Evangelion Genesis Real
Evangelion another dimension real:18





「使徒を確認!、第拾四使徒です!」
 あのエヴァがやはり拾三番目の、もう一つの使徒だったのね。
 弐号機に食われた使徒のことを思い出す。
 苦々しげに使徒の姿を確認している。
「状況は!?」
「ATフィールドのパターンは同一なのですが…」
「使徒の形状が違い過ぎてどうにも…」
 新しいタイプと言うわけ?
 親指の爪を噛む。
「エヴァ各機発進準備!、レイを初号機に…」
「待ちたまえ、葛城三佐」
 急なストップに背後を振り仰ぐ。
「なにか?」
「レイは零号機で出す」
「レイ?、零号機!?、修復が終わったんですか!?」
 ニヤリとゲンドウは笑みを浮かべる。
 随分と早かったわね…、でもエヴァはもう一体組み立てていたはずなのに、どこへやったの?
 四号機の組み立て進行状況は伏されているのだ。
 考えながらも指示を出す。
「パイロットは?」
「位置に着きました」
「発進させて!」
 そしてエヴァが射出された。


「来なさい!」
 アスカが構える。
 三角形をした使徒だった、平たく、地を這うように浮いている。
「こんのぉ!」
 地を蹴り、弐号機は踊りかかった。
「え!?」
 ソニックグレイブを突き立ったのは地面であった。
「どこ!?」
 姿を見失う。
「後ろよ」
 パレットガンを乱射する零号機。
 しかし左右に身体を振るように使徒はかわす。
「早い」
 落ちついて横へ飛ぶ。
「きゃあ!」
 零号機の左の脛から先が切り飛ばされた。
「ファースト!」
「レイ!、どうなったの!?」
「ATフィールドです!、超光熱をATフィールドで鞭のように歪めた物と思われます!」
「そんな…、レイ!」
 うっくぅ…
 レイは苦悶の表情を浮かべながらも耐えていた。


 まだうずくまっているのかい?
 シンジの元を訪れる首だけの少年。
 彼の頭はエヴァの手のひらに乗せられている。
「だって僕はいらない人間じゃないか!」
 耳を塞いで、目も閉じる。
「失敗して、嫌われるのが恐いのかい?」
「違う!」
「だからいらないと捨てられる事で、期待から逃げだすことで身を守るのかい?」
 図星だ。
「いいじゃないか!、ぼくなんていなくてもどうにでもなるんだ、だから放っておいてよ!」
「なら…、好きにするといいよ、ただ」
「ただ、なにさ?」
「これを見てから、決めるといいよ…」
 きゃあああああ!
 誰かの悲鳴がこだました。


「アスカ!、神経接続カット!」
「まだよ!」
「アスカ!?」
「まだやれる、まだやるわ!」
「アスカ、でもあんた!」
 そうよ!
 左目を押さえているアスカ、その指の間から血が流れ出している。
 弐号機の左目が潰れていた、目の周りが焼けこげている。
「アスカは!?」
「視神経に異常が見られます!、失明の可能性も…」
「ちっ、シンクロ率が高過ぎるのも考え物ね…、レイは?」
「だめです、後退も出来ません…、使徒が接近、やられますっ、脱出間に合いません!」
「レイ!」
「くっ!」
 レイは正面にATフィールドを張った。
「ファースト!」
 アスカもレイを守るように壁を展開する。
 ビシュン!
 だが二枚のATフィールドを貫いて、光の剣はレイを襲った。
 !?
 やがて来る激痛に脅えて小さくなるレイ、だが攻撃は来なかった。
 ゆっくりと目を開く。
「なに?」
「シンジ!?」
 違う…
 レイは自分を守ってくれている赤い壁に嫌悪感を持った。
 これは、碇君とは違う…
 ガシュウウウウウ、ガコン!
 エヴァの射出口の一つが開いた。
 そこから初号機が姿を現わす。
「シンジ君なの!?」
 慌ててマヤに確認を求める。
「い、いえ、違います…、エントリープラグには誰も、誰も乗っていません!」
「何ですって!?、コントロール取り戻して!」
「いや、放っておきたまえ」
「副司令!?」
「僕に任せて下さい!」
「シンジ君!?」
 混乱に拍車がかかる。
 エントリープラグの中には誰も乗っていないのに、確かにシンジの声がする。
「どういうことなの!?」
「こういう事よ…」
「リツコ!?」
 正面モニターに姿を見せる。
「エヴァのリモート回路を直結したわ」
「直結って…」
「シンジ君の指示よ?」
「シンジ君の!?、無事なの?」
「話は後でするわ」
「あ、ちょっと!?」
 ミサトは目で青葉に尋ねた。
「内線の…、ダメです、シールドされててどこからの通信だったのか…」
 司令ね、間違いなく。
 ちらりとだけ振り返る。
 そこにはすましたままの司令と副司令が居る。
 シンジ君に、なにをしたの?
 戦いは先へと進んでいる。


