──幸運なことが一つだけあった。
 それは月と太陽の位置関係である。
 目標が太陽の側になければ、ソーラーレイは使えなかった。
 これは反射鏡である以上、やむをえないことである。
 月の裏側で噴出した土石は、月と地球の引力に振り回されて流れてくる。
 ソーラーレイの光はその動きを追うようにして照射された。


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Evangelion another dimension future:14
「その決戦を」



 晴れているなら太陽光は容赦なく物体を焼き付かせる。それが宇宙というものだった。
 それでも物体を融解せしめるには熱量が足りない。ソーラーレイはただ太陽光を反射するだけのシステムではない。そのような光を集めて焦点照射しようというのが狙いであった。
 だからこそ、飛んでくるデブリをすべて焼き払うというわけにはいかないのだ。
「ミラーの損傷率を報告させろ! 各艦艇に連絡! 全艦主砲にてゴミを焼き払えとなっ、ただし! ミサイルの使用は禁止する」
「はっ!」
宇宙(そら)が曇ってはソーラーレイが使えなくなりますからな」
「だがミラーの枚数は足りなくなったかもしれん」
「その時はその時でしょう」
「む?」
 副官の調子に首をかしげる。
「どうする?」
「腹をくくって、艦隊戦を挑みましょう。それが本道でもありますからな」


 ──爆発が起こる。
 そこはシンジたちが立ち寄ったあの基地であった。
 核の衝撃波にさらされて、表の面に見えていたはしけやレーダーアンテナ類がもげ、あるいは消えていた。
 内部ではパニックが発生している。
 生命維持に問題が発生しているのだ。
「Nフィールドの職員を収容しろ!」
「Fブロック完全閉鎖! エアの流出が止まってないぞ、酸素供給装置の稼働率は」
「あの敵機はどうした!?」
「消えました!」
「消え?」
 レイはわざとシンジが作り出した安全地帯を抜け出して、流れ来る衝撃波の波に乗っていた。
「…………」
 ネクストとしての能力があれば、爆発の力も推進力の一つとして利用できる。遠く、遠くに漂っていた。
 その波は遙か彼方からやって来たものであったから、それほど運んではくれなかったが、戦闘宙域から離脱するには、実に十分な力を彼女に貸していた。
 なにもない空間に一人漂う。
 レイは機体に両腕を広げさせ、まるで宇宙(そら)をつかまえようとしているかのような姿勢を機体に取らせていた。
「……ふふ」
 両側にあるレバーを握ったまま、体を前に倒し、くすくすと笑う。
「ふふ……ふ、ふふ」
 顔を上げる。
 口元と目元が、押さえきれないものにひきつっていた。
「ふふ……」
 ふぅっと息を吹いて無理やり感情を抑え込む。
「まだ……生きてる」
 今度こそ、ちゃんとした深呼吸をして体を伸ばした。
 瞳を閉じる。
 ──キィン。
 そんな音が脳裏で鳴った。
 小さな光がきらめいて、そこに彼らがいるのだと知る。
 瞬間、無意識のうちにレバーを操っていた。
 機首をそちらへと向けてしまう。
 しかし目的の地は遠すぎる。あまりにも長い距離が横たわっている。
 なにより酸素がもう尽きかけていた。戦闘時の呼吸は心拍数の上昇に伴い劇的に酸素消費量を跳ね上げてくれるのだ。
 彼女にはもう、無事にどこかへとたどり着く方法はない……はずであった。


「ん……」
 マナは一瞬、ここはどこだろうかと思ってしまった。
「あ……そっか」
 星が流れている。それは移動してる証だった。
「シンジ?」
「起きたの?」
「どこに向かってるの?」
「戦闘中だよ!」
 ガガンと振動に襲われた。
「きゃあああああ!」
「黙って!」
 舌咬むよ!? そんな調子でシンジは怒鳴る。
「この!」
 急旋回、急上昇。
 そしてターゲットスコープに敵機を入れて、ロックオン。
 機首にあるバルカンが火を噴く。
 が、弾は敵人形の表面装甲にはじかれてしまった。
「だめか!」
 逃げに回る。
「どうしたの?」
「どうもこうもないよ!」
 シンジは酷く焦っていた。
「足止めされちゃって、追いかけられないんだ!」
「え!?」
 見れば要塞艦が遠ざかっていく。
 戦闘は続いているのだろう、爆発をまとわりつかせて見える。
「くっ」
「触るな!」
「え!?」
 マナはレバーから手を引っ込めた。
「シンジ?」
 シンジはしんがりとして配置されたらしい機体群を抜けるのに精一杯になっていて、彼女の問いかけに答えるようなことはしなかった。





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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

この作品は上記の作品を元に創作したお話です。