NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':time 55 


「ねえ、こっちなんてどう?」
「これはどうだい?」
「こっちこっち!」
 いい加減ネタ切れし始めている。
 だってろくなの持って来ないんだもん…
 げんなりとしている。
 でも負けるもんか!
 シンジはうんと言わない覚悟を決めていた。
「ええい、ならこれは!」
「これって…」
 今度は女の子用のワンピースだった。
「なに考えてんだよ、ねえ、カヲル君…」
「いいね?」
「え!?」
 がびーんっと、顔に縦線を入れてしまう。
「な、なに言い出してるんだよ!?」
「いや、なかなか似合うと思うけど?」
「そうそう、色もあたしのとお揃いだから」
「着てみてはどうだい?」
「って言うか、着ろって感じ?」
 ダンッと、シンジは試着室の鏡に背をぶつけた。
「嫌だよ、なに言ってるんだよ、正気に戻ってよ!」
「だぁめ☆、シンちゃんってこういうの似合うから…」
「一度試してみてもいいかもしれないね?」
「シンちゃんの撫で肩…」
「細い指」
「「下の…」」
 二人で頷き合う。
「さ、シンちゃん…」
「さ、シンジ君…」
「嫌だよ、誰か助けて、助けてよ!」
「あのぉ、お客様…」
 ようやく、シンジにとっての救いの神が現われた。
「試着したものは戻して頂かないと困るのですが…」
 助かった…
 シンジはほっと隠れてため息をついた。






「まったくもう、二人とも何考えてるんだよ!」
 結局シンジは、レイが始めに持って来た、ごく普通の水着を選んでいた。
「ごめんねシンちゃん…」
「つい…、ね?」
 二人ともちょっとだけ悪びれている。
「とにかく今日はもう帰るよ?、このままじゃ何されるかわかんないから…」
 本気で怒らせちゃった…
 舌を出す。
 ピクン。
 レイはちょっと反応して、足を止めた。
「…どうしたのさ?」
 振り返るシンジ。
「あ、うん、ベル…、アスカからみたい」
「ベル?」
 ポケベルだった。
「へえ…、レイってそんなのも持ってたんだ?」
「この間お母さまから貰ったの、電話だけだと捕まらない時があるからって」
「ふうん…」
 レイはきょろっと、場所を探した。
「ちょっと話して来るね?」
 店角の柱に向かって駆けていく。
「アスカか…、なんだろ?」
「気になるかい?」
「ちょっとね…」
 そこで携帯を取り出しているレイ。
 気にというよりも、少し恐い。
「でも今はカヲル君達の方が恐いからね?」
「少しはしゃぎ過ぎたよ、反省はしているさ」
「少しじゃないよ…」
 はぁっとため息。
「一体どうしちゃったのさ?、今日は変だよ?」
「いつもはアスカちゃんに止められるからね?」
 潰されるているとも言う。
「でも今日はまぁ…、シンジ君とも久しぶりのお出かけで、羽目を外してしまったのも本当だよ」
「そうなの?」
 照れて、赤くなって見上げる。
「シンジ君は…、寂しく感じなかったのかい?」
 カヲルは微笑みながら見下ろした。
「そんなには、ね?」
「そうなのかい?、山岸さんが一緒だったから?」
 シンジはギクッと固まった。
「どうして…、それを!?」
「みんな知っているよ?、レイは気にしていないようだけどね…」
 あああああっと、頭を抱えてしゃがみこむ。
「終わりだ、ぼく殺されちゃうよ…」
「大丈夫、僕が守ってあげるよ?」
 シンジは涙目でしがみついた。
「ほんと?」
「本当だよ、だから涙を拭いて…」
「うん、ありがとう…」
 ハンカチを受け取る。
 これじゃあまるで、別れ話をしているカップルのようだね?
 しかしカヲルの想像は当たっていて、周囲の目は好奇心に満ちている。
「あのぉ…」
 その内の、女子高生二人組みが話しかけた。
「渚さんですよね?」
「そうだよ?、君は?」
「あ、あたし三池中の浅田って言います!、こっちは里見」
 どうもと頭を下げる。
「あの…、今日はデートなんですか?」
 誰との?っと、シンジはキョトンとしてから気がついた。
 僕!?
「ち、違うよ、僕は…」
「そうだよ?」
 カヲルは抱きすくめて口を塞いだ。
 きゃああー!
 黄色い声が上がった。
「カヲル君!」
「さっきなんだかもめてたみたいですけど!?」
「行き違いでね?、いつ海に行くかでちょっと…」
「あ、いつ行かれるんですかぁ!?」
 まったく!
 シンジは赤くなりながらも怒っていた。
 二人が離れていってから、シンジはカヲルの腕に手をかけた。
「なに考えてんだよ、まったくもう…」
「デートに見えるものなんだね?、僕とシンジ君で…」
「カヲル君だから…、じゃないの?」
「シンジ君と、だからだよ」
 耳に吹きかかる息に赤くなる。
「ま、またそんなこと言って…、薫ちゃんに言っちゃうよ?」
「い、嫌だね、シンジ君は…」
 目に見えてカヲルの態度が硬化した。
「シンジ君まで、僕と薫の関係を疑うのかい?」
「なにかあったの?」
「ないよ、ないさ…」
 あったんだな?
 カヲルの泳ぐような目を初めて見る。
「僕にはシンジ君、ただ一人で十分だよ?」
 シンジは振り仰ぐようにカヲルを見た。
「ねえ?」
「なんだい?」
「それって、後ろを見ても言える?」
 ちょんちょんとつつかれる肩。
 嫌な予感を覚えながらも振り返るカヲル。
「カヲル君…」
 うるうると見上げる薫が居る。
「ど、どうしたんだい?、こんな所に…」
 その向こうで、ペロッと舌を出しているレイ。
「電話したらここに居るって言うから呼んでみたの」
「ず、ズルくなったね?、レイ…」
「おかげ様で」
 にこっとカヲルの脇をすり抜けるように、シンジの腕を取って盗んでいく。
「じゃ、あたし達もうちょっと遊んで帰るから」
「レイ!」
「カヲル君!」
 引き止められて困ってしまう。
「シンジくぅん…」
 シンジはたははっと困った顔で、レイにずずずっと引きずられていく。
「…いいのかな?」
「楽しそうだし、良いと思う」
 シンジが振り返ると、カヲルは一生懸命機嫌を取っている所であった。






