NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':58 


 そして一方、レイは運動場の隅をきょろきょろとしながら歩いていた。
「ん〜、この時間だとこの辺りだと思ったんだけどなぁ…」
 ふと見る。
 がさり!
 薮そのものが動いた。
 ジーッと見つめるが、動かない。
 そっと視線を他へと向け…、バッと戻す。
「あ…」
 立ち上がろうとしていたケンスケは、バツが悪そうな顔をした。
 全身に草葉で覆い、カモフラージュしていたのだ。
「ちっ、見つかるなんて!」
「…目立つって、それの方が」
 レイは呆れ返った目で苦笑いを浮かべた。






「さあシンジ様、二人で愛のウサギ小屋にぃ!」
「って、予想通りのことしてんじゃないわよ!」
 ガスッと即行で蹴り倒すアスカ。
「ひ、酷いですぅ、アスカさん!」
 あうあうっと涙ぐむミズホ。
「あんたそんな着ぐるみ、どっから持って来たのよ?」
 ウサギの着ぐるみだ、ぼてっとでかい。
「うう…、転がっていたので借りたんですぅ」
「転がってたって、どこによ?」
「伊吹先生のロッカーですぅ、先生は「ほんとは猫の方が先輩の好みなんだけど」って、良く分からない事をおっしゃっておられましたけど…」
 ほんと、どういう意味かしら?。
 一瞬本気で考えてしまう。
「まあ、いいわ…、で、シンジを誘惑しに来たわけね?」
「ですぅ!」
 ミズホは嬉々として夢見モードに入った。
 シンジ様?
 ミズホ、僕の可愛いウサギさん☆
 そんな、ああ、だめですぅ。
 さあ、いま干し草のベッドを用意してあげるからね?
 ミズホをこんなところに押し込めてどうなさるんですかぁ!?
 ミズホは今日からこのうさぎ小屋で暮らすんだよ?
 そんなぁ…
 さあ、ミズホには今にんじんを上げるからね?
 にんじんは嫌いですぅ!
 だめだよ好き嫌いしちゃ…
 ふええ〜ん、シンジ様ぁ!
 さ、ミズホ、美味しいからね?
「ああ、シンジ様が、ニンジンを、ニンジンをーーー!」
「って、電波ってんじゃなわよ!」
 ゲシゲシッと蹴っ転がす。
「ふみーーん!、アスカさん乱暴ですぅ!!」
「あんたが壊れるからでしょうが!」
「想像するぐらいいいじゃないですかぁ…」
「だったら声に出すんじゃないわよ!」
「みゅう…」
 怒られいじけて、生ニンジンをカシカシとかじってしまう。
「で、アスカは何をしに来たの?」
 ようやくシンジは声を出せた。
「あ、そうそう、忘れる所だったわ?」
「なに?」
「シンジ、あんたウサギね?」
「へ?」
「にっぶいわねぇ…、大会に参加しろって言ってるの!」
「本気!?」
「そうよ!」
「そんな!、勝ち残れるわけないよ、やめとこうよぉ…」
「なんでそんなことわかるのよ?」
 シンジの意味ありげな横目の先を追う。
「あいつら!?」
 浩一と、その机に腰かけてニヤついているカヲルが居る。
「なんだか妙に結束しちゃってて、強そうだし…」
「…大丈夫よ、策は練るから」
「さ、策って…」
「いいから!」
 シンジの耳を引っ張って囁く。
「あんたは黙って逃げ回ってりゃ良いのよ」
「それって、アスカと組むって事?」
「ダメですぅ!」
 ぐいっとシンジを取り返すミズホ。
「シンジ様はわたしのご主人様なんですからぁ!」
「あんたいい加減その妄想から離れなさいよ!」
 ご主人様辺りの単語に反応して赤くなっている。
「それに、ウサギになって逃げ回るのはシンジだっつってんでしょうが!」
「ふえ?」
「あんたはあたし達と一緒に待ってりゃ良いの!、わかった?」
「…う〜んと」
 何やら考え込む。
 考え込む。
 にぱっと明るくなる。
「わかりましたぁ!」
 何を想像したのかしら?
 なにを思い付いたんだろう?
「くすくすくす、シンジ様ったらぁ☆」
 ぶつぶつと入り込んでいるミズホに、危ない…と脅えてしまう二人であった。






