Evangelion Genesis Real
Evangelion another dimension real:7
「初号機、ATフィールドを展開、異相空間の中和を開始しました」
マヤの目にしているグラフが反転していく。
「零号機、弐号機、所定位置に固定」
「アスカ、レイ、カウントを合わせて」
「はい…」
「りょーかい!」
零号機と弐号機、それぞれのウィンドウにカウントダウンの表示が灯される。
正面700メートル先に初号機、その向こうに分離した第七使徒セカンド。
「やるじゃない…」
アスカは素直に感心していた。
初号機によるATフィールドの中和は完璧だった。
「…2・1・発射」
レイのボソっと言う呟きに合わせてトリガーを引く。
二機の持つポジトロンライフルがそれぞれに火を吹き、両方の使徒のコアを同時に貫いた。
使徒は特に抗う様を見せずに沈黙、活動を停止する。
「…作戦終了、三機を回収、処理部隊を出させて」
「はい」
三人のオペレーターが慌ただしく動き出した。
自分の目の神経は繋がらないのに、エヴァとの神経は繋がっているのね。
各エヴァの状態表示が目に入る。
シンジはエヴァの目を己のものとして、外界を見渡していた。
初号機だけにS
2
機関の稼働率が表示されている。
背後で司令席が移動を始めた、その音を聞きながら、ミサトはエヴァを…、特に初号機を気にしていた。
「やぁっぱエヴァが三機もあれば楽勝よねぇ?、と、く、に、どこぞのヒーロー様がご活躍なされたおかげで、こっちはほとんどする事無かったしぃ、ねぇ?、聞いてんでしょバカシンジ?」
「うん…」
ケイジ内、アスカはアンビリカルブリッジから弐号機に話しかけていた。
シンジは初号機のプラグ内で、アスカの声を拾っている。
アスカと自分を挟んで反対側になる場所には、久々に見る零号機の姿があった。
綾波…、また父さんと話してる。
いつか見た光景。
エントリープラグのチェックをしていたレイが、踊るようにゲンドウの前に立った。
口元に手をやり、楽しげに談笑、ゲンドウも微笑みを返している。
でも、今は羨ましくない…
シンジはエントリープラグを排出させた。
「S
2
機関を搭載したエヴァ初号機、まさに神の力を手に入れたに等しいな…」
「ああ…」
ターミナルドグマ最下層。
ゲンドウと冬月がシリンダー内に浮かぶレイを見ていた。
「委員会も示唆していたが…、彼らにとって必要なのは母体たる「エヴァ」にすぎんよ、余り力を誇示するものではないと思うがね?」
横目で顔色をうかがう。
「しかし弐号機だけで使徒を処理することはできんよ」
「零号機があるだろう?」
呆れの混ざった口調。
「レイを危険にさらすわけにはいかん…」
「息子はいいのか?」
「ああ…」
冬月の問いかけに、口の端を釣り上げ、歪んだ笑みを浮かべて答えた。
「レイ、そしてエヴァ零号機、初号機、それらを生み出すためにシンジは存在したのだ…、今は予備としての役目を努めてくれればいい」
「それは本心かね」
「そうだ」
嘆息する冬月。
「レイ、上がっていい、後は休め」
「はい…」
顔を上げ、レイは優しげに微笑んだ。
「何怒ってんだよ…」
「べっつにぃ、あんたこそ何よ、あたしのご機嫌とるなんて珍しいじゃない」
電車からの帰り道、非常事態宣言の後だけに、多くの人が乗りあわせていた。
「…ごめん」
「一々謝んないでよね」
口を尖らせる。
アスカはたんに、ラッシュ時並の電車に嫌気がさしていただけだった。
「アスカもういいよ、手を離してよ…」
夜道を手を繋いで歩いている。
学生服にサングラス姿のシンジ、違和感ばかりがかなり目立つ。
「バカねぇ、じゃあ一人で歩くってぇの?」
意地悪をして、振りほどくように手を離してみた。
シンジは勢いに体をよろけさせて、転びかける。
「ほらね?、もう自分がどこに居るんだかわかんなくなってるんじゃない」
よろよろとふらつくように、シンジはつかまる物を探した。
手を伸ばす、からぶる、またよろけた。
「わかった?、わかったら反抗しないの、まったくもう、手間かけるんだから」
「うん…、ごめん…」
シンジは結局手を取られた。
「だいたいさぁ、一人で帰れないくせに、どうして一人暮らしなんてしたがるのよ?」
「迷惑…、かけたくないし」
シンジは顔をふせた。
「あんたねぇ?、一人で何にもできないんだから、どこに行ったって誰かの世話にはなるんでしょうが、わかってんの?」
バカが…、だったらあたしを頼りなさいよ!