「暴走…、しているの?」
 アスカは右目だけで動きを追っていた。
 滑るように地面を移動する使徒、その動きはエヴァの知覚能力の補足があって始めて追い切れるほどのものだ。
 なのにあの初号機の動きはなによ!?
 フォオオオオオオン!
 その使徒を走って追いかけている、衝撃波でビル群が吹き飛ばされる。
 これが初号機なの!?
 ドゴォン!
 絡まるように使徒とエヴァが転がった。
 ブォン!
 馬乗りになって、右腕を振り上げるエヴァ。
 ヒュン!
 その腕を光が斬り飛ばす。
 ブシ!
 肘の手前の部分しか残っていないにも関らず、腕はまるで存在しているかの様に振り下ろされた。
 使徒の中央が叩き潰され、めくれる。
「コア!?」
 アスカは叫んだ。
「シンジ!」
 フォオオオオオオン!
 まるで答えるかの様にもう一度右肩を振り上げる。
 シュルシュルと伸びた筋肉が腕を再生する。
 それがハンマーのようにコアを叩き潰した。
 ゴッ!
「凄い…」
 誰の呟きか分からなかった。
 いつもの爆発が起こると思い、皆身構えた。
 だが何も起こらなかった。
 起こらず、コアはそのまま光を失っていった。


「碇…」
「ああ…」
 洗浄中の初号機を見上げている二人。
「いいのか?」
「かまわん…」
「これで終わりの時が来る、我々のな?」
 ゴォオオオオオ!
 飛沫が二人を濡らしている。
「委員会にはどう報告する?」
「なにをだ?」
「シンジ君をだよ…」
 ゲンドウは少しだけ間を置いた。
「…なにも」
「沈黙か?」
「レイを付けておく」
「碇、それは!?」
 だが冬月はゲンドウの横顔に言葉を失った。
 いつもと大差が無いが、少しばかり堅くなっている。
「…そうか」
「ああ…」
 二人の会話は、それで終わった。


「シンジ、バカシンジ!」
 え!?
 アスカは戸惑った。
 リツコの居場所に舞い戻ったアスカは、リツコの白衣に身を包んだシンジに気後れした。
 なによ、こいつ?
 まるでレイの様に表情を消している。
 多少肌が白くなっているのはL.C.L.に漬かり過ぎたためだろうか?
「なに?」
 次の言葉が来ないので、シンジの方から近寄った。
「ちょ、ちょっと、あんた!?」
 真正面から見て気が付いた、白衣の下は裸なのだ。
「前くらい隠しなさいよ!」
「…ああ、そうだね?」
 緩慢な手つきで前を合わせる。
 シンジ?
 アスカはその態度にも違和感を覚えた。
 なによ、こいつまたいじけてるの?
 そんな二人を、リツコは険しい瞳で見つめていた。





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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

この作品は上記の作品を元に創作したお話です。