 そして翌日。
「なんだこれ!?」
 シンジは手渡された「公式ユニフォーム」に驚いていた。
 エグいハイレグカットに網タイツ。
 頭に付ける飾りの耳。
「本気ですか?」
 思わず尋ねると、真剣な瞳で大会役員に頷き返された。
(思い付きだったんだけどなぁ…)
 言い出したのは加持だった。
「一般生徒に紛れて隠れられないよう、また不参加の生徒が巻き込まれないようにする配慮から、男女同じ「目立つ」服装をしてもらいます」
「男女って言ったって…」
 逃げる側に女の子の姿が見えない。
 そりゃそうだよな…
 男性側のメンツを見れば、その気持ちも分かろうと言うものだ。
 正視に絶えないウサギの群。
 特に体育会系は凄いや…
「まあまあ、シンジ君」
「カヲル君…」
「彼らに比べると可愛くていいんじゃないのかい?」
「嬉しい事じゃないよ、それ…」
 タイツからすね毛がはみだしているような、やたらと筋肉質でごつい奴等と比べられても。
「捕獲されなければオーケーだからね?、彼らには腕力と言う名の武器があるのさ」
 冗談のつもりだったんだけどなぁ…
 そう校長室で呟いているのは加持だ。
「だからって…」
 空手部辺りは、とんでもないことになっている。
「ん、どうしたんだい?」
「あ、うん…」
 シンジはちょっと首を傾げながら尋ねた。
「今思ったんだけど…」
「なんだい?」
「優勝した後って、みんな誰と温泉に行くつもりなんだろ?」
 ギシッと固まるその場の空気。
 勇気があるねぇ?、シンジ君は。
「ねえ?、どう思う?」
 シンジはその雰囲気に、まるで気がついていなかった。






「さってとぉ、レイ、似合うじゃない?」
「ありがと☆、アスカもね?」
 一方こちらはハンターサイドだ。
 全員迷彩柄のハンティングスーツに着替えている。
「『エモノ』についてはこちらで用意した物の他、持ち込みも自由ですので…」
 メガホンをもって、そんな注意事項を読み上げている生徒会役員の姿が見える。
「それでは5分後に…」
 アスカ、行くわよ?
 アスカは支給品のM−16を抱え直した。


「それではウサギさん、それにハンターさん、用意はいいですね?、では…、位置について」
 運動場のド真ん中にウサギは集められている、それを校舎へ向かって追い立てるようにハンターは位置していた。
「ようい、ドン!」
 うわぁ!っと、獰猛なウサギさん達がシンジに襲いかかった。
「なんで!?」
「死ねやぁ!」
 ぶんっと振り回された腕がブロックによって防がれた。
「トウジ!?」
「シンジ!」
 トウジが守ってくれてる?
 わけがわからず戸惑ってしまう。
「ええから早よ行け!、わしはこのためにここに居るんや!」
 くっと振り切るシンジ。
「ごめん、後は頼むよ!」
「任せんかい…、どわわわわ!」
 しかし数が多過ぎて押さえ切れない。
「あかん!、このままやと…」
「鈴原!」
 ベシ!
「くはぁ!」
 トウジの顔面に、暴徒鎮圧用の特殊ゴム弾が炸裂した。
「死ぬで!、マジで!!」
 その割には元気に復活している。
「おおー痛ぁ、誰やねん、無茶しおるわ…」
「す〜ず〜は〜ら〜…」
 そんなトウジの上に影が落ちる。
「うげ、ヒカリ!?」
 ベレー帽姿と鬼のような形相が、スワット以上の迫力を見せつける。
「こらっ、鈴原!」
 ぐいっと胸倉をつかみ上げる。
「な、なんや!?、今日は別に悪いことはしとらへんで!?」
「じゃあなんのつもりで、こんな大会に出てるのよ!?」
「そ、それは!?」
 つい言いよどんでしまった。
「ほらごらんなさい!、さあ、白状してもらうわよ?」
「な、なにがやねん!?」
「とぼけないで!、どうせ誰かに捕まってイチャつかせて貰おうと思ったんでしょ?」
 もう、しゃあないなぁ☆
「なぁんて、鼻の下伸ばして!、違う!?」
「そ、そんなん誤解…」
「誤解もフナ虫もないわ!、さあ…、きりきり白状してもらいますからね!?」
 ふふふふふ…
 あかん、目が逝ってしもうとるで…
 トウジは力無く涙し、逆らう事の無力さを感じた。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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