GenesisQ’

Episode:16B





「何よこれー!」
 階段を上がると右手はすぐ行き止まりだった、ただ階段の真横になる部分には押し入れがあったが
 天井に階段が収納されていた、天井裏の部屋へと上がるための階段だ。
 階段正面に部屋、左手に廊下がのびている、そちらへ向くと、正面奥に部屋、手前右手と左手にも部屋があった、左手の部屋が一番大きかったが、その窓はベランダへと続いていた、都合4部屋だ。
「ベランダにはこの部屋通らないといけないわけね?」
「でもでも、部屋全部ドアじゃなくて襖だよぉ?」
「中は畳ですぅ!」
「あ、しかも部屋全部繋がってる…」
「マジぃ!?」
 アスカが飛びこんだ、確かに襖で区切られてはいたが、繋がっている。
「な、なんて作りなのよ…」
 がくっと膝をつくアスカ。
「いいんじゃないの?、タンスか何か置いたら?」
「音が漏れるってのが我慢できないのよ!」
「そんなこと言って、ぼくの部屋には勝手に入ってくるくせに…」
「思春期の女の子には、とかく秘密が多いものなんだよ、シンジ君」
「納得いかないよカヲル君…」
「ま、いずれそのうちわかるようになるよ、それより問題はシンジ君がどの部屋に入るかってことじゃないかな?」
 え?っと、カヲルを見る。
「だって、みんなそれから決めるつもりだろ?」
 左の部屋へ入る。
「あそこが、さっき僕が手を振っていたベランダだよ」
 南側、広い。
「じゃあ、ここが一番人の出入りがあるんだ…」
「広いけど…、あたしはヤだなぁ」
「わたしもですぅ…」
「でも押し入れはここにしかないみたいだよ?」
 シンジが両手で大きさを測っている。
「いっぱい入りそうだね?」
「そんなの関係無いわよ!」
「何怒ってんだよ、アスカ…」
「怒って当然じゃない!、みんな危機感ってもんが足りてないんじゃないの!?」
 襲ってくるのはそっちじゃないか、と心で思うシンジ。
 襖をパタンパタンと閉じたり開いたりして見せる。
「鍵のない部屋でどうして安心できるのよ、ほんと、信じらんない!」
「日本人の信条は、察しと思いやりだからよ?」
「おばさま!」
 開いた時に、ユイが立っていた。
「みんな気に入った?、こういう家に住むのが夢だったのよね、おばさん」
 ニコニコほくほくしている。
「おばさま!、どうして襖なんですか!?」
「あら?、京都的で良いじゃない」
「京都って…」
「京都の家ってさ、廊下って考え方がないんだよね、確か」
「そなの?」
「そうだよ?、レイ知らなかったっけ、母さんがよく言ってたじゃないか」
「んー、ごめん、覚えてないや」
 てへへっと舌を出す。
「しょうがないなぁ…」
「京都の家は、部屋を通って奥へ進むようになっているからな」
「父さん」
 ゲンドウも上がってきた。
「部屋割りは決まったのか?」
「ううん、まだだよ」
「早くしろ、下の荷物が片付けられん」
 荷物はとりあえず、下のリビングと廊下に放り込まれていた。
「うん、わかったよ…、けどどうしたのその格好?」
 スーツを着ていた。
「まるでサラリーマンみたいだ…」
「私はきっちりサラリーマンだが…、これから仕事だ」
「こんな時にですかぁ?」
「こんな時だからだよ」
 ミズホに微笑み返し、シンジの肩に手を置いた。
「シンジ、逃げてはいかんぞ」
 口元が笑っている。
 ゲンドウは子供達を愉快そうに見回した。
「たくましく生きろよ、シンジ」
「わけわかんないよ、父さん…、まあいいけどさぁ、んっとじゃあみんなどうしようか?」
 ミズホが一番に手を上げた。
「シンジ様が東っ側の部屋で、わたしが真ん中…」
「「却下却下却下却下却下、以下却下!」」
「ふぇ〜ん、酷いですぅ!」
「女の子と男の子で分けたほうがいいんじゃないかしら?」
