Evangelion Genesis Real
Evangelion another dimension real:11
「状況は!」
「四国の四分の三が消滅!」
非常警報が鳴りやまぬ中、誰もがその報告に泡を食っていた。
「見ればわかるわよ!、原因は何かと聞いているの!」
業を煮やしたように日向に食って掛かるミサト。
その手にはまだ、シンジへとかけた携帯を握っている。
「待ってください!、電磁波の影響が強くて…」
思ったように情報が集まってこない。
その背後で機械音、司令席に冬月とゲンドウが現れた。
「情報は最優先で回させろ」
それだけを言って赤い電話をしまうゲンドウ。
「使徒かね?」
「ああ、おそらくはな」
もともと四国はセカンドインパクトの影響で、そのほとんどを水中に没していた。
海面上に顔を出しているのはわずかにすぎない、だがそれでも面積的に決して狭いわけではなかった。
「映像、回復します!」
衛星からの映像が主モニターに回された。
「これは!」
爆心地は旧四国の外輪に位置する所だった。
そこから円形にクレーターができあがっている。
「n
2
爆弾でもこうはいかんな」
冬月の率直な感想。
クレーターはすり鉢状にかなり深くなっており、そこに向かって海水が怒涛のように流れこんでいた。
その水は、焼けた大地と反応して、莫大な蒸気を発生させている。
「MAGIによる解析結果、出ます!」
青葉が情報の全てをフリーで流した。
それを適当に見やるミサト。
「大気圏外から!?」
「起動計算の結果、月軌道上からの飛来物だと推測されます」
各天文台から、次々と月に関する静止映像が送られて来た。
「これは!?」
驚きに目を丸くする。
月の衛星軌道状に、オレンジ色の巨大な物体が写し出されていたからだ。
「碇…、まさかロンギヌスの槍に…」
惹かれたのではないか?
その疑問にゲンドウは首を振って答えた。
「槍は我々にとって意味のあるものだ、やつらには無用の長物だよ…」
二人が小声で話し合っている間にも、情報は次々と飛び込んで来ていた…
「はぁ〜、これが発令所かいなぁ…」
感慨深げにトウジはきょろきょろと見回した。
「ちょっと!、恥ずかしいからやめなさいよね!」
アスカに突っつかれて、慌てて姿勢を正すトウジ。
シンジ、レイ、アスカ、トウジの四人の前には、司令と冬月、それに神妙な顔をしたミサトが立っていた。
トウジ以外の三人は、プラグスーツに着替えている。
「…まったく、またしても常識を疑っちゃうわね」
ファイルを片手に、ぽりぽりとペンを使って頭をかく。
「これが使徒?」
どうやって倒せってぇのよ。
主モニターに映った使徒は、細長い棒のような形をしていた。
「…以前と同じよ?、一部をATフィールドで包んで切り離し、落として来るだけ」
「じゃあまた、受け止めろってぇの?」
う〜ん…
ミサトは返答できなかった。
判断を仰ぐために、司令と副司令に振り返る。
「次弾が来る可能性は?」
「はい」
青葉が基本的な情報を表示する。
「おそらくは最低でも後一度、軌道計算のために撃ちこんで来るものと思われます」
「…ここはともかく、他へ落ちればただではすまんな」
「ああ…」
他へ…、か。
シンジはあの教師の言葉を思い出さずにはいられなかった。
多くの人間を助けるための尊い犠牲か?
