NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':time 55 


「はああ…、つまんないわねぇ〜」
 伸びをする、今日の水着は黄色のワンピース。
「なんだよそれはぁ〜」
 カメラの向こうで、眼鏡が涙に曇っている。
「何って…、シンジが居ないからつまんないって言ってんのよ!」
 水着に不満の視線を送る。
「そうじゃなくてさぁ…、惣流、サービスって言葉知ってる?」
 ワンピースだが、サイドは紐で結んでいるので少しきわどい。
「あんたばかぁ?、なんであたしが目の保養に付き合わなきゃいけないのよ?」
 寄って来そうな男を、しっしと手で追い払う。
「準備できましたぁ!」
 ミズホが大きく手を振っている。
「あ〜あ、頼りになるのは信濃だけか…」
 白のビキニだ、下はパレオを巻いている。
 綾波と渚はなにやってんだよ…
 その後ろにはビーチパラソルとビニールシート、そこにはトウジとヒカリの姿しか見えない。
「遅れてるけど、そのうち来るんじゃない?」
「来なかったら、どうしてくれるんだよ?」
「知らないわよ、そんなこと」
 トホホ〜…
 ケンスケは涙で視界を閉ざしてしまった。


GenesisQ’ 第55話
イケてる2人


 すうはぁ…
 大きく深呼吸を試みる。
「よっし!」
 シンジは気合いを入れ直し、勢いよく戸を開けた。
「ただいまぁ!」
 数秒目を閉じて待ってみる。
 …あれ?
 しばらく待っても反応が無い。
「おかしいな?、誰もいないのかな…」
 気が抜けた。
「なぁんだ…、なに言われるかと思って恐がって損したな」
 上がり込む。
「さってとシャワーでも浴びて…」
「なんだ、シンジ君かい?」
 階段を降りて来る人影。
「カヲル君!、居たんだ…」
 カヲルは穏やかな微笑みを見せた。
「おかえり、シンジ君」
 何となく照れてしまうシンジ。
「あの…、ただいま」
 ニコニコとするカヲルに、何となく会話が途切れてしまう。
「…あの、みんなは?」
「海だよ、シンジ君を待ち切れなかったようだね?」
「そうなんだ…」
 シンジはほっとしたような、それでいてがっかりしたような気分になった。
「追いかけるかい?」
「え?」
「海だよ…、まだ間に合うはずだよ?」
 う…ん。
 シンジは考え込んだ。
 問い詰められ、お仕置きされる自分が居る。
 恐いよな、想像するだけでさ?
 ちょっと迷いを見せてしまった。
「疲れているのかい?」
「え?」
 トントンと降りて来たカヲルは、シンジの頬に手のひらを当てた。
「熱は無いみたいだね?」
 ひんやりとした手が気持ちいい。
「うん、電車の中で眠れるだけ寝て来たから」
「そうなのかい?」
 寝てないと恐いんだもんな、山岸さん。
 あうーっと、嫌味攻撃を思い出してしまう。
「ならちょうど良かった、シンジ君、買い物に行かないかい?」
「買い物?」
「そう…、また背が伸びたみたいでね?」
 そう言えば、最近カヲル君のシャツを僕が着ちゃってるもんな…
 お下がりが多くなっているような気がする。
「良いよ?、それぐらいなら付き合うよ、あ、でも…」
「なんだい?」
 ちょっとだけ不安そうな色を見せる。
「少し待ってくれないかな?、シャワー浴びたいんだけど…」
「ああ、シャワーなら、レイが」
「レイ?、レイは居るの?」
 ちょっと逃げようかと腰を引く。
「暑さにやられたみたいだね?、最近ずっと水に浮いてる…」
「そうなんだ?」
 でも、逃げてばかりもいられないよな?
 シンジははぁっと、意を決した。
「じゃあ、ちょっと待ってて?、レイに上がってもらうから…」
「そうだね?、気をつけるんだよ?、シンジ君…」
 僕も気をつけたいよ…
 何をどう問い詰められるかわからない。
 だがカヲルが差したのは、シンジの考えとは少し違う所だった。


