Evangelion Genesis Real
Evangelion another dimension real:6
「おうらシンジぃ!、ぼさぼさっとしてないで、さっさと起きてさっさと出かけなさいよ!」
新しいマンション、新しい部屋。
「わかったよぉ…」
シンジは返事をすると、布団を跳ねのけ体を起こした。
「なっ!」
アスカの声。
「何考えてんのよっ、あんたわ!」
バタンっと戸が閉じられた。
「何怒ってんだろ…、あ」
シンジは自分が下着だけで寝ていたことを思い出した。
「ばっかねぇ、それで怒らせちゃったわけ?」
「はい…」
トンネル、ミサトのルノー。
シンジは助手席に座っていた。
「どうせお昼には機嫌直ってるわよ…、でも寝間着ぐらい着たらどうなの?」
「…どれが寝間着かわからなくて」
あれから一週間、なのにシンジの目は相変わらず光を取り戻していない。
「そうかぁ、でも困ったわねぇ…、あたしも本部にこもりっぱなしだから、面倒見てあげるわけにはいかないし」
本部への車両用列車に乗りいれる。
「いいんです、あそこへは寝に帰るだけだから」
「ご飯ちゃんと食べてるの?」
「ネルフの食堂で」
「ならいいけど…」
会話が途切れる。
居心地の悪い空気。
「…ミサトさん」
「なに?」
「今日のテストって、何をするんですか?」
「シンクロテストよ、いつもと同じ」
シンジは少しほっとした。
「僕は…、まだ戦えるんですね?」
「どういう意味?」
「僕は戦いたいんです」
言いきるシンジ。
ミサトは驚きを隠せなかった。
「そんな目にあったのに?、どうしたの?、シンジ君らしくないわねぇ」
「そうですか?」
車両用列車がトンネルを抜けた、ゴウっと言う音と共に、天井都市の下を移動していく。
「理由…、聞かせてくれない?」
ためらうシンジ。
シンジはギュッと唇を噛んだ後、息を吐きながら話し出した。
「蠱毒って、知ってますか?」
「こどく?」
話の飛び方に戸惑う。
「はい、よくは知りませんけど…、昔の中国では、壷の中に毒虫を入れ争わせて、最後に生き残った虫の毒を暗殺に使ったんだそうです」
「ああ、一番毒性の強い虫を選び出してたのよね、確か」
それがどうかしたの?、と尋ねる。
「…地球がそうだとしたら?」
冷めた声。
「なに?」
一瞬背筋に冷たいものが走った。
「この星が壷で、僕達が虫だとしたら?」
「シンジ君…」
シートの上でシンジは膝を抱いた。
「もしかすると、この世で一人きりになるまでなにも終わらないのかもしれない…、なにも…」
シンジは目を閉じた。
「それは、誰の考えなの?」
「…母さんの」
シンジの呟きと同時に、車両列車は到着した。
「凄いですね…、シンクロ率、前よりも上がっています」
だからこそ不可解なのよ。
胸の内で答える。
ミサトはガラスの向こうに並ぶ三つのエントリープラグを眺めていた。
今はシンジ一人だけが入っている。
…さっきの話、本当なら使徒の能力にも頷けるわ。
自己修復、機能増幅、そして知恵を付けていくことにも。
でも、それならなぜ?、なぜ使徒は人と…、いえ、チルドレンと接触をしようとするの?
第三使徒が15年も経ってから現れた理由。
それは「チルドレン」がこの街に来たから…、それは間違いないはずなのよ。
レイは厳密にはチルドレンではないのだから…
「だからレイにふるわけにはいかないのよね」
「え?」
振り返るマヤ。
「いえ、これなら例の計画も安心できそうねって言ったのよ」
「そうですね、初号機もしばらく使えませんし、うまくいくといいですね?」
「ええ」
零号機の話題を無意識のうちに避けようとしている。
それを感じるミサト。
まあ、あんなものに手をつけてるんじゃ、それも無理ないか。
ミサトはマヤが何をしているのか知っていた。
零号機の再製、いえ、リリスから採取した細胞サンプルの培養…と言った方が正しいかしらね?