その言葉が妙に引っ掛かる。
「僕が初号機で出ます」
ゲンドウの鋭い視線が向けられる。
だが目の見えないことがシンジに幸いしていた。
その威圧をまったく感じないシンジ。
「初号機を輸送している暇が取れると思うのか?」
「うむ、落下地点の予測は?」
今度はマヤがまとめていたデータを公開した。
「月の衛星軌道から重力カタパルトを使用して打ち出される攻撃は、地球の大気圏に達した時点で、こちらの目視できる限界にまで加速しており…」
地球を模したCGが表示される、その外輪の一点から、クモの巣のように白い線が広がっていった。
「大気摩擦、自転、その他による影響、それにATフィールドによる減加速、修正も考慮に入れますと、その予測結果は爆発的に広がり…」
「つまり、日本に落ちることすら疑わしいと言うわけか…」
「はい」
マヤは無意味に近いデータ表示を消した。
「どうする、碇?」
「…本部の防衛が最優先だ」
にべもない、ゲンドウの決断に迷いは無かった。
子供達に口のはさむ余地は無い。
ぎゅ…
唇を噛み締めるトウジを、アスカは横目でちらりと見た。
…ま、無理もないか。
そう思う。
世間的には人類を守るための仕事とされている。
あの教師が誤解していたように。
でも、ほんとは使徒を倒すためだけに存在しているのよね…
あたし達も。
アスカの口元に、軽い自嘲の笑みが浮かんだ。
「しかし防衛と言っても…」
ちらりとマヤを見る。
「はい、その速度からもたらされる破壊力は、エヴァのATフィールドを打ち破るには十分過ぎるほどのものです」
今度はミサトに尋ねてみる。
「なにか案はあるかね?」
「はい…」
ミサトは珍しく、言いにくそうに口ごもった。
「…月から地球に至るコースの予測は、不確定要素が少ない分も容易です、そこで…」
日向にプランを表示させる。
「このように、n
2
高空爆雷を用いて…」
「ブレーキをかけさせるのか…、しかしこれでは」
その衝撃波から軌道はずれ、落下地点にも狂いが生じてしまうだろう。
その冬月の懸念に、ミサトは迷いを振り払って答えを返した。
「使徒の狙いが正確であればあるほど、本部への直撃は避けられることになります」
それがシンジ君達を守る、一番の方法なのよ…
ミサトはそのために、他の全てを犠牲にするという腹づもりだった。
「…反対する理由は無いな」
「しかし碇、反発が多いぞ…」
突き上げも酷くなるだろう。
ゲンドウは面倒臭げに、眼鏡をくいっと持ち上げた。
「…望むものにはジオフロントの避難所へ待避させればいい」
「望めばな」
バカにする。
確かに安全かもしれないが、それを希望する愚か者はいないと思われた。
「で、本部の配置はどうする?」
「はい、エヴァ初号機を第三新東京市に配置します。
ジオフロントの断面図が表示された。
その一番上にEVA−01とマークが表示される。
「これはS
2
機関を持つ初号機でなら、天井都市の全てをカバーできるだけのATフィールドを、展開することが可能だからです」
またシンジに頼るのか…
ちっと、アスカは舌打ちした。
「次に天井都市は放棄、例えATフィールで止められなくとも、都市の特殊装甲板でかなりの衝撃を緩和できるはずです」
その舌打ちはシンジの耳に届いていた。
シンジの顔に影が差す。
ちらりと視線を向けるレイ。
「ジオフロントには零号機と弐号機を配備します」
「2機がかりで、落ちて来る天井都市を支えようというのかね?」
特に正気を疑いはしなかった。
それは十二分に可能なことであったからだ。
「…その場合、初号機は破棄されると言うことですか?」
珍しくレイが口を挟んだ。
「そや!、シンジはどないなんねん!」
レイを後押しするトウジ。
いままで雰囲気になじめず、ずっと口を開けずにいたのだ。
「初号機なら耐えられるわ」
うあ…
ミサトに冷徹な視線を返された。
後悔するトウジ、だがレイはそれでは納得しない。
「なら、初号機は地下に配置すべきです」
「レイ?」
怪訝な表情をするミサト。
「地上防衛はわたしが…」
その肩をぐいっとつかんで、アスカが前に出た。
「あたしがやるわ!」
「アスカ…」
困るミサト。
「あなたじゃ無理よ…」
「どうして!」
食って掛かる。
だがゲンドウが動いた、二人とも眼鏡を持ち上げたゲンドウに射すくめられた。
「葛城三佐…」
「はい」
ゲンドウの判断を厳粛に受け止めようとするミサト。
「プランは予定通りに行いたまえ」
「はい」
その決断に、ミサトは感謝した。
半分は否定されるかと思っていたからだ。
初号機を危険に晒そうとしないかもって…、思ったんだけどね。
隠れてほっと胸をなで下ろすミサト。
「じゃ、そういうことだから」
くるっと発令所全体へ向かい、大きな声で司令を下す。
「避難警告を発令!、初号機はすぐに地上配置、アスカとレイも待機して」
「わしは?」
「…ここにいてちょうだい」
肩をすくめるトウジ。
「シンジ君?」
一言も発しないシンジに、声をかける。
「やれるわね?」
はい、と期待した答えは返ってこなかった。
「行きましょう…」
レイに誘われるシンジ。
シンジは手を取られても無言のままだった。
やれるかどうかなんて…、わかるわけないじゃないか。
レイの冷たい手を感じながら、通路へ向かって歩き出す。
その二人の背中を見送るアスカ。
どうしてあたしを…、信じてくれないわけ?
アスカは苦々しげに口元を歪めてから後を追った。
そんな三人に、複雑な表情をするトウジだけを残して、三人は戦場へと向かっていった。
続く
[
BACK
][
TOP
][
NEXT
]
新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
この作品は上記の作品を元に創作したお話です。