「シンちゃん、お金持ってる?」
 ジオフロントを出ると、もう日は暮れかけていた。
「戻って来てそのままだからね?、そんなにはないよ…」
 シンジは歩道を、レイは縁石の上を歩いている。
「ならレストランでお食事!、ってわけにはいかないかぁ…」
 あまり残念そうな感じは無い。
「水着も買っちゃったしね?、あ、カヲル君の服、買うの忘れたな…」
 レイもクスッと笑う。
「明日でいいんじゃない?」
 また明日も来るのか…
 ちょっと考える。
「あ、じゃあ今度はカヲル君をからかうのもいいかもしれないね?」
「うん!」
 トンッと降りて、シンジに組み付く。
「そういえば、さ?」
「なに?」
「アスカ、なんだったの?」
 レイの頬がブウッと膨れた。
「レイ?」
「二人っきりの時は、そういうの無しって教えなかったっけ?」
 教えてもらったっけ?
 思い返す。
「ごめん…」
「う〜ん、もうちょっとデートの回数多くしないと、ダメかなぁ?」
 レイは期待するようにシンジに尋ねた。
「慣れろ…、ってこと?」
「一生に勉強しましょうって事!、だって…、デートの時の甘え方って知らないんだもん」
 甘えるレイか…
 そこらにいるバカップルを思い浮かべる。
「…レイはともかくとして」
「なに?」
「僕に、そんなのしろって言うの?」
 似合わないかな?
 似合わないよ…
 目で確認してしまう二人であった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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