NEON GENESIS EVANGELION
Genesis Q':123
中学校の職員室には、休日だというのに先生達が待機していた。
「へぇ、受かったんだ」
おめでとうを言いつつも、その人は合否のチェック票に丸を書き込んだ。
「そう言う言い方はないんじゃないですかぁ?」
担任教師だった人の余りのお言葉に、和子はがっくりと肩を落とした。
慌てて謝る。
「ごみん!、でも受かるとは思ってなかったのよねぇ」
ミサトはあっけらかんと答えて笑った。
「ほら、二人とも結構ぎりぎりだったじゃない?、特にナカザキさんね、間に合うかどうか心配なくらいだったし」
和子はけたけたと笑った。
「この子だったら大丈夫ですよぉ、だって愛しのカヲルくぅんが待ってるんですから」
「和ちゃん!」
プウッと頬を膨らませた薫に、二人は同時に吹き出した。
「もう死に物狂いだったんですよ?」
「ま、結果オーライね、でも良かったわ、これであたしも安心して引退できるし」
と言って撫でたお腹は、目立つくらいに膨らんでいる。
薫はぽうっとそのお腹を眺めてから口にした。
「ほんとに辞めちゃうんですか?、学校」
心配げな薫に、ミサトは軽い調子で笑いかけた。
「この体じゃあね、あんた達みたいなの、もう相手に出来ないし、それに」
「なんです?」
「上がうるさいのよ」
これは小声だった。
「結婚もしてないのに、破廉恥なってね?」
目を見張る和子。
「うわっ、ふっるー……」
続けて小さく声をしぼった。
「でも先生……、どうして結婚しないんですか?」
パタパタと手を振る。
「ま、色々とあんのよ」
「まさか!、ほんとに相手が誰だか分かんないとか?」
ぷっと吹き出す。
「心配しなくても、心当たりは一人しか居ないわよ」
キョトンとする。
「じゃあ、どうして?」
ミサトは女の憂鬱をかいま見せた。
「色々とあんのよねぇ……、事情があるって言うか、やましい事は無いんだけど、結婚となるとね」
寂しげに笑う。
「ま、とりあえず引っ越して来いとか、面倒は見てくれるって言うからね、それに」
「なんです?」
「子供殺すのって、嫌なのよ」
ひやりとさせる声音だった、特に堕ろすでなく、殺すと表現した辺りが、かなり悲壮な感じを受けさせた。
「先生?」
「あっ、ごめん」
ペロッと舌を出す。
「でもあんた達は、もうちょっとマシな相手を探しなさいよ?、事情がありそうな相手って、それだけ苦労するんだから」
ミサトは元の調子に戻って二人を激励したのだが、薫はちょっとだけ考え込む表情になっていた。
●
みんながそんな風に悩んでいる頃。
ここ、碇家ではまったく進歩の見られない光景が、今日もまた一通り展開されていた。
「よりにもよって、ミズホに越されるなんて、ミズホに先を越されるなんてぇ!」
アスカは精神崩壊の際に立たされていた。
「アスカ、聞いてってば、ねぇ!」
その腰にはシンジがしがみついていた、必死に弁解を試みるのだが、耳を貸してもらえない。
そしてそんな二人を、レイは無言で、じーっと黙って見つめていた。
その冷たい視線は綾波ばりだ。
シンジは叫んだ。
「ほんとうになんにも無かったんだってば!、逃げ回るのにちょっと暴れちゃっただけで」
「それだけでそんなとこが虫に刺されたみたいに腫れるってぇの?、あんたは!」
ビシッと指差す。
とシンジはあうっと左の肩口を押さえて呻いた。
「そりゃ……、ちょっとは」
怒髪天を衝く。
「きぃーーー!、なんで?、どうしておば様もあの馬鹿もいないのよ!」
こんな時ばかりカヲルを勘定に入れるアスカである。
レイは飽きたのか、溜め息交じりに言葉をこぼした。
「シンちゃん……」
ほとほと愛想をつかした口ぶりであった。
「ねぇ……、そんなにミズホって、可愛くない?」
ドキンとする。
「レイ?」
「あんた何言ってんのよ!」
まあ聞いて、とレイは二人を押し止めた。
「あのね?、ちょっと思ってたんだけど……、シンちゃんって、特定の彼女を作る気、ないんじゃない?」
「どういうことよ?」
シンジを押しのけるアスカに、レイは神妙な面持ちで語り出した。
「テレビのね、番組見てて思ってんだけど……、ほら、女の人が彼氏以外にもナンパされて隠れて会ってたりとか、そういう話しってあるでしょう?、でもね、それって物足りないからじゃないのかなぁって思ったの」
「はぁ?」
