Evangelion Genesis Real
Evangelion another dimension real:2





 穏やかな陽光の中に立つ初号機と弐号機。
 山間の田園風景が広がっていた、ここが最も遠くに電源ソケットのあるポイントだ。
「いい?、初号機が輸送している非常用電池、それが全てだから」
「今つけてるバッテリーで、どのくらい持つの?」
「内蔵電源と合わせても全開運動で約10分、それが限界よ」
 確認事項をくり返しているミサトとアスカ、他人事のように聞いていたシンジがゆっくりと顔を上げた。
 使徒が陽炎のように揺らめいて見えた、まだ10キロはあるだろう。
「ようやくおでましってわけね?」
 初号機の前に出て、長距離ライフルを構える弐号機。
「さあってと、シンジぃ、あんたの分も頑張ってあげるんだから、しっかり見てなさいよね?」
 ヘッドギアを引き出し、かぶる。
 バシュッバシュッバシュッ!
 ろくに狙わず、立て続けに三発。
 初弾命中、よろけた使徒が地面に落ちた、そのために次弾以降は外れる。
「なに?、ATフィールドに当たっただけなのに」
 ヘッドギアを戻すアスカ。
「まあ初号機だけで何とかなった奴のコピーだもんね、こんなものかな」
 軽口を叩いて、シンジとの通信回線を開く。
 自慢をしようとした瞬間、それがきた。
 光線が右から左へと薙いだ。
 ドォン!
 大地が溶解、爆発、炎上した。
「アスカ!」
 ミサトが叫んだ、発令所のメインスクリーンが真っ白に染まる、焼きつきが取れない。
「何がおこったの!」
 使徒が口を開いていた。
 先頭部を上下にぱっくりと開けている、その奥で燃えるような赤い光が覗いていた。
 グウウウウウウウウゥン、ダン!
 空中高く飛びあがっていた弐号機が、太陽の中から降り立った。
 地面が大きく震動する、尻餅をついていた初号機が一瞬浮いた。
「あっぶな〜、ありがとね、シンジ」
「え?」
「あんたじゃないの?、危ないって叫んでくれたの」
 覚えのないシンジは答えにつまった。
 それを礼を受け取ったのだと勘違いするアスカ。
「ミサト!、悪いけどいきなりケーブル切られちゃった」
「アスカ!、無事なのね?、シンジ君は?」
「大丈夫よ…って、そっちでモニターしてるんじゃないの?」
「今さっきのでほとんど焼ききれちゃったのよ」
 じゃ、好きにやらせてもらえるわねっと、アスカはライフルを捨てた。
「長距離攻撃じゃ相手の方に分があるみたい、近接戦闘で行くわよ?」
 シンジに声をかけてから、アスカはあ、そうだっけっと舌打ちした。
「今のあんたじゃバックアップなんて無理なのよね、そういえば」
 いつの間にか頼ろうとしていた自分に気がつく。
「いいわ、そこでゆっくりしてなさい」
「アスカ!」
 シンジの静止を無視して、アスカはエヴァを走らせた。
 田を踏みあらし、一気に山を越えようとする。
「きゃあ!」
 山かげに入って見えなくなった使徒が、突然弐号機の真正面に現れた。
 跳ね飛ぶように体当たりをかける。
「きゃぐうううううっ!」
 歯を食いしばる、大の字になって倒れる弐号機。
「まだ距離はあったのに!」
 ガクガクガクっと機体が揺れた。
「なに!?」
 気持ちの悪いものが足を這いずりあがってくる、そんな感触。
 使徒が腹部の足を開いていた、まるでムカデだ。
「いやー!、なによこれっ、気持ち悪いったら!」
 そのままの状態でかぱっと口が開いた。
「危ない!、アスカ避けてっ」
 席を立ち上がりかけるシンジ。
「このぉ!」
 使徒の下顎を蹴り上げた、半ば浮き上がった使徒の上唇を、内側から後頭部に向かって銃弾が突き抜ける。
 初号機が弐号機のライフルを握っていた、銃口から硝煙が立ち登っている。
 止められずに光を放つ使徒、赤い光は明後日の方向に飛んだが、銃弾の抜けた所から潮を吹くように炎が吹き出してしまった。
 使徒を蹴り飛ばす弐号機。
「弐号機からのデータを解析」
「あの光はなに!?、レーザー?」
「いえ、熱線砲です、使徒内部に高熱源体の存在を確認」
「ブラスターの熱量は3万度を超えています!」
 アスカは発令所からの悲鳴に近いレポートにいらついた。
「それよりどうやってコアを狙えばいいのか考えてよ!」
 腹這いで進んでくる、コアはその下にあって見えない。
 宙を漂っていた時と違い、恐ろしく早い。
「時速200キロは出ています!」
「ちぃっ!」
 転がるように避ける。
「シンジ!」
 使徒は弐号機を無視して初号機を狙った。
 その速度を落とさぬまま口を開く。
 奥に地獄の釜のようなものを見るシンジ。
「ふわ…、うわ、うわ、うわあああああああああ!」
 初号機が両手をクロスさせた、使徒が初号機のATフィールドにぶつかって止まった。
 半立ちになる使徒。
 使徒の触手、光の鞭が初号機の両腕に絡み付いた。
「ああああああああああ!」
 ねじりこむように、締め上げる。
 シンジが悲鳴を上げた。
 ボキンッ!
 異音を放って、両腕共に関節の無い所から折れ曲がる。
「こいつう!」
 アスカがプログナイフを背中に突き立てた。
「きゃあっ!」
 赤い液体が飛び散った。
 液体のかかった手が、プログナイフごと燃え上がる。
 弐号機は火傷をおった右手の手首をおさえて、うずくまった。
「あっつぅ…、だめ…、他の武器、他の武器を回して、早く!」