 ユイが口をはさんだ。
「女の子は荷物が多いだろうから2階で、シンジと渚君…、カヲル君は天井裏とか」
「そんなの危ないって、お母さま!」
「そうですぅ!、ねえアスカさん!!」
「あたしは…、それでもいいな」
 全員が一斉にアスカを見た。
「アスカ!、熱でもあるんじゃない!?」
 シンジが手を伸ばす。
「そ、そんなの無いわよ!」
「でも変よ、絶対変!」
「そうですぅ!、いつもはシンジ様に縄つけて引きずり押し入れに連れ込むようなアスカさんが」
「なんですってぇ!」
「あ、元に戻りましたぁ」
「お、お父さん、どうしましょう?」
 おろおろとしているユイ。
「おば様まで…」
「…女の子には色々とあるのだろう、アスカ君の好きなようにさせてあげなさい」
「でも…」
 アスカを見る。
「いいのね?、大丈夫なのね?、本当になんでもないのね?」
「うう…、あたしってどういう目で見られてんのよ」
 頭を抱える。
「アスカちゃんには秘密が一杯あるのさ」
「何意味ありげに言ってるのよ、カヲル?」
「プライバシーの保護こそが最重要、そう言っているんだよ」
 レイに微笑み返す。
「さて、じゃあ僕達は屋根裏部屋をどう分けるか考えようか、シンジ君?」
「そうだね、カヲル君」
「あああああ、シンジ様ぁ」
「いいの?、シンちゃん本当にそれで良いの?」
 屋根裏部屋への階段を踏みしめながら、シンジの耳にはレイのその声が響きまくっていた。






「ホンマぁ!、こんな時ばっかりわしらを頼りよってからに…」
「そこぉ!、ごちゃごちゃとうるさいわよ!」
 ぴしっと定規で鞭打つ。
「いったぁ!、なにすんのや!」
「ボサボサっとしてるからでしょ!」
「ごめんねぇ鈴原君、ほら、シンちゃん力仕事って向いてないし」
「悪かったね…」
 段ボール箱を抱えて階段を上ってくシンジ。
「後でヒカリとおいしい物作ってあげるから、ね?」
「よっしゃ!」
 軽々と箱を持ち上げる。
「まかしときぃ!、素直で可愛い綾波のためや、なんぼでも運んだるわい!」
 アスカが蹴ってヒカリがつねった。
「ち、違うんや委員長〜!」
「トウジ、尻にしかれてるよ…」
「お前もやろが」
「もう!、中学も出たんだから委員長って呼ぶのやめてってば」
 ヒカリはふくれた。
「わかっとるけど癖や、しゃーないで」
「ふえ?、でも名前で呼んでらっしゃる時もあったような…」
 首をひねるミズホ。
 ミズホは台所で食器を担当していた。
「だめだめ、鈴原ってば誰かいると「委員長」としか呼んでくれないんだもん」
「どうしてですかぁ?」
 純真な目でトウジを見る。
「どうしてなんですかぁ?」
「う…、そんなん恥ずかしいからに決まっとるやないか!」
「そうでしょうかぁ?、あ、でもでもヒカリさんも「鈴原」って名字で呼んでらっしゃいますよねぇ?」
 ギクッとするヒカリ。
「あ、ほらあたしは…」
「そ、そや、委員長かて名前で呼んどらんのやし…」
「ここは二人とも名前で呼びあうってことでOKよね?」
「あ、アスカなんてこと言うのよ!」
 にたにたと成り行きを楽しむアスカ。
「でもすぐ定着しちゃうよ?、あたしもミズホもそだったしぃ」
 レイが後を押す。
「シンジ様も、なかなか名前で呼んでくださいませんでしたぁ」
「さあ、ヒカリって呼んでみよー!、こういうのって、初めの思いっきりが大事よね?」
「ヒカリさんも、ささ、トウジって…」
 二人ともしゃがみこんで、両者を見上げる。
「あ、あのなぁ、お前ら」
「ほらもう、レイもミズホもヒカリ達困ってるじゃない」
 首根っこをつかんだ。
「側にいられちゃ言いづらいでしょ?、こういうのは影に隠れて覗くのよ」
「「ちがう!」」
 二人とも真っ赤だ。
「ねぇ、みんなサボってないで手伝ってよぉ」