 脱衣所。
 コンコンコンっと、曲げた指先ですりガラスを叩いてみる。
「レイ?、いるの?」
「う〜〜〜ん…」
 寝ぼけたような声が返って来た。
 お風呂場の中だからかくぐもっている。
「入りたいんだ、代わってくれる?」
「わかったぁ〜」
 ザバァッと上がる音。
 あっと、バスタオル持って来ないとな?
 シンジは一旦、脱衣所から出ようとした。
 ガラ!
 いきなり戸が開かれた。
 ええ!?
 レイが猫背の状態でのそりと出て来る。
 明らかに寝ぼけている。
「おさきにぃ…」
「う、うん…」
 バンッと壁に張り付いているシンジの前を通り。ぼたぼたと垂れる滴で床を濡らしながら去っていく。
 か、隠そうともしないなんて…
 しっかり見る所は見ていた。
 相当惚けているらしい。
「ま、まあいいや…」
 シンジは胸をなで下ろして、シャツを脱ぎに手をかけた。
 あれなら、僕にも気付かなかっただろう…し?
 ばたばたと駆け足で戻って来る。
 まさか!
「シンちゃん!?」
 がらっと開けられる。
「う、うわ!?」
 狙ったように、パンツを脱いでいるシンジであった。






「まったくもう!、レイってばいつもあんな感じだったの?」
 ぷりぷりと歩くシンジ。
「違うよぉ〜、みんな出かけちゃったから、カヲルだけだし良いかなぁって…」
 その腕に、甘えるように組み付くレイ。
「ふうん…、カヲル君だったらいいんだ、レイは」
「シンちゃあん!」
 道端で良くやるね?
 後ろを歩きながら苦笑する。
 ジオフロント側だ、人通りも多い。
「シンジ君?」
「なに?」
 自分には見せてくれない笑顔に、レイは「ううっ」と泣きそうになる。
「意地悪はそろそろやめにしてあげたらどうだい?」
「だって…」
 こくこくと頷くレイ。
「久しぶりにシンジ君に会えて嬉しかったんだよ?、それは僕も同じだからね…」
「え?」
「レイは海に行かなかった、それはシンジ君が居なかったからじゃないのかい?」
 がしっと、シンジの背中のシャツを握る。
「レイ?」
 背後を見ると、レイが見上げるようにうるうるしていた。
 しょうがないなぁ…
 シンジの苦笑に、ようやくぱっと明るくなる。
「わかったよ…」
「やったぁ!」
 パンッと手を叩いて喜びを見せる。
「けど!、今度からだらしないことはしないでよ?」
「うん!」
「まったく…、誰かに見られちゃったらどうするのさ…」
 ぶつぶつと言う呟きに反応する。
「それって、嫉妬してるの?、シンちゃん…」
「知らないよ!」
 真っ赤になって、先に行く。
「ごめんってばぁ!、冗談なのにぃ〜」
 だが少し嬉しそうなレイだった。






「カヲル君は、さ?、泳ぎには行かないの?」
 水着売り場だ。
「行きたいのかい?」
「みんなとは行ってないし…」
「シンジ君が行くのなら、当然着いていくよ?」
「そうなんだ」
 それなりに日焼けしているシンジに比べ、やはりカヲルの白さは異様に目立つ。
「外に出なかったの?」
「何故だい?」
「肌…、焼けてないし」
「気をつけているからね?、元々の体質もあるさ」
 ふうんっと、つい気の無い返事をしてしまう。
「シンジ君?」
「え、なに?」
「水着は、新調しないのかい?」
「去年のがあるからいいよ…」
「窮屈じゃないのかい?」
「え?」
「ウエストだよ、身長、伸びてるんだろう?」
 そう言えば…っと、シンジはカヲルの顔を眺めた。
「なんだい?」
「うん…、目線の高さが…、ね?」
「以前よりは近くなっているね?」
 その分、身長が伸びたと言う事だろう。
「そうだね?、買っておこうかな…」
 パラパラとハンガーにかかっている水着を遊ぶ。
「この辺なんてどうだい?」
 う〜ん…と、カーキ色のパンツを手にする。
「派手じゃないかな?」
「そうかい?」
 つっと、マネキンの方に視線を向ける。
「派手というのは、ああいうものを言うんじゃないのかい?」
 何を考えているのか?、股間もっこりのビキニパンツが飾られている。
「ははは…」
 そのボディービルダーのようなマネキンに汗してしまう。
「もっと地味な方がいいな…、僕は」
 身を屈めて、次を探す。
「じゃあこれは?」
 その背後から、のしかかるように手を出すカヲル。
「…カヲル君って、派手なのがいいの?」
「これでも普通な方だよ、シンジ君が地味過ぎるんじゃないのかい?」
「そうかな…」
 女の子達がひそひそと噂している。
「やだぁ、見て?、あの二人」
 これなんてシンちゃんにどうかなぁ?
 レイはその側で、シャツを広げ、自分の体に合わせていた。
 もちろん、後で譲ってもらう事も計算済みだ。
 ふふんだ、これってあたしだけの特権だもん…
 アスカやミズホのように、前後幅があるとその分、丈が足りなくなってしまうのだ。
 う、ちょっと空しいかも…
 つい自分の胸を押さえて、ブルーを入れてしまうレイだった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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