NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':Turn Namber 54 


「碇君、ちょっと!」
 シンジは鼻歌混じりで歩いていた。
「なに?、山岸さん」
 森の中を、奥へ奥へと進んでいく。
 隣に並んで歩いているのはあの猫だ。
「何処へ行くつもりなの?」
「わからないよ」
「え?」
「だってさ」
 猫を見る。
「こいつが行こうって、言ってるんだ」
「言ってるって…、そんなの気のせいじゃ…」
「違うよ!」
 シンジは思った以上の声を出して否定した。
「分からないよ、でもこいつが…」
 猫を見る。
「行こうって言ってる、付いて来てって言っている」
 猫は一度シンジを見上げてから、また前を向いて歩き出した。
「行こうよ?、この先に何かがあるんだ…」
 シンジは手を差し延べた。
「…わかったわ」
 諦める。
 マユミはそのシンジの手を握った。


GenesisQ’ 第54話
ああっ女神さまっ


 がさがさと雑草をかきわけるように進んでいく。
 獣道が森の奥へと続いていた。
「碇君…」
「なに?、山岸さん…」
 シンジの手を握る手に力がこもる。
「恐くないんですか?」
「恐いけど…」
 前を見る。
 背の高い薮に、猫の背だけが見えている。
「危険な事は無いみたいだからさ?」
「…あぁ」
 マユミはシンジの台詞にではなく、その先にあった光景に息を飲んだ。
「凄い木だ…」
 樹齢何千年、あるいは何万年にも及ぶであろう大きさだった。
 その根元には大きなうろがあり、猫はその前で腰を下ろしている。
「そこなの?」
「あ…」
 シンジに手を離されて、マユミはちょっとだけ不安そうな声を出した。
「…待ってて」
 地面から盛り上がるように姿を見せている大きな根っこ。
 それはコケに覆われていて、ずるずると手が滑った。
「よいしょっと…」
 それを乗り越え、うろの中を覗き込む。
「あ!」
「なに?、碇君、どうしたの!」
 おろおろとするマユミ。
「山岸さん、もう一匹居るんだ!」
「え!?」
 びくっと脅える。
「お腹が大きいよ、子供が居るみたい」
 子供?
 キョトンとするマユミとは対照的に、シンジは凄いやと浮かれていた。






 フー!
 マユミが覗き込むと、そこには気を荒立てている雌猫が居た。
「小さいですね?」
「あっちよりはね?、でもやっぱり1メートル近いよ…」
 こちらは黒い猫だった。
 二人は木から飛び降りるように離れた。
「やっぱり、恐いのかしら?」
「違うよ、妊娠してるんで警戒してるんだ…」
 うろは目よりも少し高い位置にあった。
「ねえ?」
 シンジはじっとしている、雄猫の方に話しかけた。
「どうして僕たちを連れて来たのさ?」
 まるで人間に話しかけるようにする。
「…答えるわけ、ないじゃないですか」
「だよね?」
 でも…と、シンジは思った。
 何だか嫌な感じがするんだ。
 きょろきょろと辺りを見回す。
 大樹と、それを覆う苔。
 シンジ達が踏み荒らしてはがれてしまっている。
 そうか…
 それ以外の状態に気がつく。
 不自然な生え方は、何かが這い上がろうとした後なのだ。
 何かに狙われてるんだ、きっと…
 そう大きい生き物ではないだろう。
「山岸さん…」
「なんですか?」
「今晩、ここに泊まり込みたいんだ…」
「え!?」
 驚きシンジの顔を見つめる。
 碇君?
 だがシンジはマユミではなく、猫と真っ直ぐに見つめ合っていた。






 そして夜。
 今日は荷物の引っ越しをしただけで、特訓はいきなり無しとなっていた。
「火は…、さすがにダメだよな」
 うろを見上げる。
「じゃあ今日は缶詰だけですね」
 リュックの中身をバラしながら、シンジは手伝ってくれているマユミに問いかけた。
「どうして山岸さんまで?」
「え?」
「何があるかわかんないんだよ?、こっちに来ること無かったのに…」
 そのセリフに、マユミはくいっと眼鏡を押し上げた。
「じゃあ碇君は、あたしを一人っきりにして、放っておいても平気だって言うんですね?」
「そ、そういう意味じゃ…」
「そう言ってるじゃないですか」
「で、でもさ…、本当に何があるかわかんないんだよ?、別に僕が居るからって、安全ってわけじゃないんだから…」
 なんて情けないの!?
 マユミははぁっとため息をついた。
「いいですよ、何かあった時には、ちゃんと自分で逃げますから」
「そう…」
 カチャカチャと缶詰を積み上げる。
 生い茂った木々の葉のせいだろうか?
 夜が来るのは早かった。






 寝袋に入って、木にもたれ掛かっているような状態だ。
 そんなシンジの隣にはマユミが、猫は二人の正面で寝そべっていた。
「ねえ…」
「なんですか?」
 あいかわらず不機嫌そうなマユミ。
「あの猫なんだけど…、レイに似てないかな?」
 マユミは問いかけられて、ちょっとだけ猫を眺めた。
「…そうは思えませんけど?」
「かなぁ?」
 何かを求めているような瞳。
 口には出さないで、行動の端々に何かを感じさせる。
 違うな、綾波に似てるんだ…
 ピクッ!
 シンジが眺めていると、不意に猫の耳が動いた。
 なに?
 猫が顔を上げ、ふんふんと空気から何かを嗅ぎ取っている。
「山岸さん…」
「え?」
「寝袋から出て…」
 シンジの真剣な表情から何かを感じ取る。
「…なんですか?」
「わからない、けど普通じゃないみたいだ」
 寝袋をたたみ、念のために懐中電灯を手にする。
「碇君…」
「なにか、いる…」
 スイッチを入れる。
 猫の視線の先を追う。
「なに、あれ!」
「わからない、けどトカゲみたいだ…」
 それも大きい、50センチはあるだろう。
「4〜5…、もっといる!?」
 シンジはマユミに、手で下がれと命じた。
「うろの前に居て…」
「でも、碇君は?」
「大丈夫だよ…」
 そう言う声が既に震えている。
「火は、どうですか?」
「だめだよ…」
 ちらりとうろを振り返る。
「あっちの猫が興奮しちゃう、あの猫も子供を護ろうとしてるんだ」
 トカゲが動いた、地を這うように進んでいたのに、勢いに乗って立ち上がる。
「走って来る!?」
 武器らしい武器も無い。
 踊りかかるように、トカゲ達はシンジと猫に迫ってくる。
「碇君、これを!」
 マユミが手渡したのは、非常時用にと持って来ていたスタンガンであった。








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