L.A.S.LAST BREAK 3
ありがとう、ありがとう、ありがとう。
おめでとう。
誰もが同じ寂しさを持っていた。
あたしを見てよ、ママ!
愛してちょうだい、あなた……
二人は同じ悩みを持っていた。
お願いだから、僕を見てよ……
情けない顔をした少年がいた。
わたしを見て……
表情のない女がいた。
みんな持っている悲しみは同じだった。
でも、こいつは違う……
シンジは体を丸めるように、部屋の隅に座っている。
その頭をアスカが撫で付ける度に、シンジはビクッと反応していた。
恐れている、けど、噛付くだけの勇気もない。
サードインパクトの後、チルドレンはもてはやされた。
どうして?
シンジには分からなかった。
取り囲むような人達。
横を向くと、同じように人の輪の中にいるアスカが居た。
笑ってるの?
ありがとう、ありがとう!
人の感謝の言葉に、照れたように頭をかいている。
みなアスカとの握手を求め、アスカも嫌がりはしなかった。
綾波?
レイもまた同じだった。
違いは握手ではないと言う事だった。
包容。
みなレイを抱きしめ、抱かれる事を望んだ。
レイの体にしがみつき、レイは一度だけ体に腕を回してやる。
一様にはっと驚き、そしてレイの表情に穏やかな母の姿を見ると、彼ら彼女らは言葉を無くして、年齢に関係無くただ泣き崩れてしまっていた。
アスカも……、綾波も幸せになれたんだね?
シンジの顔には辛そうな物が宿っている。
だからみな怪訝そうに、シンジに向かって戸惑っていた。
ありがとう。
おめでとう?
なにがそんなに嬉しいの?
みんな死んでしまった……
僕のことを好きって言ってくれる人達は……
みんな死んでしまった。
あるいは行ってしまった。
ぞく!
その瞬間、シンジは悪寒に襲われた。
「……やだ」
恐い、恐い、寂しい?
「嫌だ……」
シンジは必死に誰かの姿を探しだした。
母でも姉でも、その真似事をしてくれる人でも良かった。
「やだよぉ……」
泣き始める、動揺が周囲に広がっていく。
「母さん……、ミサトさん……」
庇護してくれる人が欲しかった。
「誰か僕に、優しくしてよ……」
しかし誰も彼もが、みな「何故泣いている?」と言う顔しかしていない。
アスカも、レイですらもわからない。
みな幸せだった。
分かり合えたあとの穏やかさに心を弾ませていた。
でもシンジだけが忘れてはいけない人達のことを覚えていた。
「シンジ?」
アスカの問いかけが、シンジの心を現実に引き戻した。
「うわああああああああ!」
シンジは弾けるようにアスカから飛びすさった。
「シンジ!?」
突き飛ばされた事よりも、シンジの脅え方の方が大事だった。
傷ついた人の心は、本当に傷ついた事のある人にしか分からない。
そんな言葉があったわね?
アスカには考えていた時期があった。
誰もあたしの気持ちなんてわかっちゃくれないのよ!
それもまた、みなが同じように感じる事柄だった。
あたしもシンジの気持ちは分からないわ。
でも、多少は感じることができる、少しだけ理解できる。
何に脅えてるのかも分かるんだもの……
シンジは逃げ回る。
それでも追いかけて来るアスカに、一度足りともものを投げ付けたりはしない。
先程のように不意を突かれなければ、シンジの力でアスカを拒絶する事などできなかった。
それほどまでに、シンジの体には力が入らないようになっていた。
恐怖の為の弛緩……
その対象があたしなのね……
ほんの少し、悲しくもある……
だけどアスカは、シンジが逆らえないのをいい事に、両腕を取って壁に張り付けにした。
!?
シンジの目が驚きに見開かれる。
アスカの口付け。
押し付けられるような唇。
しかし驚きはそんな事に対して向けられた物では無かった。
涙?