制御下へ置くために、レイ自身のコアが用いられる。
マヤ…、この子も危ない所まで来ているわ。
「最終値、80です」
「シンジ君?」
「はい」
スピーカーから聞こえる声には、安堵の色が混じっていた。
「二号機に乗って見るつもりは無い?」
「え?」
詳しい話をするから食堂に来て、とミサトは続けた。
「あー、いたいた、ミサトー!、シンジぃ!」
食堂、トレイを手に、アスカが元気よく近寄ってくる。
「まったく何も問題が無いってのも困りものよねぇ、暇だったらありゃしない」
ふふんっと自慢してみたが、コメントが返ってこなかったのでムッとした。
「なによぉ、文句あるわけ?」
「なんだよ、別に無いよ…、どうしてそう突っかかってくるのさ」
「あんた見てるとむかついてくるからよ、それになに?、また野菜サンド?、ファーストじゃあるまいし、もっと元気の出るもの食べなさいよ」
そういうアスカはレバニラ定食だった。
「お肉…、気持ち悪くない?」
「なんでよ」
「だって…、L.C.L.の味がするみたいで…」
「ばっかねぇ、そんなの「〜〜は胡瓜に醤油かけたのと同じ味」、ってのと変わんないじゃない、気にしてたら何にも食べらんないわよ」
吹き出すミサト。
「アスカらしいわ」
「とにかく、ファーストの真似するのはやめてよね!、それが一番むかつくんだから」
アスカのセリフで思い出した。
「この間、仲良かったもんねぇ」
それはシンジが退院した後のことだった。
「さってと、何食べよっかなぁ…」
ファミレス、うきうきとメニューを見ているアスカ。
「シンちゃん、何にする?」
「何があるんですか?」
席にはアスカとミサトが、そしてシンジとレイが並んで座っていた。
「わたし、野菜サンド…」
「あ、じゃあ僕も…」
レイにあわせる。
ピクっとくるアスカ。
「あらぁ〜、これはまたお熱いことで…」
「そんなんじゃないよ…」
小さな返事。
「それだけ?、つまんないのぉ」
「人間、お腹が減ってると余裕が無いのよ、ほら来たわよ?」
「待ってました!」
特製の500グラムハンバーグが、焼けた鉄板の上に乗っている。
アスカは別になっていたソースをかけた、ジュッと音がして、良い匂いが広がる。
「これよこれぇ、これがいいのよねぇ」
「ふふ…」
微笑みながら、ミサトはつい言いかけた言葉を止めた。
こうしてまた、この面子で食べに来られるなんてね?
だがレイはあの時のレイではないのだ。
レイを見る。
「碇君…」
「ありがとう、綾波」
レイがサンドイッチの場所を教えていた。
指先でサンドの形を確かめるように食べるシンジ。
アスカはハンバーグを口にしかけた状態で止まっていた。
「…なんかばっかみたい」
それからアスカの機嫌は悪くなった。
「まったく残念よねぇ、家に帰るとファースト居ないし」
うりうりと突っつく。
「そんな…」
「でもでも身の危険を感じるのはこっちよぉ!、トイレの場所が分かんないからって、人の部屋でしようとするんだもん」
「そうなの?」
「ち、ちがうよ!、あれは本当に間違えて…」
「もうちょっとで粗末なもん見せられるとこだったわ、まったく」
言い返せない。
「仲が良いのもいいけどね…」
両肘をテーブルに乗せ、手の上に顎を置く。
「だったらもう少しは面倒を見てあげてもいいんじゃない?」
「嫌よ!、どうしてあたしがシンジなんかの…」
「アスカ…、なにへそ曲げてんのよ」
「いいじゃない、どうせホントに困ったらファーストがなんとかするんだし」
「家じゃそうはいかないでしょう?」
「良いんですよ、ミサトさん…」
「でもシンジ君…」
「いいんです」
ミサトは堪えた。
「僕、そんなに迷惑かな?」
アスカに尋ねる。
「あったりまえじゃない!」
ぷいっとそっぽを向いた。
「そっか…、じゃあやっぱり…」
「ダメよ、一人暮らしは許さないって言ったでしょ?」
ミサトの言葉にアスカは「え!?」っと振り返った。
「なによそれ、なんの話しなの!」
シンジに聞く。
「…ほら、アスカ言ってたろ?、僕と同じ物を食べるなんて気持ち悪いって」
アスカの顔から血の気が引いた。
「ど、どうして知ってんのよ!」
怒りに顔を歪める。
「盗み聞きしたのね!」
ダン!っとテーブルを叩いた、食器が浮いてガシャンと音をたてる。
「…やっぱり、そうだったんだ」
シンジの反応は冷ややかだった。
「引っ掛けたわね…」
パン!っとシンジの頬をはたく。
ガタン!
