「まったくもう、レイもやめてよね!」
「シンジ……、悲しいぞ」
「なんだよ父さん……」
ぱくついていたトーストを離す。
「妹想いだと思っていたがな?」
「いや……、その『想い』の部分が微妙に違うと……」
ちらりとレイを見る。
「妹想い……、妹、わたしのことを思うのね、お兄ちゃん」
明らかにトリップしている。
「ほらなんか勘違いしてるよぉ!」
ダンダンダン!っと、涙を流してテーブルを叩く。
「もうレイのせいで、みんなにいじめられるんだよ!」
「レイはユイに似てもてるからな?」
「バカなこと言ってないで、あなたも早く食べちゃって下さいね?」
「ああ、分かっているよ、ユイ……」
ぴんぽーん。
「おはようさんですぅ」
「シンジぃ、起きてるかぁ?」
悪友二人の声が聞こえる。
「はぁい!、じゃあ行って来るよ、レイ、行こう?」
「ええ……」
席を立ち、ちゃんと椅子を戻していく。
「行ってきます!」
「行ってきます……」
ドタドタの後に、トタトタと言う控え目な音が着いていく。
「おはよう、トウジ、ケンスケ」
「おはようさん」
「あ、シンジ、レイちゃん、お弁当よ?」
「あ、ごめん」
「おおっ、ユイさぁん」
「それでは相田一等兵、学校へ行ってまいります」
「はい、シンジとレイをよろしくね?」
「「はい!」」
ユイは二児の母というにはあまりにも若く見える。
そのためお母さんというよりはお姉さんとして認識されていた。
「いいよなぁ、シンジは」
「なぁにが?」
シンジの側にはレイがピッタリと張り付いている。
その隣にはトウジ、ケンスケはトウジの隣だ。
「決まっとるやろ……、ユイさんや!」
またかと溜め息。
「そうだよ!、まったくレイちゃんだけじゃ飽きたらず」
「なんだよ、母さんに妹じゃないか」
「そんなん関係あるかい!」
「そうだ!、この裏切り者ぉ!」
十四歳と言う年齢の前には、嫉妬が現実の関係を上回るらしい。
「かああああ!、あないな美人にいっぺんでも体洗うてもらいたいわ!」
「またそんなことを……」
「そりゃシンジはいいよなぁ?、おばさんだけじゃなくて、レイちゃんとも一緒に入ってたんだろ?、風呂」
はぁっといつものことに嘆息する。
「そんなの……、昔の話じゃないか」
「……わたしは、今でも入りたいのに」
「れ、レイ!?」
驚くシンジと、いや〜んな感じを全身表現する二人。
「も、もう冗談はやめてよねぇ!」
はははと言う護魔化し笑いにレイが膨れる。
「シンジぃ……」
肩に手が乗る。
「お前の理性には尊敬するよ」
「はぁ?」
「こんだけ言うてもろてて……」
「ほんとに、良く耐えられるよなぁ?」
「……だから妹だって」
二人は力無く首を振る。
「そないな恰好で」
「説得力があるかよ?」
「え?、あ!」
腕をがっちり組まれていた。
「だ、だめだよレイ!」
「なぜ?」
「また誤解されちゃうよぉ!」
「誤解やて?」
「家出てからここまで気付かなかったくせに」
「やっぱあれやな?」
「これで当然だと思ってるんだよ」
「「こぉの裏切り者ぉ!」」
バンッと背中を叩かれる。
だからぁ……
シンジは激しい頭痛を感じた。
「あ、ほら、早くしないと遅刻しちゃうよ?」
「おうおう、まだ時間あるで?」
「そうだよ、ゆっくり付き合ってやるからさ?」
「このペースじゃ遅れちゃうよ、レイも急いでよね!」
「お兄ちゃん……」
駆け出すシンジに、レイはしぶしぶながら従った。
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