カキィン!
甲高い音を立てて、加粒子砲の光は弾かれた。
突如現れたのは、正八角形の黄金の壁。
「ATフィールド!?」
リツコはそれに見入ってしまった。
視認できるほどはっきりと現れた力の象徴。
ゆっくりと起き上がるエヴァ・マスター。
盾がエヴァの装甲を補修するかの様にとろけ、融合した。
「レイが、まさか!」
装甲が再成、復元されていく。
「そんな!、あり得ない!?、ATフィールドがある限り」
「エヴァには接触できないわ!」
突然の声に振り返る。
「誰!?」
護衛するサキエルをなぎ倒し、ミサトはリツコに銃口を向けた。
「ミサト!?」
「お久しぶりね、リツコ…」
「どうして、あなたがここに!」
「決まってるじゃない?」
銃を下げる。
「あたしは近衛隊長だもの」
ミサトは笑顔でウィンクした。
その頃、ゲンドウは自宅の居間でほくそ笑んでいた。
周辺のカメラは全て磁場の影響を受けて壊れている。
今は望遠カメラからの映像が全てだった。
「シンジ、今だ!」
ゲンドウは通信機に向かって叫んだ。
シンジは顔を上げた。
コアが最後の光を放つ。
(後、10秒!)
シンジは修復を諦めて、その力を跳躍に注ぎ込んだ。
まさか!
リツコは我が目を疑った。
エヴァの跳躍が地上1キロにも達したからだ。
直下に見えるラミエル。
(武器は!?)
シンジの脳裏に様々な情報が流れていく。
その中でももっとも力の消費が少なくてすむ物をシンジは選び出した。
(プログ、ナイフ!)
肩の収納口からナイフが飛びだす。
(うあああああああああ!)
それをつかんで、直上からぶつかるように突貫した。
ズガァン!
真上からの衝撃にラミエルは地に落ちた、あまりの衝撃に一瞬形が歪む。
(このぉ!)
シンジはナイフを突き立て、一気に引き裂いた。
まるで穴の開いた風船のように、ラミエルは張りを無くして形を崩す。
(碇君、避けて!)
レイがシンジの捨てたライフルを構えていた。
ラミエルを蹴って離れるシンジ。
それを待たずにポジトロンスナイパーライフルが火を吹いた。
シンジが使った時の2倍近いエネルギーでラミエルの中心部を貫通する。
ゴウ!
その熱量に火を吹き上げ、ラミエルはとうとう沈黙した。
(碇君!)
シンジからの反応はない。
背中から倒れこむシンジ、大の字になったエヴァが、段々とその形を崩しだした。
シンジはまたも気を失っていた。
エヴァンゲリオンからエヴァテクターへと姿が戻る。
レイはエヴァを解き放つと、慌ててシンジへと駆け寄った。
「碇君!」
手をかざしてエヴァテクターを強制解除する。
「碇君!?」
抱きよせる、シンジの顔は真っ青だった。
「ごめん…、ごめんよ綾波…」
うわごとのようにくり返している。
「碇君…」
レイはシンジを強く抱きしめた。
だがシンジは意識を取り戻さず、ただ苦しみを交えてその言葉をくり返しているだけだった。
続く
[BACK][TOP][NEXT]