──カッ!
 かつては地上で瞬いた光が、今は宇宙で輝きを見せる。
 九体の量産型エヴァンゲリオンと同系統の機体が、一体のエヴァを取り囲むようにして回転している。
 中心にいるのは青いエヴァンゲリオンだ。
 赤い瞳に白いエヴァが映り込んでいる。右下から左上へ、あるいは上から下へと同じものがよぎるようにして通り過ぎていく。
 だが、迷いはない。
 背後から、あるいは上から、正面から。
 剣で斬りつけられるのだが、微動だにしていない。
 それは金色の繭を作り上げ、完全なる防御を行っているからであった。
「神を拾った古代人は、そのコピーを作り出した。だが魂が宿ったコピーは、たった一つであったそうだな」
 キールを嘲笑するゲンドウ。
「神の魂は人の魂のように分かたれることはなく、たった一つのみに宿った。だが同じ肉体があればどうだ? 魂はまたその器に戻るのではないか? それがわたしの出した結論だ」
 シートに腰掛ける。
「同時に、わたしは彼女の体細胞から別の生物……、そう、人間との掛け合わせを作成した」
「それがネクストか」
「そうだ」
 戦闘の観戦に入る。
「もっとも、それを考えついたのはキョウコだがな」
 通信を切り、キールは他の委員に対して決意をあらわにした。
「初号機を投入する」
「初号機を……ですが」
「幸いにも接触はたやすい。以上だ」
 誰の意見も聞き入れるつもりが無い。
 その様子に、他の者たちは呆れたように沈黙した。


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Evangelion another dimension future:15
「あたし、エンジェルキーパーになんてなりたくない!」



「くそっ、くそ!」
 司令官がもだえている。
「状況を知らせ!」
「未確認機多数! 要塞艦を強襲しています。要塞艦からさらに多数の兵器発進! 報告にあった白い無人機です!」
「司令」
「回り込め! 地球への降下コースに入るために最低でも一周はするはずだ、そこで押さえる!」
「はい!」
「ミラーの再編成は可能か!?」
「要塞艦を落とすには……」
「雑魚を落とせればいい!」
「それならば可能です!」
「急がせろ!」
「はい!」


「このぉおおお!」
 隕石群に突入したシンジが雄叫びを上げる。
 お互いにぶつかり、干渉しあい、また細かな破片を生み出す隕石群は落ち着きがない。
 そこを超高速で突破しようと言うのだ。
 シンジは頭の中でプチンと切れる音がしているのを聞いていた。
 それはまるで脳の中の神経が切れるような音である。
「マナ、コントロール任せる!」
「はい!」
「ミサイル!」
 背中にあるスリットからミサイルが発射される。
 正面のなにもない空間で爆発。その爆風が隕石を押しのけ、あるいはさらに加速させる。
「マナ!」
「くっ!」
 シンジはその爆発を突き抜けるように指示した。
 大型ミサイルの衝撃波が隕石を機体から突き放してくれている。
 それでもその程度の衝撃波では押し返せない岩塊もある。
「だめなの?」
「……くそぉ!」
 シンジがシステムを立ち上げる。
 モードを人型へ、さらに第二形態へと移行させる。
「シンジ!?」
「…………」
 シンジは沈黙している。集中しているのだとすぐにわかった。
「凄い……」
 自機の六倍はあろうかという隕石が、フィールドにぶつかって砕け散る。
 その質量故に耐えきれなかったのだろう。
(ただの固い壁ってわけじゃないんだ)
 それならば無事であったとしても弾かれてはいただろう。
「要塞艦だって受け止められたんだから、なら!」
 マナは最短で抜けるコースを機体に指示した。
(シンジ……)
 シート越しにヘルメットを見る。
(あたしのこと心配してくれるのはうれしいけど……)
 マナにも不安はあったのだ。
(シンジの頭にだって、負担はかかっているんだよ?)


「通信だって?」
 リョウジは非常識なとコウゾウに返した。
「この宇宙嵐の中で?」
「それも地球からだよ」
「回線、開きます」
 そして映った男に驚いたのは、リョウジにぴたりとくっついていたミサキだった。
「おじさま!」
「おじ!?」
 リョウジは男が誰だか知っている。
 キール・ローレンツ。
 地球の陰の支配者であり、自らのクライアントでもある。
「久しいな、ミサキ」
「はい、おじさまもお変わりなく……」
「まだ人としてのところを残しているか」
 寂しそうにミサキが笑う。
 リョウジはその顔に聞いた話を思い返した。
(そうか……突然エンジェルキーパーになるんだったな)
 ならば生んでくれた親は居て当然なのだ。
(議長の?)
「カヲルはどうしている?」
「元気で」
「あれは生まれながらの『使徒』だ。気にすることもないだろうが」
 彼は世間話を打ち切った。
「用がある」
 彼の目はリョウジへと向けられた。
「初号機を地球へ」
「地球へ!? しかし、手段がありませんが」
 なにしろ酷い磁気嵐が続いているのだ。
 いつ終息するのか、まったくめどが立っていない。現在の航行も星の位置をコンピューター解析してなんとか火星の位置を割り出している状態だった。
「燃料も酸素もぎりぎりなんですよ?」
「そのためのガギエルだ」
 リョウジの目が腕に組み付いている少女へと落ちる。
「おじさま……」
「その後は、また自由にしろ」
「はい……」
 うなだれる少女。リョウジはキールとの回線が切れるのを待って話しかけた。
「大丈夫か?」
「はい……」
「とにかく、休んだ方が好いな」
「あの……これ」
 マヤが遠慮がちにボトルを差し出した。
 栄養ドリンクの類だろう。泳がせたそれをリョウジはありがとうと受け取り、ミサキに持たせた。
「どうした? 酷い顔だぞ?」
「そうかな?」
「ああ……」
 一口……彼女はボトルからストローで吸い上げた。
「甘い……」
「ああ」
「まだ……感じられる」
「…………」
「あたし……」
 酷く頼りなく感じられる。
「いえ、なんでもありません」
 にっこりと笑って、一人で立とうとする。
「リョウジさん」
「なんだ?」
「アスカちゃんを呼んでください。カヲルも」
「……ああ、わかった」
「じゃあ、あたしはガギエルに帰りますから」
 出て行く彼女のお尻を見ながら、リョウジはなんでしょうねと訊ねかけた。
「どう思います?」
「帰る……という言葉の裏にあるものが気になるが」
 コウゾウは従うしかないのだろうと直感で話す。あの船が彼女にとって唯一の居場所なのではないのかと。
「しかし、エンジェルキーパーは、絶対者であると思っていたのだがな」
 目で問いかけている。
 リョウジはその質問に、肩をすくめることで返事とした。





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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

この作品は上記の作品を元に創作したお話です。