わたしは誰?
 わたしは何?
 なぜ乗っているの?
 誰に命じられているの?
 あなた誰?
 あなたは何?
 なぜ従うの?
 なぜ頷くの?
 わからない。
 わからないの。
 わからないわ。
 この感じ。
 わたしを求める人。
 わたしの求めるもの。
 あなたは誰?
「くっ!」
 震動によって我にかえる。周囲に武装ヘリが浮いていた。
 反射的にグリップを握り込む。
「敵……。倒すべき、敵……」
 青色の巨人が銃を構える。


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Evangelion another dimension future:4
「コアシステム」



「未確認機接近」
「ゲンドウさん……」
 話しかけられてもゲンドウは答えなかった。
 やつめ……初号機を完成させたのか?
 それはないなと考えを改める。
 彼はなるほどとにやりと笑った。
「リツコ君だな」
「あ、はあ? 開発局技術部のリツコさんをご存じで?」
 不用意な台詞が彼の正体をうかがわせる。
「ナオコ君を除けばリツコ君だけだからな。あの概念を理解していたのは……」
 思わぬ返事が実は独り言であったと気が付いて、案内役の男は会話を諦め、パイロットにヘリの迎撃を命令した。


 ヘリの両翼下部には二メートル程度のおもちゃのような機体が取り付けられている。それは支援用の半自動攻撃機であった。
 活動はマッハ近くの全力飛行で五分と短いが、ヘリの護衛を任せるには十分な性能を持っている。
「高度を上げろ。敵の性能を見る」
 ゲンドウの存在を無視して命じる。
 ヘリが昇っていくのも構わずに、二つの円盤状の戦闘メカは、そのポジションに滞空した。


 ゴオオオオオ……。
 低空での飛行をシンジは行う。
 道路が高速で流れて行く様は圧巻だった。
 真正面で黒い粒のようなものが空中高く上がっていった。それはゲンドウ達の乗るヘリだった。
 なぜ?
 まず第一に紡ぐ言葉。
 マナは手を組み合わせて懺悔していた。
 ちょっと興味が沸いちゃったのよ。
 あっさりと抜いていった車と、それを操っていた男の子に。
 自分と変わらない歳だったが、自動化の進んだ現代では、十四・五歳で車を持っているなど普通のことだ。
 特にこのような特殊な土地では、車がなければ生活ができない。
 そんな風に……軽く考えて彼の家を訪ねて唖然とした。
 あまりにも想像からはかけ離れていた。
 てれてれと、だが明るい部分にお坊ちゃま的な感じを受けた。
 良く言えば可愛く、悪く言えば幼稚でお子様な男の子だった。
 だがどちらにしても、そう卑下するようなものではなくて、くすっと笑って許せるもので……。
 なのに、裏切られたって感じがして。
 いい意味で。
 宇宙艇ってなに? 改造ってとんでもないじゃない!
 次々と興味が湧いていく。
 どうして誰も気付かなかったの?
 シンジと言う少年に。
 誰でも勝てる車と説明を受けた。
 嘘よ絶対……。
 確かにナビゲートシステムは便利だったが。
 そんなものに合わせて動かすって、手が追い付かないのよ!
 反射的な判断と操作、それは長時間の訓練を要するものだった。
 次々と秘密の姿が明かされていく。
 隠れていた一面が浮き彫りになっていく。
 それを側で見ているのは快感だった。
 剥がしていく楽しい一時(ひととき)
 唾付けようと思って、大当たり!
 前の席を覗き見る。
 そこにはまたマナの知らないシンジが居た。
 熟練のパイロットのように機体を操っている。機体が水平であれば上下逆さまでも構わないなどと口にする辺り、空間に対する特性の高さをうかがえた。
 ごめんねシンちゃん? ちょっと興味が湧いただけって、失礼だったよね?
 だから謝る。
 こんな楽しいの、わくわくする!
 マナとはそのような女の子であった。