そんなニュアンスを含ませる。
「ああ…、うん、それもそうだね…」
だがシンジは視線を泳がせるように頭を動かした。
そんなシンジに苛つくアスカ。
「そもそもあたし達、どこに居たって同じ場所に連れていかれるのよ?、だったら一緒に居た方が、向こうの手間も減って楽ってもんじゃないのよ」
「そっかな?」
「そうよ、だからあんたはあたしの言うこと聞いてりゃ良いのよ」
「なんだよそれ…」
「このあたしが面倒見てやるって言ってんの、感謝しなさいよ?」
自分の言葉に赤くなる。
「…ホントは嫌なくせに」
車の音に消される冷めた言葉。
「何か言った?」
「何も言ってないよ」
「そ?、ならさっさと歩きなさい、お腹減ったんだから」
アスカは握っている手に力を入れた。
アスカの手が柔らかい。
握り返していいのか戸惑うシンジ。
すべすべしている。
スポーツだけでなく格闘技もやっている、それに毎日のようにインダクションレバーを操っている。
それでもアスカの指には節すらない。
「アスカって、指細いんだね…」
「なっ!?」
バカなこと言ってんじゃないわよ!っとシンジははたかれた。
「おっかえりー!」
エプロン姿で出迎えるミサト。
「ミサト聞いてよー…って、なにやってんのよあんたわ」
「あんたとは失礼ねぇ」
「お玉持ってりゃ気になるわよ、あんたまさか料理してたんじゃないでしょうねぇ?」
「してたのよ、悪い?」
「悪いに決まってんじゃない、味音痴が作るものほど恐いもんはないわ」
「あ〜あ、せっかく我が家の子供達に、家庭の味ってぇもんを教えてあげようと思ったのに…」
にやにやしているミサト。
「なにニヤついてんのよ?」
「そ〜れ」
指を差す。
「いつのまにそんなに仲良くなったのよ?」
アスカは慌ててシンジの手を離した。
「そ、そんなじゃないわよ、このセクハラ男が…」
「なんだよ、手を繋げって言ったのアスカじゃないか」
「あんたは黙ってなさいよ!」
「はいはい…、痴話喧嘩はそれぐらいにして、とりあえず手を洗ってうがいしてきなさいよ」
「ふんっだ!」
ずかずかと廊下を歩いていく。
「じゃあ、僕も…」
シンジは壁づたいに自分の部屋を探した。
ドアを一つ、二つと数えていく、三つめ、その取っ手にはビニールテープが張られていた、シンジが自分の部屋だとわかるように張ったものだ。
「ただいま…」
シンジは自分の部屋に入って、ようやくその言葉を口にした。
「まったくもう、バカシンジがぁ!」
ばさっとシャツを脱ぎ捨てる。
ついでにスカートも放り出し、アスカはタンクトップにショートパンツと言うラフ過ぎるカッコに着替えた。
「おかしなこと言い出すから照れちゃったじゃないのよ!」
思い出せば顔が赤くなる。
「どうしてああバカなのかしら?」
カンに触る事とかさぁ、無神経過ぎるのよね、どうしてやろうかしら?
先を思い悩みながらキッチンへ戻る。
「…そう言えばさぁ」
「なに?」
既にビールを開けているミサト。
アスカは呆れた視線を送りながら席に着いた。
「先に帰ってるんなら、送ってくれてもよかったのに…」
「たまには出迎えてあげようと思ったんじゃないのよん☆」
悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「おかげでえらい目に合ったわ…」
「どうかしら?、けっこう楽しそうに見えたけど?」
「…まさか後つけてたんじゃないでしょうねぇ?」
「途中で見かけただけよ、邪魔しちゃ悪いと思って通り過ぎたけど、ほんと、恋人同士みたいだったわ」
「ゲロゲロ、やめてよ、寒気しちゃうわ」
体を抱き込んで震わせる。
「だからミサトさんを待つって言ったんだ…」
「あらシンちゃん、着替えなかったの?」
「ええ…、どうせこのまま寝ちゃうから」
失敗したわ、と舌打ちするアスカ。
シンジは手探りで椅子を探し出し腰掛ける。
「ダメよぉ、シーツ汚れちゃうし、それに明日は久々の休暇でしょ?」
「やることがないんだから一緒ですよ…」
「あー、もぉ、そういう暗い話はやめてさぁ…、お腹減ったのよ、何か食べさせてよ」
「あたしの作ったもんでも良いの?」
「うっ、我慢するわよ…」
「冗談よ、冷食温めといたわ」
「…たまにはまともなもの食べたいわねぇ」
「うっさい!」
ぽかんと殴る。
「いったぁい…、ほら、バカシンジも何か言ってやりなさいよ!」
「あ、うん…、そうだね…」
「そうだねじゃないでしょ!、どうしてそう主体性がないのよ」
はぁっとため息をつく。
「…まあいいわ、それよりさぁ、ミサト」
「なに?」
「あの時のこと、何かわかった?」
「…ごめん、さっぱりなのよ、それが」
アスカは大袈裟に天井を見上げた。
「まさか司令辺りが情報止めちゃってんじゃないでしょうねぇ?」
「それはないわ、調べたから…」
「あの…」
遠慮がちに話に割り込む。
「なによ?」
「あ、ごめん…」
「いいのよ、なに?」
「何の話しかと思って…、僕、聞かない方がいいですか?」
ミサトは一瞬だけアスカに視線を投げかけた。
アスカはどうとでもっと、ピザに手をつけることで答えにする。
「…この間、シンジ君が弐号機に乗った時の話しよ?、アスカの記憶が一部不確かになっててね、精神汚染の心配もあったの」
「精神…、汚染」
「あんなのもう二度とごめんだわ」
アスカは自我崩壊を起こした時のことを思い出した。
「だから気になるのよ」
「そうなんだ…」
その気の無さに、ミサトはシンジを覗きこんだ。
「シンジ君?、あなた何か知ってるんじゃないの?」
手と口を止めるアスカ。
「さあ…、僕もよくは覚えてないから…、ただ」
「ただ、なによ…」
アスカの視線が痛い。
「うん、ただわかったのは…、初号機と弐号機は違うものから作られているんだって、それだけだよ」
「それだけって…」
「シンジ君?、確認するわよ、初号機と弐号機、確かに違うのね?」
「はい」
「なによそれ、そんなのあったり前じゃないの」
「違うんだよ、アスカ…」
「何が違うってぇのよ?」
「もっと…、もっと本質的な所から違うんだ…」
ゴクリ。
アスカの咽喉が鳴った。
「…ついてらっしゃい、アスカ」
ミサトは自分の部屋へと誘った。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
この作品は上記の作品を元に創作したお話です。