Rei's - faction:002
「まったくもう、レイもやめてよね!」
「シンジ……、悲しいぞ」
「なんだよ父さん……」
 ぱくついていたトーストを離す。
「妹想いだと思っていたがな?」
「いや……、その『想い』の部分が微妙に違うと……」
 ちらりとレイを見る。
「妹想い……、妹、わたしのことを思うのね、お兄ちゃん」
 明らかにトリップしている。
「ほらなんか勘違いしてるよぉ!」
 ダンダンダン!っと、涙を流してテーブルを叩く。
「もうレイのせいで、みんなにいじめられるんだよ!」
「レイはユイに似てもてるからな?」
「バカなこと言ってないで、あなたも早く食べちゃって下さいね?」
「ああ、分かっているよ、ユイ……」
 ぴんぽーん。
「おはようさんですぅ」
「シンジぃ、起きてるかぁ?」
 悪友二人の声が聞こえる。
「はぁい!、じゃあ行って来るよ、レイ、行こう?」
「ええ……」
 席を立ち、ちゃんと椅子を戻していく。
「行ってきます!」
「行ってきます……」
 ドタドタの後に、トタトタと言う控え目な音が着いていく。
「おはよう、トウジ、ケンスケ」
「おはようさん」
「あ、シンジ、レイちゃん、お弁当よ?」
「あ、ごめん」
「おおっ、ユイさぁん」
「それでは相田一等兵、学校へ行ってまいります」
「はい、シンジとレイをよろしくね?」
「「はい!」」
 ユイは二児の母というにはあまりにも若く見える。
 そのためお母さんというよりはお姉さんとして認識されていた。
「いいよなぁ、シンジは」
「なぁにが?」
 シンジの側にはレイがピッタリと張り付いている。
 その隣にはトウジ、ケンスケはトウジの隣だ。
「決まっとるやろ……、ユイさんや!」
 またかと溜め息。
「そうだよ!、まったくレイちゃんだけじゃ飽きたらず」
「なんだよ、母さんに妹じゃないか」
「そんなん関係あるかい!」
「そうだ!、この裏切り者ぉ!」
 十四歳と言う年齢の前には、嫉妬が現実の関係を上回るらしい。
「かああああ!、あないな美人にいっぺんでも体洗うてもらいたいわ!」
「またそんなことを……」
「そりゃシンジはいいよなぁ?、おばさんだけじゃなくて、レイちゃんとも一緒に入ってたんだろ?、風呂」
 はぁっといつものことに嘆息する。
「そんなの……、昔の話じゃないか」
「……わたしは、今でも入りたいのに」
「れ、レイ!?」
 驚くシンジと、いや〜んな感じを全身表現する二人。
「も、もう冗談はやめてよねぇ!」
 はははと言う護魔化し笑いにレイが膨れる。
「シンジぃ……」
 肩に手が乗る。
「お前の理性には尊敬するよ」
「はぁ?」
「こんだけ言うてもろてて……」
「ほんとに、良く耐えられるよなぁ?」
「……だから妹だって」
 二人は力無く首を振る。
「そないな恰好で」
「説得力があるかよ?」
「え?、あ!」
 腕をがっちり組まれていた。
「だ、だめだよレイ!」
「なぜ?」
「また誤解されちゃうよぉ!」
「誤解やて?」
「家出てからここまで気付かなかったくせに」
「やっぱあれやな?」
「これで当然だと思ってるんだよ」
「「こぉの裏切り者ぉ!」」
 バンッと背中を叩かれる。
 だからぁ……
 シンジは激しい頭痛を感じた。
「あ、ほら、早くしないと遅刻しちゃうよ?」
「おうおう、まだ時間あるで?」
「そうだよ、ゆっくり付き合ってやるからさ?」
「このペースじゃ遅れちゃうよ、レイも急いでよね!」
「お兄ちゃん……」
 駆け出すシンジに、レイはしぶしぶながら従った。



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