Rei's - faction:011
 学校帰り。
 皆で喫茶店に寄っていた。
「いいのかなぁ……」
「なに?」
 ヒカリが綾波の言葉を拾う。
「だって……、帰りに」
「うちは大丈夫だよ」
 小さな喫茶店だ、シンジ達だけで一杯になってしまっている。
「ちゃんと葛城が公認してるからな?」
「ミサト先生のことだよ」
 無精髭に尻尾髪のマスターが、苦笑しながらコーヒー、紅茶にケーキを運んで来てくれた。
「そやけどまあ、正直カヲルん時は気色悪い思たわ」
 その台詞に綾波の顔色に影がさす。
「でもすぐに慣れたもんなぁ?」
「カヲルがレイとシンジの取り合いしとったからやろ?」
「みんな驚いてたもんねぇ?、レイってそれまで静かだったのに……」
「カヲルが近付くと、むくれるわふくれるわ、凄かったよな?」
 ファインダーごしにレイを見る。
 レイはほんの少しだけ小さくなっていた。
「君は意識し過ぎだね?」
「ご、ごめんなさい……」
 びくっと反応する綾波レイ。
「まあ仕方が無いけどね?」
「すまんのぉ?、シンジに慣らされてしもとるから……」
 みんなでカウンターの方を見る。
「加持さん、カフェオレ出来ましたよ」
「後はレモンティーだけだよ」
「ほんとに高校行ったらバイトで雇ってくれるんでしょうねぇ?」
「もちろん、今までの手伝い賃を上乗せするよ」
 話を戻す。
「僕は両親共に亡くしていてね?」
「え!?」
 突然のカヲルの告白に驚いてしまう。
「でもシンジ君には、ふうん……って、その程度で流されちゃったよ」
 嬉しそうに笑うのが不思議になる。
「シンジ君はそう言う事に興味が無いのさ、しょせんは人事だからね?、でも気にしているようなら気にしなくていいように教えてくれる、そう言う人なんだよ」
 気にしてもいない事を気にさせていたのが、シンジと出会う前のカヲルの周りに居た人達だった。
「そうなんだ……」
 綾波はミルクティーの入ったコップを弄んだ。
「あの……、碇君って」
 ピクッとレイが反応する。
「小学校、何処か知ってる?」
「なんやそりゃ?」
「箱根小学校じゃなかったっけ?」
 ピタッと綾波の手が止まる。
「……知ってるのかい?」
「う……ん、えっと」
 ぐっと拳を突き出すトウジ。
「お前まだわかっとらんのやな?」
「え?」
 拳に脅える。
「ワシらは友達や、友達は隠しごとすんな!」
 トウジは本気の声で綾波を叱った。
「とも……、だち」
「そうよ?」
 ヒカリも微笑みかける。
「恥ずかしい奴でさ、男は殴り合って友情が生まれるんだとか、そう言う人間なんだよ」
「お前に男の心は分からん!」
「トウジと殴り合えるのはカヲルとシンジの二人だけだよ」
 さらっと危ない発言をする。
「話してもらえるかい?」
 綾波はコクリと頷いた。


 それは小さな頃のこと。
 綾波はやっぱりいじめられていた。
「何泣いてるの?」
「やぁ!」
 恐がり、綾波は小石を投げた。
「いてっ!」
 その子の額から血が流れる。
「あ、や……」
 その血に驚く。
「あ、大丈夫だよ、ちょっと痛いけど……」
 そう言ってごしごしと袖で拭う。
「いじめられたの?」
 綾波は泣きじゃくった。
「わたしには……、誰もいないもの」
 お父さんもお母さんも気持ち悪がっていた。
「そんな悲しいこと言わないでよ……」
 シンジは泣きそうになった。
 自分が嫌われそうだと心で感じたから。
「嫌だけど……、でもきっといいこともあるよ、あるから……」
 だから。


「「大きくなったら、結婚しよう」」
 レイと綾波のセリフがぴったり被った。
 驚く綾波と、表情を消すレイ。
「どうして……」
「なぜ、あなたが知っているの?」
「え?」
「それはわたしとお兄ちゃんの事よ……」
「ち、違う!、これはあたしの約束よ、だから!」
 だから今まで我慢して来た。
 明るく振る舞ってここまで来れた。
「う〜ん、謎だねぇ」
 カヲルは面白そうに顎を撫でた。
「でもシンジ君なら、二人に同じことをしていてもおかしくは無いね?」
「なに?、何の話し?」
 自分のコーラを持って席に着くシンジ。
「???」
 緊迫したムードにも、シンジは全く気付かなかった。



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