Rei's - faction:013
「はぁ……」
 シンジはベッドの端に座って一息着いた。
 コンコンコン……
「あの、碇君……」
「綾波?、いいよ、どうぞ」
 控え目に入って来る。
 お風呂上がりの、ピンクのパジャマ。
「綾波は上のベッドを使ってよ」
「……いいの?」
「女の子を下には寝かせられないよ」
 一組布団が増えている。
「やっぱり、あたしが床に寝る」
「だめだよ、そんなことしたら何言われるか分かんないよ」
 優しく諭す。
「あの……、ほんとに、ごめんね?」
「なにがさ?」
「だって……」
 言葉を失う。
「立ってないで、ここに座りなよ」
 隣、でも少し間を離して腰掛ける。
「どうしたの?、なんだかおかしいよ……」
「おかしい?」
「だってさ?、いきなり「見物料」って引っぱたいた時とは随分違うよ?」
 カーッと綾波は赤くなる。
「だだだ、だって、あの時は!」
「やっぱり綾波も同じなんだね?」
「え?」
「僕達は兄妹なんだって……、でも恥ずかしいでしょ?、やっぱり……」
うん
 消え入りそうな、か細い声。
「それって、僕を家族じゃなくて男の子だって見てるんじゃないの?」
「……うん」
「慣れるまでが大変かもね……」
「そうかもしれない……」
 二人で仰向けに倒れ込む。
「ねえ……」
「なにさ?」
「レイちゃんって、ブラコンなんだよね?」
「……はぁ」
「あたしもそうかも」
「勘弁してよぉ……」
 屈託の無い笑いがようやく漏れた。


 翌朝。
うわああああああああああああ!
 やはりこうなると言う感じである。
「れ、レイ、何やってんだよ!?」
「んん〜、お兄ちあゃん……」
 今日はいつもより積極的に、シンジのTシャツの中へと手を差し込んでいる。
「い、碇君……」
「違うよ、違うんだよ、誤解なんだぁああああああああ!」
 スパァン!っと今日も良い音が鳴り響く。
「はいはい、レイはこっちで面倒見るから、レイちゃんは先に顔を洗って、シンジはその間に自我境界線を再構築しなさい、いいですね!」
「はい、おばさま」
 綾波の何気ない一言にユイの表情がわずかに陰る。
「あ、え?」
「レイちゃん……、お願い、もう家族なの、だから」
「あっ!、えっと……」
 恥じらい、上目づかいにユイを見る。
「お母……さん」
 笑顔の華が咲いた。
「パンはもう焼けてますからね♪」
「はいっ、お母さん!」
「あなたは邪魔よ」
「……わたしはダメなのか?、ユイ」
 次にお父さんと呼んでもらおうとしていたゲンドウは、妻の冷たい一言に寂しく背中を丸めるのだった。



続く




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