NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':81 


「なんでこうなるんだろ?」
「ははは…、ちょうど良い所に来たからね?」
 しかしクニカズの笑いは乾いている。
「すみません、お邪魔しちゃって」
 シンジは丁寧に頭を下げた。
 呉服屋である。
「あ、ほらこれ!、これってアサガオかな?」
「ユリってのもいいわねぇ、でもあんた、もうちょっと何とかなんないの?」
「なにぃ?、アスカあたしのセンスに文句があるの?」
「あんた青ばっかりじゃない!」
「そういうアスカだって赤ばっかりでしょ!」
「…わたしはぁ、紺が捨てがたいですぅ」
「「地味ぃ」」
「うう…」
 やはりこういう場所で女の子がこれだけ揃えば騒がしくなる。
 それはお店の人の口元が引きつるほどに。
「でも高いんだぁ、着物って」
「当ったり前じゃん!、ミズホにはもったいないわよ」
「いいなぁミズホ、お母様ってミズホに甘くない?」
「いいじゃない、どうせあんたには似合わないわよ」
「ひっどーい!、それはアスカでしょう!?」
「なんでよ!」
「アスカってお尻大きいし胸も大きいから、こういうのって似合わないじゃない!」
「小さくて良かったわねぇ!、ほらミズホも何とか言ってやんなさいよ!」
「はいですぅ!、胸とかお尻とか、そんなことよりも最近ウエストサイズ変えませんでしたかぁ?」
「きゃあああああああああ!、それあたしのスカートのことじゃないのぉ!」
「ふ、ふえ?」
「ふえ?、じゃないわよこのバカ!、あんただって丁度いい感じだからって勝手に借りてくくせに!」
「ぷっ、ミズホって胸もお尻も、胴回りもアスカと同じなんだ、背小っちゃいのに」
「典型的な日本人体格なだけですぅ!、レイさんみたいに発育不良は起こしてません!」
「言ったなぁ!、言っちゃいけない事を言ったなぁ!?」
「ついでにアスカさんは最近食べ過ぎで太っちゃったんですぅ!」
「きゃああ!、バカ!、なんてこと言うのよ!」
「くす、あたしは食べても太らないんだぁ、なんて言ってるからよね?」
「あんただって同じでしょうが!、しかも行くとこに栄養行ってないし!」
「ひっどーい!、それならアスカだって無駄なとこに回ってるくせに!」
「行ってないわよ!」
「行ってる!」
「行ってない!」
「ふっ、しょせん普段からの姿勢が物を言うんですぅ」
「「ミズホが言えるようなことじゃないでしょー!」」
「なんてこと言うんですかぁ!、やはりぃ、お淑やかな女性とはぁ」
「あんたのどこが淑やかなのよ!」
「アスカってばがさつぅ」
「きー!、むかつくわねぇ!」
「お母様はぁ、わたしにご期待なされているから可愛がって下さってるんですぅ!」
「「むかつく事言うなぁ!」」
「わたしにシンジ様の、シンジ様のぉ!」
「なにトリップしてんのよ!」
「これは将来家族となるわたしへのお心遣いですぅ!」
「…シンジに弟でもできたら、そう言うことにしてあげるわ!」
「シンジ様の弟…、じゅるっ、はっ!、いけませんシンジさまっ、わたしはもうシンジ様の弟様の…、ああでもシンジ様でしたらぁ、はううううう!」
「…悶えてる」
 さすがにこれには引いてしまった。
「って言うかぁ、脳が腐ってる?」
「はうううう」
「生地痛んじゃうんじゃない?」
「あ、ミズホ涎つけちゃダメ!」
 なにやってるんだろう?