アスカの閉じられた瞼の端から、溢れるように流れ出ていた。
涙……
アスカの唇が離れていく。
しかしシンジの唇は、同じようにわずかに開いた状態のままだ。
「わからなかったのよ……」
アスカはそんなシンジと頬を合わせた。
「あんたが、どうして泣きそうな顔をしてたのか……」
あの時。
みなが幸せに浸っていた時。
シンジだけが辛そうにしていた。
「でも……」
アスカはためらった。
「でも」
口にする。
「あんたがいなくなって、わかったわ……」
アスカはシンジの耳に囁いた。
「はじめはあたしも嬉しかった、あたしに絶対の価値ができたから、それはあんたも同じ、チルドレンの称号はあたしの望んでいた物だったから……」
シンジは呼吸さえもとめていた。
「なのに嬉しくないの?、そう思ってた、これでみんなに見てもらえる、優しくしてもらえるって思ったから……」
アスカの体が密着している。
いやに落ちついてた鼓動がシンジに向かって伝わって来る。
「でも、違ったのね……」
それがシンジをかき乱す。
「あんただけは変わらなかった……」
見せ掛けの喜びでも、誰からでも良いという、安易な優しさでは無くて……
「忘れちゃいけなかったのよね……」
その言葉が、シンジに誰かを思い起こさせた。
忘れてはいけないものがある。
全ては心の中に在る。
「僕は……、いらない子供なんだ」
アスカはドキッとした。
シンジがようやくまともに喋ったからだ。
「シンジ……」
「今は、もう必要のない存在なんだ……」
アスカはキュッと唇を咬んだ。
「そんなこと……、ないわよ」
シンジは押さえつけられていた腕を戻そうとした。
アスカはそれを許しはしたが、解放はしなかった。
「どうしてなのよ?、みんな幸せで、みんな明るくて、楽しそうで……」
「だから僕に苛付くんだ」
シンジはすっと目を伏せた。
暗いから。
居て欲しくないから。
昔の心のざわめきを思い起こさせるから。
「アスカだってそうだ……」
アスカは表情を作ろうとして失敗した。
「気持ち悪いって、言った」
ドキリと鼓動が跳ね上がり、アスカの顔が真っ青なものに変わってしまった。
言い返せない……
アスカの心に暗い影が落ち始める。
「ほら……」
シンジの傷ついたような目が痛い。
「アスカもだ……」
みんなと同じ。
シンジはそう語っていた。
嫌な気分にさせないでよ……
シンジはそう読み取っていた。
「あたしは……」
確かに後悔を感じていた。
だって……
シンジの報告書を見たのは偶然だった。
「なによこれ!」
アスカはマヤに食って掛かった。
その背後では、レイも批難するような目を向けている。
「見ちゃったの?」
「見たわよ!、こんなの……、こんな酷いの!」
いじめにあうシンジの姿が、隠しカメラや望遠レンズによって捉えられていた。
レポートには会話の内容までまとめられている。
「許せない!」
アスカはそのレポートを踏み破いた。
てっきり明るく過ごしているものと思っていたのだ。
「でも、それがシンジ君の望んだ生活なの……」
マヤにはそう口にする事しかできなかった。
だって、アスカとレイから逃げだしただなんて……
マヤから口にすることはできない。
少なくとも、目の前に居る二人は傷ついてしまうだろうから。
「あたしが行ってくる!」
「だめよ!」
「なんでよ!」
「なんでって……」
マヤは言いよどんでしまった。
アスカの頭の中には、喜んでくれるシンジの姿しか存在しない。
ありがとう、アスカ……
そう感謝して、アスカにはにかむシンジの姿。
でも、甘かった……
気楽な部分は確かにあった。
楽観的だったとも言える、しかしそれはアスカだけでは無くて、世界そのものがその様な雰囲気に包まれていた。
その中にあって……
こいつだけが、はっきりとした現実だけを見て生きている……
だからアスカには言い返せない。
あたしも、夢を見ていたいから……
夢から覚めちゃいけないの?
