Will you ……? 6

「んん!」
 首をすぼめて、レイは体を転がし逃げようとした。
 だがシンジは体に腕を回してそれを封じた。
「ごめん……、気持ち悪い?」
 首筋から離れ、耳元で尋ねる。
 熱い息が耳の奥まで吹き入る。
 それだけでレイは悲鳴を上げて身をよじった。
「綾波?」
 シンジは自分がどれほど興奮しているか分かっていなかった。
 息がどれ程熱いかを理解していなかった。
 それがどれくらいレイを興奮させるかも。
 もう一度キスをする、今度は耳の裏辺りに。
「んん!」
(気持ちいい時の声なのかな?、これが……)
 知らないレイを知った気がした。
 だからより強くキスをする、痕が残るくらいに。
「ん?」
 シンジが顔を離すと、レイの手が気だるげに持ち上がってきた。
「綾波?」
 不思議そうなシンジの前で、レイはキスの痕を指の腹で撫で擦った。
「印が……、付いたの、ね?」
「え?」
「嬉しい……」
 思い浮かぶのはアスカとシンジが初の行為を追えた翌日、あの朝のことだった。
 あの朝日の中で見てしまった絆の証し。
 もうずっと昔に、嫉妬と共に見た記し。
「碇君……」
 もっと付けて欲しいと引き寄せる。
「綾波」
 シンジは求められるままに、レイの喉元に吸い付いた。
「ああっ!」
 アスカにもしたように、強く吸い付く。
「綾波!」
 今度は胸元、次は胸。
「くん!」
 先端に吸い付くと、レイの体がのけぞった。
 口の中に胸の柔肉が押し込まれる。
 顔が胸にめり込んでしまう。
「んん!」
 レイの喘ぎが聞こえた。
 シンジは堅い突起を舐め転がした。
「はう!」
 今度は身を縮めて逃げようとする。
 だがシンジはチロチロと弄ぶ。
「んっ、はっ、あう!」
 身をよじり、もだえ狂う。
 さらには余されていた左胸の先端を指で挟んで、シンジは別の刺激をレイに与えた。
 ゆっくりと手のひら全体で覆うようにこね回す。
「んん!」
 突然襲って来た別の快感に、どちらに逃げればよいのかわからなくなったのだろう。
 レイは左右に身をよじった。
「はああ!」
 声が一段と高くなった。
 息も吸うよりは吐く方が多くなって来ていた。
(んっんっんっ!)
 シンジは頑張って吸い上げていた。
 吸うと胸の肉が口の中に入って来る。
 舌はその先を転がすように回している。
 技巧というには程遠く、ぎこちない。
「ああ、あああ、あああああ!」
 声は外に漏れているのではないかと思えるほど大きくなっていた。
 だがシンジは気がつかないほど夢中になっていた。
 耳は余りの興奮に、気圧でおかしくなったかのように、キーンと遠くなっていた。
(汗の味?、違うのかな?)
 レイの肌からは何か特別な味がする。
 シンジはそちらのことに気を取られていた。
 レイの腰は前後に動いていた、必死にシンジの腿を使って擦り上げている。
 右足にからまり、ギュッと締め上げて来るレイの足に血を止められて、シンジの足は痺れを感じていた。
(綾波……)
 シンジは両手をレイの背にギュッと回した。
 子供のようにしがみつく。
「はあっん!」
 シンジの頭を掻き抱いて答える。
 足もより強い力で締め上げた。
 シンジも強く抱きついた。
「……あ」
 とても小さな呟きが聞こえた。
 事切れたような、最後の悲鳴。
 はっとシンジは正気に返る。
「綾波、綾波!?」
 驚いて起き上がる。
 レイは反応を示さない。
 はっはっはっと、激しく胸を上下させている。
(あ……)
 シンジもようやく気がついた。
 自分の足が、酷くねたつくもので濡れている。
(そっか……)
 レイの動悸の早さ、呼吸の荒さは、壊れてしまったような気さえしてくる。
 自分のした事が恐くなる。
(でも……)
 所々、なにがなんだかわからなくなっていた。
 それ程までに激しく求めてしまっていた、レイを、彼女を。
 そしてまたレイに何かを与えようとしていた。
『さよなら……』
 いつかの想い出が蘇って来た。
 なにもない、今でも。
 でも絆は作れた、少なくともここにはある。
(僕は断ち切ろうとしたけれど……)
 アスカもレイも、それを恐れて泣いてくれた。
 連れ戻してくれた。
 繋ぎ直してくれたのだ。
 そして今は更に強く求めてくれている。
 シンジはレイの胸をつかんで、力を入れた。
「?」
 ぼうっとした瞳をレイは向ける。
 また口に含もうとしているシンジの動きを、空ろな瞳で追い続ける。
 頭の中は真っ白で、何も考える事ができないでいた。
 胸が変形し、しぼられている。
 シンジが口を付けようとしている。
「い、や……」
 恐さからか、呟きが漏れた。
(あなた、誰?)
 飛んでしまった頭で思い出す、懸命に。
 それはとても大事な事だから。
 大事な事だと思えたから。
(碇君?)
 そっと胸にキスをされた。
(んっ!)
 先端の敏感になっている所にだ。
(何を、されているの?)
 再び沸騰を始めた血液が頭に昇り始める。
(キス?、口付け……)
 見下ろすと、シンジが胸をつかんでいた。
 軽く押し上げて、その下にできている溝にまで、丹念に舌を這わせて、吸い、キスの痕を付けていく。
(これは、証し?)
 白い肌だけに、赤くなった部分がやけに目立つ。
(碇君が刻んだ、証し……)
 絆の証し。
 シンジは手を下へ差し入れ、レイの腰を持ち上げた。