「そうだよ、俺とシンジだけでどうしろってんだよ?」
 シンジとケンスケが二人だけで段ボール箱を輸送していた。
「二人って、カヲルはどうしたのよ、カヲルは?」
「ああ、あれはダメだよ」
「ちょっとカヲル君、壊れちゃったみたいなんだ」
「はあ?」
 アスカは屋根裏部屋の様子を覗きに動いた。
「さあシンジ君!、時が二人を別つまで、ここが僕たちの愛の巣になるんだよ!、カヲル君、あ、ダメだよカヲル君、まだ明るいよ、いいじゃないかシンジ君、僕達の愛に朝も昼も夜も関係ないよ、シンジ君、それが愛しあうってことさ!、カヲル君!、シンジ君!」
 一人布団の上をごろごろと転がってる。
「……」
 極楽トンボが飛んでいく。
 アスカは何も言えずに階下へ降りた。
「危ないわねぇ、あんなのが天井裏に住みつくのかと思うとぞっとするわ」
「おーい、惣流これどないすんのやー?」
「なによ…、きゃー!」
 トウジが段ボール箱を抱えて、一番奥、アスカのものとなった部屋の襖を開けようとしていた。
「エッチ痴漢変態バカ!、あんた何やってんのよ!」
 パーン!っとスリッパではたく。
「いったー、かなわんわもう、なんやねんお前が運べいうたんちゃうんか!」
「だからって勝手に入りこもうとする事無いでしょ!、荷物は部屋の前に置いといてよ!」
「なんや、なに怒っとんねん」
「人のプライバシー覗くなって言ってんのよ!、いいからあんたはレイの手伝いでもしてなさいよ!」
「へーへー」
 いい加減アスカの癇癪にもなれたのか、へたに突っかからない。
「綾波ぃ、お前のも部屋の前に置いとくんかぁ?」
「良いよ別に、部屋の中に放り込んどいてくれれば」
 なんやえらいさっぱりしとるなぁと首をひねる。
「惣流はなんであないに怒るんや?」
「さあ?、でも僕もよく怒られるし、いつものことだよ、気にする事無いんじゃない?」
「さよか」
 駄菓子化し、気にする人物が約一名いた。
 きらーん☆っと光るメガネ。
「これは匂うな」
「匂うって、接着剤の匂いかな?、新築だっていってたし」
「…というお約束はおいといて、惣流の奴、なにか隠してるんじゃないのか?」
「そりゃまあ、あれでも一応女やし…って!」
「また何かするつもりなのぉ?」
 うんざりとする二人。
「考えても見ろよ、あの惣流がしてる隠しごとだぜ?、気になるじゃないか」
「やめといた方がいいと思うよ?」
「せや、どうせお前がどつかれて終わんの目に見えとるし」
 ふっふっふっと暗い笑いが漏れた。
「いいのかなぁ、シンジぃ、そんな悠長なこと言ってて」
「え?、なんでさ」
「もしかして、惣流って二股かけてんじゃないのかぁ?」
「またそんな嘘をつく…」
「わっかんないぞぉ?、案外お前の知らない奴とのツーショット写真なんて飾ってあったりしてなぁ」
「そんなのないってば」
「男から貰ったぬいぐるみが大事に置いてあったりとかぁ」
 ちらりとトウジを見る。
「惣流と委員長って親友だよなぁ?」
「それがどないしたんや?」
「いいのかぁ?、惣流の奴、「知られたくないから」って委員長から何か預かってるのかもしれないぞぉ?」
「んなもんあらへんっちゅうに」
「委員長の恥ずかしい写真とかなぁ」
 両の拳を握りこむ。
「うーーーーーーー、燃えてきた燃えてきたぞぉ!、ジャーナリストとしての血が俺を急き立てるんだ!」
「誰がジャーナリストやねん」
「やるぞ俺は!」
「んでまた吊るされるんやで、アホが」
 シンジもその意見に賛成だった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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