巨大過ぎる原生生物の一角が盛り上がった。
内側から膨れ上がり、中央部が赤くなる。
赤は周囲に広がって、中心部は白くなった、そして爆発し、弾け、噴き散る。
そして伸び上がったのは十字の炎だった。
「あ……」
ミサトは愕然とした。
「アスカ……、なの?」
どろどろに煮えたぎる肉汁を流れ落としながら立ち上がったのは、エヴァンゲリオン弐号機、02だった。
素早くマヤが報告する。
「弐号機、ケージに確認できます!、停止信号も確認」
(でもどうして)
先程からそればかりだった。
(司令の話じゃ、シンジ君は遺伝的なものだって……、なのにアスカが、なんで!?)
理由など、わかろうはずもなかった。
──ゴォオオオオ……
ずちゅりと踏み出した足が溶解した地面に嫌な音を立てる。
周囲は何千度にも達していた、歩くだけで怪物は燃え、溶け、煮立ち、沸騰し、ぼこりと泡を立てて弾け、身もだえた。
エヴァンゲリオン02に見える巨人の肌や装甲は、不可思議なことに、まるで透けているようだった。
透けると言っても、あまり透明度は好くはない、不純物めいたものが彩っているのだが、確かに内部がくすんで見えた。
胸の中央に人影がある。
これはエヴァンゲリオンなどでは無かった。
アスカのATフィールドが作り出した幻像であった。
(どこよ……)
怒りに満ちた『思念』を吐く。
(どこ行ったのよ!)
──フォオオオオオオ!
仮面を上下に割って、その下にある肉眼を晒す、体をのけぞらし、ひとしきり吼えると、巨人は巨大な炎の竜巻を生んだ。
ファイヤストームが天と地を繋げる。
加速に伴い、炎が膨らみ、広がった。
「ジオフロント内部の気温上がります、六十、七十……、気圧にも変化が」
「天井都市が落ちて来ないよう調節して」
「はい」
(そんなことどうだって良いじゃない)
ミサトは正直な感想を心中で抱いた。
形態を変化させたことが仇となったのか、ただの巨大生物に堕ちていたレイノルズが、ぴくぴくと断末魔の痙攣を始めている。
もう、大きな動きを見せる余裕などなさそうだった。
──02が振り返る。
その視線の先に、火の粉が舞っていた、火の粉が鳥の形を浮き彫りにしている。
──コォオオオオ!
不思議な音を立てて、使徒は姿をはっきりと見せた。
全身が細かく振動している、音も、発光も、そこから来ているものだった。
エヴァンゲリオンは無言で左肩に手をやった、アスカはナイフを抜くつもりだったのかもしれない。
そのイメージをトレースして、肩口に歪な柄が生み出された、炎が渦を巻いて凝固した。
──引き抜く。
炎が白熱の刀身を形成した。
「大変です!」
マヤは叫んだ。
「使徒の前に、人が居ます!」
「なんですって!?」
画面の一部がクローズアップされる。
映し出されたその顔は……
「洞木さん!?」
ミサト以下、彼女に面識のある面々が……
呆気に取られて、自分自身を見失った。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
この作品は上記の作品を元に創作したお話です。