 痛みの感覚を根性で抑えこむ。
 山がスライドして武器コンテナが現れた。
「ああ、あああ、あああああ!」
 シンジの悲鳴が続く。
「おかしいです、こんななはずありません、今の初号機のシンクロ率で、こんな神経回路の逆流、あるわけないのに!」
 役に立たなくなったコンソールパネルを見捨てて、ノートパソコンを繋いでいるマヤ。
「数値変えられないの?」
「だめです、これ以上落としたら起動指数を割っちゃいます!」
「いやだ嫌だイヤダ嫌ダいやだ嫌だぁ!」
 初号機の顎部ジョイントが外れた。
「シンジ君!?」
「シンジ!」
 使徒の喉元に噛みつく初号機。
「あああああああああ!」
 シンジの脳裏に誰かの叫びが聞こえる、それを声にするシンジ。
 初号機が使徒の下顎を咬み千切った、ぼたぼたと血が田畑を染めていく。
 使徒の肉片を吐き捨てる初号機、口からは血を垂らし、胸元まで真っ赤に染めていた。
「シンジ…、なに?」
 ぶつぶつと何事かを呟いているが聞き取れない。
 グルルルルル…
 低く唸り声を上げている初号機。
「やだ…、やだ、やだよ、いやだよ…」
 シンジに語りかける声がある。
 逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ…
 僕は卑怯で…、臆病で…、ずるくて…、弱虫で…
 いいんです一人の方が…
 好きじゃなかったお風呂。
 好きになったお風呂。
 友達…、ともだち、トモダチ。
 アスカ、苦手。
 レイ、恐い。
 ミサト、悪い人じゃない。
「母さん、やめてよ、なにをするんだよ…」
 引き出しを探るように、記憶が駆け巡る。
「やだよ、嫌なんだよ、いいじゃないか僕じゃなくったって、僕のことなんかどうでもよかったんだろ、父さんも、母さんも、なのに何だよ、いいじゃないかそんなことどうだって、どうして母さんにいちいち話さなきゃいけないのさ?、ほっといてくれって言ってるんだよ!」
 参号機に首を絞められる初号機。
 カヲルを殺すことを選んだシンジ。
「話したくないって言ってるだろう!」
 シュルルルルルルルル!
 初号機の首に使徒の触手が巻き付いた。
「シンジぃ!」
「アスカ?」
 アスカの声に現実に引き戻される。
 弐号機が槍を構えて使徒に体当たりをかけた。
 使徒の横っ腹を槍が貫く。
 意に介さない使徒。
 参号機をくびり殺したように、自分の首も落とされるのだ。
 カヲルの首をもいだように。
「か…、ハァ…」
 シンジと初号機が同時に泡を拭いた。
「てやああああああああああああああああ!」
 直刀を選んでアスカは振るった、使徒の触手が切り落とされる。
「何ぼけっとしてんのよ!」
 ふらつきながらも使徒は再び触手を伸ばそうとした、口が笑っているようにも見える。
 使徒が自分自身とダブって見える。
 シンジは恐慌に陥った。
「うわあああああああああああ!」
 使徒を蹴り飛ばす初号機、仰向けに倒れた使徒をさらに蹴る、狂ったように使徒のコアを蹴り、踏みつける、折れた両腕がぶらぶらと不自然に揺れた。
 みち…
 コアがはがれかける。
「どいて!」
 初号機を突き飛ばす。
 馬乗りになって、コアへナイフを突き立てる弐号機。
「負けてらんないのよ!」
 !!!!!!!!!!!
 使徒が声にならない悲鳴を上げた。
「ママが見てるんだからぁっ!」
 エビのように跳ねまわり、弐号機を振り落としにかかる。
 弐号機は使徒を太股で挟みこみ、さらに深くプログナイフを突き立てた。
 バキン!
 ナイフが折れた。
「ちぃっ!」
 ナイフの刃が再び伸びる。
 ごかん!
 再度突き立てるよりも早く、先にコアが割れた、光が失われる。
「あ……」
 勢いを削がれるアスカ。
「アスカ!、シンジ君は!?」
 はっとして初号機を見る。
 横倒しに寝っ転がっている初号機、ちょうどエントリープラグがプラグアウトするところだった。
 プラグから出たシンジは、L.C.L.とともに胃の内容物まで吐き出していた。
「うげ…、げぇええええ…」
「シンジ?」
 初号機はシンジのママになってくれないの?
 アスカにはシンジが初号機を毛嫌いしているように見えた。


 ケージで洗浄を受けている初号機。
 それをミサトと並んで見ているアスカ。
 プラグスーツのままでアスカはそれを見ていた、髪が濡れて滴を垂らしている。
「ねぇ」
「なに?」
「あのバカに戦わせなきゃいけないの?、本当に…」
「引き返せないところまで来てるのよ、もう」
「そ…、でも同情はしないわよ?、あたしだってもうママしかいないんだから…」
 それ以上二人は言葉を交わさなかった。


「冷やっとしたがな…」
「倒すだけならば弐号機で良い、初号機には今しばらく使徒をひきつけてもらわねばならん」
「ああ、リリスの眠りを妨げさせるわけにはいかんからな」
 ネルフ本部最上階、ゲンドウと冬月。
「しかし良いのか碇?」
「レイを失うわけにはいかん、今パイロットの補充がきかん以上、しかたあるまい」
「不敏な子だな」
 ゲンドウは答えなかった。




続く





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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

この作品は上記の作品を元に創作したお話です。