「ブランド品と同じことなんじゃないかなぁってね、一つじゃ完成しないわけ、足りない部分があって、それはあっちの製品で賄っちゃおうって……、例えばご飯ね、お米があって、おかずがあるでしょう?、おかずは何でもいいし何種類でも良いんだけど、お米は一つだけじゃない?、でもお米だけじゃ物足りないから、おかずをつまんじゃうわけよね?、つまりお米が本命で、おかずが補完ってこと、これって男の人も、浮気する時は同じ考えでしょう?、だからシンちゃんもそうじゃないのかなぁって」
アスカはシンジの顔を掴んで突き出した。
「こいつの浮気癖は治んないっての!?」
「痛いって!」
目に涙を浮かべたシンジの顔に、レイの溜め息が吹きかかった。
「そういうのとは違う話しよ……、ようするに、あたしでもアスカでもミズホでも、シンちゃんが側に居て欲しいって思うには何か欠けてるんじゃないかなって思ったの、でも三人いると全部が揃うわけ、だからシンちゃん、こうやって捨てられそうになると焦るんじゃない?」
「別に捨てるわけじゃないわよ!、悔しいだけ!!」
「あたしだってそう思ってるけど、問題は、シンちゃんの『何も無かった』が言葉通りだって事じゃないかなぁって思うの」
「じゃあ何かあった方が良かったっての?」
「それじゃあアスカ?、聞くけど、アスカと二人っきりになってもやっぱり逃げ回って、あたしやミズホには何も無かったって言うんじゃない?、シンちゃん」
うっとアスカは呻いた。
「でしょ?、あたしでも同じ、これって、ある意味空しくない?」
アスカはがっくりと肩を落とした。
「こいつ、ほんとに男なの?」
「どういう意味だよ」
「そのまんまよ!、まさかほんとにカヲルと……、そんなの嫌ぁ!」
「あのね……」
シンジはがっくりと肩を落とした。
そんなシンジに指を突き付ける。
「あんた今日から一人で寝なさい!、これ決定よ」
「寝ろって……、どこでだよ」
「カヲルを追い出してもいいし、ここだってあるじゃない!」
と言って子供部屋を支持する。
「そんなの可哀想だって……、それならシンちゃん?、あたしの部屋で寝る?」
アスカは目を剥いた。
「レイ!」
しかし笑って受け流す。
「もう、怒らなくっても大丈夫だって、いっくらなんでもミズホじゃないんだから、隣にアスカがいるのになにもしないって、ね?」
「いや、ねって言われてもさ」
シンジは引いた、目が笑っていなかったからだ。
アスカは反射的にシンジを庇った。
「とにかく却下よ!、却下却下却下却下却下!」
指を咥える。
「アスカのケチぃ」
歯ぐきを剥いて怒鳴り散らす。
「そんなのケチとかって問題じゃないでしょ!、まったくもう、シンジも何とか言いなさいよ!」
シンジはボケボケッと口にした。
「だったらさぁ……、二人っきりになったら、とりあえずエッチなことをすればいいわけ?」
『そんなの大却下よ!、あたし以外としちゃ駄目!』
声をハモらせた後、そのまま鼻面を付き合わせて睨み合う二人に、シンジは思わず嘆息した。
商店街を歩いてカラオケボックスを目指す一行の中に、薫と和子の二人の姿も紛れ込んでいた。
「でも、これから大変よねぇ」
「なにが?」
和子の言葉に振り返ったのは、薫だけではなくて他の女の子三人もだった。
和子は本気の声で口にした。
「だってさ?、赤木先生がキレたら、もう誰も止められないじゃない」
「あう」
「それにこれで、行き遅れ最年長決定だし、こりゃ大変だわ」
にひひと笑ったが、そんな和子に薫は不安げに周囲に気を配ってたしなめた。
「和ちゃん」
「なに?」
「聞かれたら大変だと思うの」
きょとんとする。
「まっさかぁ、学校ならともかく……」
その背後に、ヒュンッと何かが落ちて来た。
ぺチャッと音がする。
「和ちゃん……」
薫が呆然と見たのは、アスファルトに落ちた鳥の糞だった。
「はは……、偶然よ、偶然」
しかしそういう和子の顔も引きつっていて、今ひとつ説得力に欠けていた。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'
は
Genesis Q
の
nary
さんに許可を頂いて私
nakaya
が制作しているパロディー作品です。
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