Rei's - faction:007
 自宅。
「うわあああああああ!、れ、レイ、入って来ないでよ!」
「なぜ?」
「何故って……、ここはお風呂じゃないかぁ!」
 タオルで股間を隠し、どたどたと廊下を走っていく。
「シンジぃ、あとで廊下拭いておくのよ?」
 よほど慌てていたのだろう、廊下は思いっきり濡れている。
「ほらほら、レイちゃんも寂しそうにしてないで、風邪を引くわよ?」
「風邪……、看病、優しいお兄ちゃん」
「こぉら!、心配させちゃダメでしょ?」
「でも……」
「はいはい、今日はシンジが悪かったのよね?」
 コクリと頷く。
 シンジはレイを待たずにお昼を終えてしまったから。
「でもちゃんとお膝の上で食べさせてもらったんでしょ?」
 ポッと頬を染めてうつむくレイ。
「そ・れ・に、今朝約束したでしょ?」
 一緒に寝ると。
 レイはしっかりと覚えていた。
「なら早くお風呂に入らないと、お兄ちゃん寝ちゃうわよ?」
「はい」
 カチャッと脱衣所のドアが閉まる。
「……あなた、何やってるんですか?」
 新聞に穴を空けて、こっそりとレイを覗き見ている。
「ああ、わかったよ、ユイ……」
「何が分かってるんですか?」
「いや、わたしが悪かったと……」
「だから何がです?」
「その……」
「なに?」
「だからな?」
「はっきりと!」
「いやしかし」
「逃がしません!」
「すまん、許してくれ、ユイー!」
 この後絶叫がリビングを満たしたのだが。幸いにも完全防音だったために、誰にもその悲鳴が聞こえることは無かったと言う。


 お風呂を上がると、リビングからユイが歩いて来た。
「すっきりしたわ」
 なにがだろう?
 やたらと頬がつやつやしている。
「レイ、早く行け、でなければお菓子を食べろ」
 げっそりとやせ細りながらも何処か満足げな父。
「いらない、太るもの」
 とててっとレイはシンジの元へと去っていく。
 レイ、わたしを捨てるつもりか、レイ!
 ちょっぴり寂しい父だった。



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