く起きてよ、綾波!」
「ん…」
 だがレイは眠ぼけたのか?、そのままさらにシンジの手を抱き込んだ。
「うわわわわ!」
 ガチャ!っと開く扉。
「レイ?、あんたちゃんとシンジに手紙渡したの?」
 凍り付く空気。
 ぎゃああああああああ…
 その日、惣流邱の近隣約1キロに渡って聞こえた謎の悲鳴は、犬猫でさえも脅えて隠れてしまうほどのものであったと言う…


終わり



 あんあんあん、とっても大好き、シンジ君♪

「まさか綾波レイを暴走させてまで、ATフィールドを解除せざるをえない状況にまで持ち込むとは…」
 金に染めた髪、泣きぼくろに白衣の女性が、渚カヲルの生首を前にため息をついていた。
「体は大人でも、心は子供…、あれ以上は倫理的に問題があるわ?、こちらが公的機関だと言う弱みをついた、見事な策…」
 彼女は、冷めたコーヒーに口をつけた。
「…これもシナリオの内と言うわけね?、どらエヴァン」
 そして彼女は、またもカヲルのボディを再生するために、工場に灯をともすのであった。
「シンジくぅん☆」
 バグを発生させたカヲルを再フォーマットするついでに…

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