NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':87 


「空中庭園って言ったって…」
 シンジは物凄い違和感を感じた。
『だー!』
 マイク片手に司会のお姉さんが「たぁすけてぇ!」なんて叫んでいる。
 特設ステージでは三色の奇麗な爆発が上がり、全身タイツに近いものを着た怪人達が走り回っていた。
「あー、秘密戦隊エヴァンゲリオンショーですぅ」
「…ミズホ、詳しいね?」
「ちっがーう!」
 シンジはなんだか聞き覚えのある声に目眩いを感じた。
「エヴァンレッドのポーズはそうじゃないっ、手首の角度は三十度だ!」
「ケンスケ…」
 そう、お子様に混じって熱弁を振るっていたのはケンスケだ。
「なにやってんだよ…」
「え?、なんだシンジじゃないか」
 まずいとこを見られたとばかりに赤くなる。
「いやちょっとな…、そっちはデートか?」
「そ、そんなぁデートだなんてちょっとお買い物というかシンジ様にプレゼントして頂いてそのまま流れるように夕食の後、「ミズホ」なんて急に手を取ってぇええええ!」
「…違うのか?」
「デートです!」
「いや、鼻息荒くされてもさ…」
 ふんふんと噴き出される度に鼻が大きくなっている。
 それはそれとして、シンジも気が気では無かった。
 こないだ怒らせた所だもんなぁ…
 なるべく刺激しないように探りを入れる。
「ケンスケはなに?、これも趣味の一つ?」
「まさか!」
 じゃあさっきのは一体…
 余計に分からなくなる。
「俺はバイトの紹介だよ、ほら」
 顎で指し示す。
 舞台の上にはこのくそ寒い上に風の吹きすさぶ中、やたら露出度の高いボンテージ服を着た少女が、鞭をピシピシ高笑いを上げていた。
「マナ…」
『ほーっほっほっほっ!、決着を付けてあげるわ、エヴァンレッド!』
「わぁ、マナさんですぅ!」
「ミズホぉ…、手を振るのはやめとこうよぉ」
「ふえ?、どうしてですかぁ?」
「いや、なんとなく…」
 巻き込まれそうな気がして、とは口にしない。
『お前達!』
 ビシッとマナは部下に命じる。
『あの者達を人質にするのよ!』
『イー!』
「えええええ!?」
 シンジは逃げようとしたが、やたらと動きのいい着ぐるみ怪人に取り押さえられた。
「あ、離して、離してよぉ!」
「シンジ様ぁ!」
『すまんシンジ、わしはお前を捕まえなあかん、あかんのや!』
 なにやら聞き覚えのある声が耳に入る。
「トウジ!?」
『霧島、パスや!』
「ナイスよ鈴原君!」
 一瞬声が素に戻る。
『さあエヴァンレッド!、この少年の命を助けたければおとなしくしなさい!』
「うわわわわ!」
 首根っこに腕を回してシンジを確保する。
 シンジは顔に胸が当たってドキドキだ!
「ああっ!、シンジ様が!?」
「シンジぃ〜、なんておいしい」
『おのれ卑怯ものめ!』
『何とでもお言い!』
 マナもマナで、ここぞとばかりにシンジを弄ぶ。
「マナ、やり過ぎじゃないの!?」
「あん☆、シンちゃんったら、あ・と・で・♪」
「あああああ!、シンジ様のピンチですぅ!?」
「ああっ、信濃待てって!」
 ミズホは子供を書き分けて舞台に「んしょ」っと這い上がった。
「シンジ様にいたずらをする性悪女!、エヴァンレッドに代わってお仕置きしちゃいますぅ!」
 わーっと子供達は喜びはしゃぐ。
「ちょ、ちょっとミズホってばこれお芝居なんだから!」
「もう無茶苦茶だぁ!」
 マナとケンスケは焦りまくる、本来は子供を人質にする予定だったのだが、泣き出される可能性もあったのでマナはシンジを選んだだけだったのだ。
 もちろん、私欲も多少は混ざっていたが…
「とう!」
 ミズホは跳んだ。
 くるっと回転。
 BOMと膨らむ。
「「はぁ!?」」
「しろまんじゅうー、きぃーっくですぅ!」
 丸い物体からピョコンと足だけが出て、見事マナを蹴飛ばした。
「あーーーーー!」
 倒れるマナと巻き込まれるシンジと壊れるセットと下敷きになるエヴァンレッド他怪人達。
「今の内ですぅ!」
「あああああああ…」
 シンジは白兎に担がれながら、ひたすら心の中で謝っていた。
 とりあえず、逃げていく巨大なウサギに、お子様達は大喜びではしゃいでいた。