シンジはバランスを崩して、椅子ごとこけた。
「痛…」
「自業自得よ!」
見下ろす。
「悪いんだけど、ケンカはやめてくれる?」
動かずに、言葉だけで止める。
「文句ならそこの大馬鹿に言ってよ!」
「なんだよ、本当のことなんだろ?、ならいいじゃないか…」
「よくないわよ!」
「はいはいはい…」
ため息をつく。
「これじゃ、あの計画は見直しかもね…」
「なによ、計画って」
座りなおす。
シンジも手探りで椅子を起こし、座った。
「エヴァ二号機を複座型にしようって計画があんのよ」
「なっ!」
アスカは驚きと嫌悪に目を剥いた。
「なによそれ!、どういうことよ!」
まあまあとなだめる。
「恐らく次の戦いは水中下になるわ、以前と同じようにね」
「それがどうしたって言うのよ、第一シンジには初号機があるじゃない!」
「初号機は現在修理中、よって次の使徒には単独でしかけなければならないわ、そこで二人乗っけて、エヴァの性能を上げようってわけよ」
「そんなの納得できないわ!」
またテーブルを叩く。
「水の中だから何よ!、それに性能アップってどういうこと!?、あたしとママは完璧よ!」
シンジを指差す。
「それにこいつと一緒にエントリープラグに入るですって!?、嫌、嫌よ!、いくら浄化作用があるからって、人が飲んだり吐いたりしてるL.C.L.に潜るなんて、ぜぇえええええったいに、嫌!」
髪を振り乱して拒絶する。
「…そう」
ミサトも諦めの色を浮かべた。
「あなたたちなら以前の事もあるし、ユニゾンの経験もあるしね、良いと思ったんだけど…」
シンジに視線を移す。
「しょうがないわね、計画はレイとシンジ君で行いましょう」
「ええええええ!」
アスカが非難の声を上げた。
「レイをメインにすえて、シンジ君がバックアップ、いいわね?」
「…僕はかまいません」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「なに?、アスカ」
こんなのズルい!
受けなかったら、あたしを無視して進めるなんて!
「わかった、わかったわよ!、やる!、やればいいんでしょ?」
「嫌ならいいのよ?、無理する事…」
「してやるわよ、無理ぐらい!」
ファーストに触れさせるなんて冗談じゃないわ!
キッとシンジを睨みつける。
「そういうことだからっ、いいわね!」
こいつもこいつよ!
「…なにがさ?」
ほら!
「あんたはあたしの後ろで大人しくしてればいいの!、余計な話をしようとして、少しでもL.C.L.を汚したら承知しないんだから!」
わかった!?っと指を突きつける。
「わかったよ…」
うんざりと答えて返す。
「僕なんて必要ない…、そう言いたいんでしょ?」
「誰もそんなこと言ってないじゃない!」
アスカは再びシンジを叩いた。
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この作品は上記の作品を元に創作したお話です。