だって、現実は辛いもの……
弐号機の中で母親の姿を見てはいても、それはあくまで幻想にすぎない……
本当のあたしのママは……
『アスカ』とともに逝ってしまった。
人形と一緒に死んじゃったのよ……
ギュッと咬んだ唇の端から、赤い筋が伸び出した。
……?
不意に現われた、肩口の濡れた感覚に驚くシンジ。
血?
アスカは唇を噛み切っていた。
怒ってるの?、当たり前か……
嫌われる事には慣れている。
よかった……
シンジは心底そう思った。
心を閉ざしてて、よかった……
少しでも希望を持っていたのなら、きっとこの瞬間のこの姿に、シンジはまた苦しんでいただろうから。
よかった……
シンジはそう思い込んでいた。
しかし真実は違っていた。
現実から逃げて……、現実を忘れて、代価品にすがる……
アスカは補完の真実に思い至っていた。
それでいいの?
それでいいの。
心の中で誰かが言う。
だって幸せなんでしょう?
それは誘惑に近かった。
しかしアスカはシンジの冷めた温もりを感じていた。
これが現実なのよ……
すがって来る人達の相手をして、強さを手に入れたようなつもりになっていても……
これが現実なのよね……
実際には、苦しんでいるひと一人を救う事さえできないでいる無力な自分がいた。
エヴァのパイロットだったあたし、チルドレンと呼ばれるあたし……
だが、形容詞の付かない『アスカ』を見てくれている人は居ない。
「シンジぃ……」
アスカは切なそうな声を出した。
シンジは無感動に受け止める。
「アスカは……、可哀想な僕が気になるんだよね?」
頷く……ことしかできない。
「じゃあ……、アスカは僕のお母さんになってくれるの?」
すっと離れ、シンジの目を見るアスカ。
「ママ?」
「うん……」
シンジはそのアスカの胸元に顔を埋めた。
「だって、誰も誉めてくれないんだ……」
よくやったな……、シンジ。
シンジの耳の中には、今もその言葉がこびりついている。
「どんなに頑張っても、喜んでもらえないんだ、頭を撫でてもらえないんだよ……」
アスカの中のシンジは、まるで小さな子供になっていた。
今だからこそシンジの中で、ゲンドウの言葉は一層大きく心を締めてしまっている。
「アスカは……、喜んでくれるの?」
アスカは身につまされた。
ここに居てもいいの?
怒ってくれるの?
泣いてくれるの?
微笑んでくれるの?
笑ってくれるの?
認めてくれるの?
僕の存在を……
シンジは声にせずに尋ねていた。
あたしは……
シンジでなくても、良い?
その疑念が沸き起こる。
こいつがシンジでなくても、同じことができるの?、あたしに……
シンジが求めているのは、かつてアスカが求めていた存在。
ママ。
シンジの黒い瞳が答えを待っている。
慈しんでくれるの?
愛してくれるの?
側に居てくれる?
傷つけないでくれる?
無理だよね、そんなの……
シンジの瞳がそれていった。
アスカから逃げるようにそらされた。
ぽろっと、アスカの頬から涙がこぼれ落ちる。
言えない!