「おっそーい!、何処行ってたのよ!?」
「いや、ちょっと…」
 説明する気にもなれない。
「面白かったですぅ!」
 ミズホだけはご満悦だ。
「ねぇねぇシンちゃん、これとこれ!、シンちゃんこういうの好きでしょ?」
「あんたバカぁ?、シンジの趣味に合わせてたら地味になるに決まってるじゃない!」
「いいじゃなぁい、シンちゃんが可愛いって思ってくれれば☆」
「そんな事ばっかり言ってるから、『平常心』とか『大和魂』なんてプリントしたシャツを着る事になるのよ!」
「…ほっといてよぉ」
 いじいじといじける。
「はいはい、じゃあこれとこれ、支払い頼むわね?」
「あ、あたしもぉ」
「はぁ…」
 シンジは押し付けられた服に溜め息を吐いた。
「あ、手伝いますぅ」
「うん頼むよ」
「はいですぅ!」
 ミズホの頭の中では「彼に選んでもらったの?、お似合いよ?」なんて言われて赤くなっている初々しい二人が居たりするのだが、もちろんデパートの店員がそんなに愛想良かったりするわけがない。
 少々期待外れながら、カウンターから離れて洋服のつめられた紙袋を二人に渡す。
「さってと!、良いもの買ったし、そろそろ帰るわよ?」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
 シンジは焦り、尋ねた。
「ミズホはいいの?」
「ふきゅ?」
 流れのまま帰ろうとしていたミズホは首を傾げた。
「そう言えばそうね?」
「ミズホは欲しい服ってあるの?」
 二人もはたと思い出す。
「はぁ、でもぉ…」
 上目づかいにシンジを見る。
「どうかしたの?」
「アスカさんとレイさんのだけでぇ、おばさまから頂いたお小遣い、無くなっちゃってるんじゃないですかぁ?」
「え?」
「そうなの?」
 シンジはポリポリと頬を掻く。
「まあ…、元からのお小遣いだってあるし」
「そうよ!、シンジなんかに遠慮すること無いわよ」
「僕なんかにってなんだよぉ」
「人の誕生日すっぽかしたくせに」
「うっ…」
 まだ根に持ってるのか。
 げんなりとする。
「あ、でしたらぁ!」
 ミズホはシンジの腕を取った。
「こっちですぅ」
「え?、洋裁店…」
 ミズホは奥に入ると、リボンが置かれているコーナーを目指した。
「へぇ…、リボンって色々あるんだ?」
「はいですぅ」
 にこにことロールから引き出して、ミズホは何本かを選び出す。
「これとこれがいいですぅ」
「え?、これでいいの」
「はい」
 店員に言って一メートル半ずつの長さに切ってもらう。
「あんたも安いのが好きねぇ?」
「でもでもぉ、おば様に貰ったお金じゃなくてぇ、これはシンジ様がシンジ様のお金で買って下さったものですからぁ」
「「うっ…」」
 レイとアスカは呻いた。
 この子、いじましいじゃない?
 ミズホったらいつの間にこんな技を…
「ミズホ…」
「大事にしますぅ」
 リボンの入ったケースを手に、ミズホはニコッと微笑んだ。
 ただしアスカとレイには、なぜだか勝者の笑みに見えてしまった。


「…なんだ父さん、居たの?」
「居て悪いか」
「悪くは無いけどさ…」
「そうか」
 だがやはり居づらいのだろう、ゲンドウは新聞で顔を隠す。
 ユイが居なので今日の夕食は共同作業になっていた、が、居なかったはずのゲンドウが気がつけば座っていたのだから驚くだろう。
「はぁいシンジ様ぁ!」
「お待たせぇ!」
「レイちゃん特製の蟹玉だよぉ」
「ってあんた!、それフライパンでチョコチョコやるだけの奴じゃない!」
「美味しいんだからいいじゃない」
「そう言う問題じゃないわよ!」
「シンジ様、あ〜んですぅ」
「「こらぁ!」」
「ひゃあ!」
 楽しそうな光景を横目に見ている。
「なにさ?」
 シンジはその目に皿を隠す。
「少しよこせ」
「やだ」
 ここぞとばかりに反乱を起こす。
「謝るなら早く行って来た方がいいよ?」
「問題無い…」
「ちなみに父さんの分、ないみたいだから」
「わびしいものだな、父親というのは」
「…母さんっ子だからねぇ」
 パクッとレイの作って来た蟹玉に箸をつける。
 反抗を試みるシンジであったが、もちろん後でどうなるかは考えていない。
「ふっ、わたしとユイの絆はそれ程弱いものではない」
「…家出されちゃったくせに」
「シンジよ…」
 ゲンドウは新聞をたたんだ。
「ちょうどいい機会だ、わたしとユイの事を話してやろう」
 ゲンドウはいつものように肘を突いた。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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