 シンジはちょっとだけ離れて、ごく自然に他人の振りをする奈々の側に歩み寄った。
「あの…、ごめんなさい」
「なにがです?」
 奈々は生地を膝の上に置いた。
「なんだか、迷惑かけてるなって、思って…」
「お気になさることはありませんし…、それに騒いでいるのは」
 ちらりとミズホ達に目を向ける。
「はは…、そうなんだけど、でもやっぱり」
「人の事まで謝られるのは、家族だから、ですか?」
「え?」
「他人ではないから?」
 値踏みするような目を作る。
「そ、そんなにおおげさなもんじゃ…」
「では?」
「いつも一緒にいるから…、癖、なのかな?」
「そうですか」
 奈々はにこっと微笑んだ。
「あー!、シンジなにでれでれやってんのよ!」
「シンちゃん!」
「うー!」
「ち、違うよ、誤解だよぉ!」
 そんな四人に更に微笑む。
 他人ではないのですね…
 アスカ達を含めた輪が自分であると感じているから、彼女達の行動についても責任を感じている。
 奈々はそう解釈した。
「うらやましい?」
「そうですね」
「そっか」
 奈々は頷きクニカズは微笑んだ。
 でれでれとはしていないが、シンジはそんな奈々を気にしていた。
 なんだろう?、好き合ってるとか、そんなんじゃなくて…
 二人の雰囲気が、はまって見えるのだ。
 シンジにはそれがとても羨ましい。
「シンジ君は行かないのか?」
「着いていけないし…、僕、ああいうのってわからなくて」
「やっぱり女の子の買い物に男の出番は無いって事かな?」
「そうですね」
 シンジはクニカズという男に、若干の緊張を感じてしまっていた。
 …なんだか、ちょっと違うや。
 自分の知っている人達とは何処か違う。
 加持の様にあけすけではないし、冬月のように穏やかでも無い。
「なにか聞きたい事でも?」
「あ、いえ…」
 慌てて俯く。
「あのさ…、そうやって護魔化してるのは、なにか聞きたい事があるっていってるのと同じだよ?」
 図星を突かれて赤くなる。
「さしずめ、僕とミズホちゃんのこと、とか?」
「え!?、あ、そうじゃなくて!」
「ほら、やっぱりなにかあるんだろう?」
 ニッと言うえみにはめられた事を悟る。
「あ…」
「ほら、なんだい?」
「…あの!」
 シンジは思い切った。
「あの、クニカズさんと小和田先輩って、どういうご関係なんですか?」
「っと、僕と奈々!?」
「はい!」
 本気か?、と言う様な目でシンジを見る。
「ただの親戚だけど…、シンジ君」
「はい?」
 肩にポンと手を置く。
「やめとけ」
「は?」
「これ以上女の子に手を出してると、そのうち刺されるぞ?」
 耳まで赤くなるシンジ。
「ちちち、違いますよ!」
「違うのか?」
「残念ですね…」
「そんな!、小和田先輩までからかうなんて酷いや…」
 くすくすと笑われて小さくなる。
「僕はただ…、クニカズさんと奈々さんって、不思議だなっと思って」
「不思議?」
「そんなに親しそうじゃないのに…、一緒に居て、すごく自然に見えるんです、落ちついてて…」
「ああ、そういうとこか」
 顎先を撫でる。
「先輩も警戒してない…、って言い方変ですけど、ミズホも、アスカ達だって、人前だって事気にしてないし、どうしてですか?」
「まあ、ね…」
 そうだな、とわかりやすい例を考える。
「…僕は医者を目指してるんだ」
「はい」
「だから女の子の裸も、結構見てる」
「はあ…」
「でも医者がその度に欲情する?、しないよな?、それはわかる?」
「はい…」
「でもそれは見慣れてるからじゃないんだよ、僕が、医者になろうって事を頭に置いてるからさ、相手は病人なんだってね?」
「…同じことだって言うんですか?」
「シンジ君は頭がいいけど、結論を急ぎ過ぎるな?、どうしてだ?」
「え、そうでしょうか…」
「ま、いいか…、それで続きだけど、僕だって男だから欲情する、当然奈々だって女の子だからそう言う事を感じさせられることだってあるし、ミズホちゃんだって可愛いからね?、好きだって言ってくれたら…、なんて考えるさ」
「そうなんですか!?」
「そりゃそうだよ…、って言うか、男なんてみんなそうじゃない?、相手は医者だからって胸を見せてくれてる、萎えるよな?、だから興奮しない、でも裸の女の子が迫って来たら?、そりゃ嬉しいよ」
 シンジは困惑した、話しが生々し過ぎて。
「でも相手にその気が無いのにそれを考えるのは単に嫌らしいよな?、否定はしない、でも抑えなくちゃいけない、そしてそれを押さえるのが理性だって思ってる」
「理性…」
「良く言うだろ?、下半身は正直だって」
 にやっと笑う。
「でもだからって女の子を襲う?、だめだって分かってるから我慢しようとする、それが理性だよ、そして理性を手に入れるためには、色々と物事を分析するんだ」
「分析…」
「ミズホちゃん…、可愛いけど、それは恋をしてるからさ」
「恋…」
「でも相手は誰だ?、誰のために可愛くなろうとしてる?、その子を泣かさないためにはどうすればいい?、それが分かってるなら、あとはその理性に従うだけさ」
「だから安心できるんですか?」
「まあ…、危なくないって、警戒心が緩むのは間違い無いけど」
 自嘲気味の笑み。
「でも男としては悲しいかな?」
「え?、どうしてですか?」
 良く悩むシンジとしては嬉しい考えなのに。
「女の子には積極的になれないんだよなぁ…、どうしても好きだって言う気持ちが沸かないんだよ、この子は友達として見てくれてるからそうしよう、なぁんて護魔化してる、好きって気持ちを」
「気持ち…」
「情けないだろ?、ほんとうは好きなくせに、その気持ちを潰してるのさ、僕は振られる心配ばかりして、一緒にいられる幸せを想像して浮かれられないのさ」
「それって…、いつ嫌われるか分からなくて恐いって事ですか?」
「当たり、あんまり人に薦められないようなことだよ、わかるだろ?」
 シンジはどう答えたらいいか分からない。
「でも知りませんでした、クニカズさんがそのように見てらっしゃったとは…」
「奈々も婚約者が居るだろう?、おばさんの決めた人だけど、ね?」
 その間にも、女の子達はヒートアップしていた。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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