「スクリュー音、確認!」
 索敵班から悲鳴に似た叫びが上がった。
「何処の船だ!?」
「新型です、データ無し!」
 モーターとスクリューには開発したメーカーの特徴が出ている、それである程度の型は特定できるのだ。
「魚雷発射音確認!」
「対潜ヘリを出せ!、護衛艦には魚雷に対して弾幕を張らせろ!」
「魚雷!、また来ます!?」
「わかっている!」
「違う、真下からです!、もう一隻います!」
「なんだと!?」
「ジェーン、直撃します!」
 並走していた戦艦が中央部から浮き上がった。
 そして中折れするように沈没を始める。
 空母ブリッジは突然のことに動揺が駆け抜け、誰もが唖然として固まった。
「ジェーン、ジェーン応答しろ!」
 真っ先に副官の彼が我を取り戻す、しかし解答はない。
 黒煙だけが立ち上る。
「くっ!」
 拳をパネルに叩きつける艦長。
「正面の艦影は囮か!?」
 レーダーは陣営の真下、遥かな海底に、ようやく動きだした大きなものの影を映していた。


 シンジの舌と唇は、おへそを越えて下腹部へとたどり着いていた。
 丸い膨らみは子供が宿る場所でもある
 そこへのキスだけに、唇はそっと、厳かに押し当てられる。
(碇君の、子供?)
 レイもシンジのキスの特別さを感じ取っていた。
 そうなるかはわからない。
 時間の許す限り読んでいた本。
 そこには身ごもった女の話も描かれていた。
(でも、その前のことについては何も……)
 何も書いてはいなかった。
 愛し合ってできた子供。
 その表現を思い出す。
(これが……、愛し合うと、言うこと?)
 これが?、と、レイは右手をゆっくりと自分の胸に当てがった。
「なに?」
 その動きに気付いて尋ねる。
 レイは答えずに、キスの痕を指でなぞった。
(ん……)
 胸の先端に指が触れる。
(痛い?)
 もっと甘い感覚だった。
(気持ちが良い?)
 こそばゆい。
(碇君……)
 熱っぽい潤んだ瞳でシンジを見下ろす。
「綾波……」
 シンジはレイの足の間から見上げていた。
 確認を求めているような感じで。
 レイはただ、優しく、穏やかに微笑んだ。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
この作品は上記の作品を元に創作したお話です。