 ピッ……。
 手元のランプが指向性の通信を受信したと知らせる。
 シンジは反射的にそのチャンネルをオープンにした。
「……シンジか」
「父さん!」
 え? お父さん!?
 驚き、マナは聞き耳を立てた。
「こんな……、こんな所で何をやってるんだよ。父さん!」
 その叫びは切羽詰まっていて、親子の会話には程遠いものだった。
「必要だから取りに来たまでだ」
「今更……、なんだよ」
 シンジは声をしぼり出す。
「僕を必要とするコアシステムには興味が無い。そう言ったのは父さんじゃないか!」
 シンジの脳裏に、遠い日の記憶が蘇った。
 あの男は自分の研究のために子供を見殺しにした疑いがある。
 彼の研究は多くの被験者を……。
「子供のだだに付き合っている暇は無い……」
「ならコクピットを狙えばいいよ」
 ちょっとシンちゃん!
 マナは危うく割り込みかけた。
「後部が無事ならコアシステムは起動できる。もっとも……」
 シンジは嘲りを口元に浮かべた。
「これに積んでるのは起動用のシステムだけで、本体は別にあるけどね!」
 レーダーに二つの反応を確認する。
 横流しで貰った弾だけじゃ足りないかもしれないな。
 シンジは乾いた唇を、軽く内側へと噛み込んだ。


「当たらないはずが!」
 そのヘリは通り過ぎざま、先端にある機銃を真横へ向けて操射した。
 しかしレイは軽く前へ踏み込ませて回避する。
 ミサイルが飛ぶ。これも前屈みになって避けてみせる。
「嘘だろ……」
 皆愕然としていた。
 人型兵器は駆動部分が多すぎて、実際の動作と操作との間には相当のタイムラグが存在しているものだった。
 それが!?
 撃つと同時に反応されてしまっている。
 こっちの動きが分かるってのか!?
 レイはヘルメット型の固定バイザーを被り、両側にあるスティックを操っていた。
 パイロットシートは半分立ったような状態になっている。
 内部電圧……上昇。
 フィイイイイイイイイン……。
 一瞬コクピットの明りが弱まった。
 荷電粒子砲……掃射。
 左腕が持ち上がる。
 その掌にあるレンズが光った。
 爆発、あるいはヘロヘロと落ちていくヘリ達。
 莫大な電気の余波を受けたのだろう。火花を上げていた。
 敵有効戦力……消滅。
 また空を見上げる。入る時に壊した場所を見つける。
「離脱します」
 ゴゥ!
 再び翼を広げて、巨人は大推力を用いて飛び去った。


「きゃあああああああああああああ!」
 マナが叫ぶ。
「くっ!」
 敵を追うが、シンジの腕では捉え切れない。
 敵は二メートルサイズの銀盤で、後方に向けた主エンジンがあり、左右には圧縮空気を噴出するためのスリットが開けられていた。
 高速で飛び回り、少量の圧縮空気で真横に跳ねるような動きをして見せるのだ。それは大型機にしてみれば驚異であった。
 ピッフィング……無駄な動きをやたらとくり返し、右に左に振ったかと思えばいきなり視界から消えうせる。
 ビ────!
「この!」
 コンピューターのガイドに従って機体を振る。先程まで飛んでいたコースに重なる軌道で、赤い光が走っていった。
「……ふむ。さすがはリアルチルドレンと言ったところか」
「違う! そんなのは父さんの妄想じゃないか!」
 機体には機銃のみを内蔵している。しかしその弾装は決して大きくは無い。
 無駄弾は撃てない!
 そんな焦りとゲンドウの声が神経を苛立たせた。
「シンジ。目をつむってはいかん」
「なにがだよ!」
 右、左、右、左、右!
「むぎゅう!」
 急な横Gに、マナは蛙が潰される時のような声を出していた。
「捉えた!」
 真正面に銀盤が来た。シンジは迷わずトリガーを引いていた。
 ガシャン!
 的に対して弾が大き過ぎたらしい。シンジの放った銃弾は撃ち落とすと言うよりも粉々に破壊して散らしてしまった。
「まず一つ!」
「ただの人間には追いきれん……」
「そんなことはないよ!」
「訓練だけでは五十万通りからなるピクシーの動きを予測することなどできん。それともお前は今の撃墜を勘によるものですませるつもりか? 二メートルの物体を撃ち落としておいて、もっとも……」
「くっ!」
「その勘こそが、チルドレンの証しだが」
「二つ!」
 もう一つの銀盤も撃墜する。
「父さん!」
 シンジは急上昇をかけて追いかけた。
 ヘリの姿をターゲットスコープの真ん中へ入れる。
 そして迷うことなくトリガーを引いた。しかし。
 え!?
 黒い影に割り込まれてしまった。
「あれはさっきの!?」
 ロボットだった。両腕を広げてヘリを視界から奪ってくれた。
 さらには弾丸を装甲で弾いてくれた。
 七色に揺れる装甲で。





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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

この作品は上記の作品を元に創作したお話です。