言える分けない……
絶対だなんて言えない。
自分が経験した感情だけに、シンジにいい加減な事は言えないと分かってしまう。
「ごめん、ごめんね、シンジぃ……」
アスカはシンジの頭を抱きしめた。
シンジは為されるがままにしている。
「あたし……、あたしママにはなれないよぉ……」
失敗する事が恐くなった。
間違いを犯す事が恐かった。
「あたしママみたいになっちゃう……」
アスカではなく、『アスカ』を代用した母。
「あたし、シンジにそんな事できないよ……」
抱く腕に力がこもる。
「アスカ?」
シンジはようやくアスカを受け入れた。
「どうして謝るの?」
ほんの少しだけ扉の中から顔を出す。
「恐いの……」
「アスカが恐がるような事、何もないじゃないか……」
アスカはプルプルと首を振った。
その振動に、シンジは豊かな胸の柔らかさに居心地の良さを感じてしまう。
「シンジを見捨てたらダメ……」
それは父と変わらないから。
「パパと同じになっちゃうの……」
首吊りを待っていたような父親と。
「でもだめなの……」
このままでは……
「あたしはママのようになりたくないからって、優しい振りをしてる……」
本当は違うのかもしれない。
「だからダメなの……」
罪の意識から逃れる為に、代わりを用意したアスカの母親。
「今度はママと同じになっちゃうの……」
女の子のぬいぐるみはすなわちシンジだ。
だからダメ。
「なら、ちょうどいいじゃないか……」
シンジは再びアスカから逃れた。
「僕のことなんて忘れてよ」
「!?」
アスカの傷ついた様子も気にとめない。
「僕が居なければうまくいくんでしょ?、ならそれで良いんだ、それが一番いいことなんだよ、きっと……」
アスカの手を払い、シンジは力なく膝を折った。
座り込む。
シンジは両の手を瞼に当てた。
うっく、ぐす、ひっく……
しゃくりあげる声が漏れ出す。
僕が居なければ……
自分で言った言葉に傷ついていた。
僕が居なければ……
全ては丸く収まる。
本当の平和な世の中が来る。
シンジだけが、その調和を乱す存在だった。
「僕だって分かってるんだ!」
言葉が足りない、ただアスカはその叫びにびくっと脅えた。
「わかってるんだ、許してもらえないって、邪魔者扱いされてるって、わかってるんだ!」
「シンジ……」
それでもアスカは心配する。
次に来る言葉が予想できたから。
「死んでもいいんだ!、きっと死んでもいいはずなんだ!、なのに!」
うう、ううう……
シンジの言葉が無くなってしまう。
どうして生きろって言うのさ?
世界的に見ても、自殺と言う物は無くなっていた。
それを望んでいるのは、正直ここに居る彼ぐらいなものだろう。
あたしは、何ができるの?
アスカは必死になって何かを探した。
あたしに、何ができるの?
アスカは自分の中を探した。
探して回った。
何もないの?
みなに優しく振る舞う事を覚えた。
悩みを聞いてあげられるようにもなった。
でも解決してあげるだけの力は、いまだ持ち合わせてはいない。
だって知らないんだもの……
ごしっと、口元の血を拭う。
どうすればいいの?
上げられる物が無い……
シンジの欲しがりそうな物を持ち合わせていない。
でも何か……
アスカはその何かを探した。
あたしにだって、一つぐらい……
そして思い付く。
あたし?
あたしのなに?
あたし自身?
何ができるかにこだわっていたことにも気がついた。
「そうよね?」
シンジにとって、不可解な呟きが漏れて来た。
「まだなんにもしてないじゃない……」
当たって砕けようともしていない。
だから……
アスカは顔を上げた。
シンジに、あたしの全部を上げる……
差し出してあげる。
あたしの全部を賭けても……、全部……、え?
急にアスカの顔が赤くなった。
でも……、そうよね?、そこからよね?
シンジに信じさせる。
その為には仕方の無い事なのよね?
あたしがシンジの……、シンジから離れないって『証し』を立てなくちゃいけない。
立ててあげなくちゃいけないのなら……
アスカの火照りが、体全体へと広がっていく。
急な緊張感を感じ取ったのか?、シンジはおかしいとアスカを見た。
諦めればいいのに……
そう思ったのだが、アスカの様子を見て首を傾げてしまった。
アスカ?、どうしたんだろう?
アスカは真っ赤になってぶつぶつと呟いている。
先程までの悲哀は何も感じられない。
使徒との戦いと変わらないわよ……
アスカはその間も考えていた。
そうよ、誰かのために命を投げ出す、当然じゃない……
命……、それが生と死に分けられる。
生きてる、それは体がある事よね?
妄想が進行していく。
本当に良いの?
