NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':72 


「博士、これなんですかぁ?」
 それとなく額に指を当てるリツコ。
「一応わたし、先生よ?」
「でもでもぉ、そこはかとなく…な博士って感じですしぃ」
 ピクッと小さく頬が引きつる。
「その…の部分、もう少し大きな口調で説明してもらえるかしら?」
 目が恐い。
「…な」
「ん?」
「アレな…って、だからドリドリは嫌ですぅ!」
「何やってんの?、あんた達…」
 理科準備室に入るなり、ミサトは吐き気の他に頭痛も覚えた。


GENESIS Q'72
「世界で一番「UN」のいい奴ら」


「助かりましたぁ」
 ほっと胸をなで下ろすミズホ。
「信濃さんも、今日はなに?」
「はいぃ、実は博士から新発明のメールを頂きましてぇ」
「リツコ…」
 ポンと肩を叩く。
「なに?」
「あんたとうとう…」
「人体改造は、まだよ?」
「まだ、ね…」
「ええ、ほんと惜しいわ?、直接改造した方が効率良くて好きなのに」
 その含み笑いに身の危険を感じるミズホ。
「あのぉ、そろそろお話を」
 あまり聞くのも恐いんですけどぉとは心の声。
「今日はモニター役のあなたに意見を聞こうと思ってね?」
 横目のミサトは、リツコに貰った鎮痛剤を服用している。
「例のごるでぃおんキャロットなんだけど」
「お空を飛べるんですかぁ!?」
 ボードに描かれた絵に驚喜する。
「秘密エネルギーを質量に変換して放出する反動で飛べるんだけど、問題があるのよ」
「はい?」
「…初速の段階でいきなり音速を突破しちゃうのよね?」
「あのぉ、耐G装備は…」
「あのスーツ、顔が丸出しだから」
「欠陥商品…」
 ポツリと漏らした言葉に沈黙が落ちる。
「顔が隠れると…、可愛くないでしょう?」
「…そう言う問題じゃないでしょ?」
「可愛くないとダメですぅ」
「あ、そ…」
 力無く黙るミサト。
「とりあえず水、陸、空のうち物になったのは陸上だけね?」
「水も空と同じ理由なのね…」
「でも陸上と同じで水上ならOKよ?」
 カカッとボードに書き加える。
「秘密エネルギーをコンデンサーによって電力変換、これによりごるでぃおんキャロットをホバー化して…」
「って、ミズホちゃんを乗せる気なの!?」
「当たり前でしょ?」
「ダメよ!、元担任として認められないわ」
「越権行為よ」
「保護者に連絡します」
「無駄ね?、これは承認済みだから」
「アスカやレイならともかく、信濃さんには無理よ!」
「あのぉ、それはどういう意味ですかぁ?」
 ミサトはフッと鼻で笑う。
「見えるようだわ、スロットルを回した途端に、弾丸のように一直線に飛んでいく姿が」
 カタカタと突然キーボードを叩き出すリツコ。
「出たわ…、その可能性、そんな400%を越えるなんて!」
 驚愕。
「理論上あり得ない事だわ…」
「でも事実なのよ、受け止めて」
「そうね…、これならキャロットミサイルでも作った方が」
「え〜、だめなんですかぁ?」
 指を咥えて残念そうに。
「…あ、そう言えばあなた、寝てなくていいの?」
「え?」
「保健室じゃなくてこっちに来たって事は、そうとう辛いんでしょ?」
「…お見通し?」
「葛城先生、お顔赤いですぅ」
 ミサトの額に手を当てるリツコ。
「…解熱剤もいるわね、伝染病?」
「何でそうなるのよ!、…くっ」
「ちょっと、吐くなら外で吐きなさい」
「冷たいわねぇ…、調子悪くてさ、市販品じゃ効かないのよ」
 何も危ない薬ばかりではなく、リツコは通常より強めの薬も常備している。
 もちろん薬物取締法など眼中にない。
「ほんとはすぐ帰るつもりだったんだけど」
 ちらっとミズホを見る。
「いくらなんでも、ほっとけないでしょ?」
「残念ながらまだ人の道は踏み外してないわよ」
「またまた、まだ、ね?、…どこに電話してるの?」
「加持君よ」
「げぇ…」
「その調子じゃ自分で帰れないでしょ?、あ、加持君?」
 まぁ加持にもミズホちゃんに注意しておいてもらわないとねぇ…
「寝てるわぁ」
 ミサトはふらふらと出ていった。






