Rei's - faction:003
 はぁはぁはぁはぁはぁ……
「到着っと!」
 シンジは校門の門柱にタッチした。
 犬のように舌を出しながら振り返ると、先ずはレイの姿が見えた。
 黙ってると可愛いんだけどな……
 どこか微笑ましい、美少女特有の悠然とした感じを受ける。
 息は小さく切らしており、張り付く髪が疲労の度合を見せていた。
 両脇はきっちりと親友二人が固めている。
「妹置いてくなんて酷い奴だよなぁ」
「そや!、ワシらがおらんかったらどうなると思とんねん!」
 言ってはいるのだが、二人ともその目は笑っている。
 シンジは苦笑しながら二人と並んで校門をくぐろうとした。
 すっとトウジとシンジの間にレイが割り込む。
「お?、なんや」
「レイぃ……、トウジにまでそんなことしなくてもいいだろう?」
 ぷるぷると首を振って反抗する。
「だめ……」
「はぁ……」
「渚君の例もあるから」
 ガッ!
 シンジはありもしない石に蹴つまずいた。


「それで今日は怪我して来たのかい?」
「ワシまで巻き添えにされて、もうたまらんわ!」
 クスクスと笑うのは、くだんの少年、渚カヲルだ。
 アルビノと言うハンデを神秘性で武器に変えている特異な少年。
「ははは、仕方ないね?、シンジ君はレイちゃんだけのものだから」
「二人とも……、ふざけてないで何とか言ってやってよ」
 ふーふーと、擦り剥いた肘を吹いている。
「僕は嫌われたくないからね?」
「そや!、ほんまよう似とるで、お前のおとんに」
 父さんか……
 それは碇家をもっとも良く知る者の言葉だろう。
 確かに容姿は似ていない。
 しかしその性格は、最も色濃く受け継がれている。
 逆にシンジは何処か顔形をもらっていた。
 性格は誰にも似ていない、ゲンドウ、ユイ、レイと異常な性格に囲まれたためか?、シンジはちょっと強気と言うものを失っていた。
「そやけどほんま、シンジのおとんは恐いし……」
「そうだね?、あの人がレイちゃんのお父さんだとはとても思えないよ」
「……二人ともレイの本当の姿を知らないから」
 本当の姿と言う部分に、今朝の刺激的なシーンを思い出して首を振る。
「ああ〜ユイさぁん、なんであないな男がユイさんみたいな美人を捕まえられたんや?」
「さあ?」
「何も聞いていないのかい?」
「え?」
「馴れ初めだよ……」
「脅されたって、言ってた」
 碇ゲンドウ。
 誰がどう見ても悪徳政治家かヤクザの親分。
 この男がどうやって彼女を!?
 それに対する憶測は尽きない。
「結婚……、ですか?」
「ああ……」
「嫌だと言ったら?」
 ふっ……
「死んでやる」
 なかなかに可愛い男であると、後にユイはのろけまくった。
「やっぱりそやったんかぁ……」
「普通じゃないと思っていたよ、シンジ君のお父さんは」
 納得顔で頷く二人。
 ま、確かに普通じゃないよな……
 逆のことを想像しているとは気付かない三人。
「ユイさん、可哀想になぁ?」
「悲哀に値するよ」
「僕には二人が何を言っているのか分からないよ……」
 多少は疑問を感じるらしい。
「はぁいはいはい、みんな席に着いてぇ!」
 担任の葛城ミサトがファイルを叩きながら入ってきた。
「ちゃっちゃと行くわよぉ?、洞木さん、明日転校生が来るから机を一つ準備しといて」
「せんせぇー!、それって女の子ですかぁ?」
「それは明日になってからのお楽しみ☆」
 どんな子かなぁ?、可愛いといいなぁ……
 ほんのちょっと、誰も気がつかないほどシンジの目尻が垂れ下がった。
「お兄ちゃん……」
 もちろん、レイだけがその事に気がついていた。
 嫉妬にニヤリと口元を歪めて。



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