裸の二人が重なり合っている。
シンジの左手は自分を支え、右手はアスカの胸の真上にある。
触れる直前の確認。
こくん……
アスカは両手で顔を隠したまま頷いた。
「いいの……」
「でも……」
シンジはまだためらっている。
「いいの、あたしシンジにだったら……」
シンジの顔が悲しみに歪み、手が離れていこうとした。
アスカの言葉が、周りと比較しての言葉だったからだ。
じゃあ、僕以上の人が現われたら?
アスカはその気配を察したのか?、両手を開いてシンジに泣き顔を見せてしまった。
「あ、アスカ……」
そんなに嫌だったの?
シンジは泣きそうになってしまう。
アスカは小さく首を振った。
「シンジにだから、あげられるの……」
つくせるの。
「いたいと思うの……」
ずっと……
ずっと?
側に居るだけ?
ううん、ひとつになりたいの……
アスカはシンジの首に手を回して……
「アスカ?」
「ひっ!?」
アスカはシンジの呼び掛けに、驚いたように我に返った。
「あ、な、なによ!」
びくっと脅えるシンジ。
「ご、ごめん……」
シンジはすごすごと出て行こうとした。
「あ、こら!、ちょっと何処に行くつもりよ!」
その肩をつかんで呼び止める。
「だって……」
怖々とアスカを見つめるシンジ。
ふっ、いいわ……、あたしの全部を賭けてあげる。
アスカの瞳に怪しい輝きが一瞬かいま見えた。
「あたしは!、……ママにはなれないわよ」
「うん……」
アスカは気付かれないように深呼吸した。
そしていつかのように心で決心する。
アスカ、行くわよ?
シンジに続きの言葉で攻めていく。
「わかってる、アスカは他人だもの……」
「でも、あたし達は仲間だし……」
「仲間だったんだ、今は違う……」
「でも違う関係にはなれるわよ……」
「?」
シンジが気付かないように口ずさむ。
「シンジ……」
「なに?」
ちゃんと会話は成立してるわよね?
この部屋に乗り込んだ時のことがある。
アスカは一応の懸念を取り払った。
「血がついてるわよ?」
アスカは自分のつけた血の痕を指した。
「うん……」
「……ごめんね?、気持ち悪いでしょ」
顔を伏せ、髪で表情を隠してしまう。
「そんなことは……、ないけど」
しめしめ……
くっくっくっと、その下で笑っているアスカ。
まただ……
シンジは逆に苦しんでいた。
またアスカを傷つけてしまった……
シンジはアスカが泣いていると思い込んだ。
「お風呂……」
「え?」
「お風呂に入って、洗って来なさいよ……」
「……うん」
居づらいな……
シンジはいたたまれなくなって、逃げるように部屋を出た。
ちや〜んす☆は自分で作らなくっちゃね?
ほくそ笑んでいるアスカ。
後はシンジがシャワーを浴びている所を見計らって……
誰!?
振り返るシンジ。
アスカ!?
あたしは黙って飛び込むの。
シンジ……
あ、なにを……
頬も、胸も、あたしの大事な所もシンジに擦りよせてあたしは言うの……
あたしを信じて……
目をうるませて……
あたし、シンジになら何でもしてあげられる、シンジだから、何でもしてあげたいの……
これで落ちない奴は居ないわよ。
アスカ……、だって……、僕は……
シンジ……
その一言で言葉を途切れさせて……
シンジぃ……
ねだるように……
シンジが居なくて寂しかった、シンジに嫌われて……、だからもういいの……
もういいって、なんだよそれ?
シンジに何されてもいいの、シンジに嫌われてもいいの、シンジのことが……す……
「きゃあああああああ!」
アスカは自分の妄想を振り払うように、頭の上でバタバタと手を振った。
「そんなにうまくいくわけないじゃない!」
しかしほんの少しの期待もある。
そんなにうまくいくわけ……
「でへ?」
そう、そんなにうまくいくわけはない。
アスカはすっかり忘れていた。
シンジの為に、お風呂を沸かしに行った彼女のことを。
[LAS02][TOP][LAS04]
新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
この作品は上記の作品を元に創作したお話です。