「おう、シンジぃ」
 校門まできたシンジは、見なれた一同にキョトンとした。
「あれ?、みんなどうしたのさ…」
 それとは対照的に、レイはチッと舌を打つ。
「どや?、久々に」
「ゲームだよ、お前最近付き合い悪いぞぉ?」
「あ、ごめん…」
 一応レイに確認を取る。
「あの、いいかな?」
「いいけどぉ、あたしも…」
「あたしも行くわよ!」
 へ?
 一同一斉に振り返る。
「アスカ?」
「まさか嫌とは言わないでしょうねぇ?」
「別にいいけど…、いいよね?」
「かまへんかまへん」
「珍しいなぁ、そう言えば洞木は?」
「ヒカリなら委員会よ」
「ああ、文化祭の?」
「体育祭もよ」
「大変なんだなぁ…」
「まあいいから行こうぜ?」
「そやなぁ、…どないしたんや、シンジ?」
「ん…、ちょっとね?」
 ちらちらと後ろの二人を盗み見ている。
「惣流か?」
「初めてだよねぇ?」
「キャッチャーかなんかじゃないのか?、欲しい人形があるとか」
「そうか、そうかもね…」
 だがそれでもシンジは首を捻る。
 あたしも!
 …やっぱり変だよなぁ?
 そこにはいつもの不敵さよりも、慌てる印象の方が強かった。






 保健室。
「よぉ、葛城ぃ!、腹下して調子悪いんだって?、とうとうカレー以外のもんでも作ったのか?」
 ベッドから起き上がるミサト。
「ん〜、加持ぃ?」
「なんだ…、ペンペンのサバでも食ったのか?」
「なによそれぇ…」
「いや、葛城ならペンペンの捨てた魚も「もったいない」って拾いそうだからな?」
 苦笑した加持も気付かなかったが、ほんのわずかにミサトは引きつる。
「まあいいさ、病院は?」
「ん〜、明日まで待つわ…」
「おいおい、いいのか?」
「さっきリツコの薬、飲んじゃったのよ…」
 薬事法には引っ掛かりたくない。
 検査をされれば分かってしまう。
「そうか、なら送ってやるから…」
「頼むわ…」
 ふらりと起き上がるミサトを怪訝に見る。
「…なによ?」
「いや…、やけに弱々しいなと思って」
「たまには、ね…、余裕ないって言うか、頭がはっきりしなくて…」
「リッちゃんの薬にやられたんじゃないのか?」
「そうかも…」
「あなたたち…」
 ひくっと引きつる。
 二人の背後にはいつの間にやらリツコが立ち、その手に持った注射器からは、謎の液体がちゅうっと出ていた。






「…アスカ、アスカってば!」
「へ?」
 ぼけた返事をレイに返す。
「もう!、なにボケボケッとしてるの?」
「してないわよ!」
「嘘!、じゃあ今なに話してたか覚えてる?」
 うっとアスカは言葉に詰まった。
 全く聞いていなかったからだ。
「正解はぁ…、アスカを呼んでたから話なんてしてない、よ?」
「あんたねぇ…」
 からかわれた事にようやく気がつく。
「アスカ、変…」
 レイは心配そうに覗き込んだ、不機嫌にはなっても怒らなかったからだ。
「さっきから俯いてばっかりだし、顔を上げたらシンちゃん睨んでるし、どうかしたの?」
 心が体の中に入っていない。
「別に…」
「って顔してないけど…」
 それに…、と分析する。
 珍しい不安げな瞳。
 それ以上に自信の無さを感じる。
「アスカ…」
「なんでもないっての!」
 アスカは悩んでいると言うより、自分の心を持て余していた。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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